脳波データの公開レポジトリ
若手に脳波判読を教えていくにあたり、つくづく思うのが、脳波データの公開レポジトリがあったらなぁということです。
脳波判読に熟達するには、熟練者と一緒に読むのがベストです。
理想を言うなら、自分でまず一通り読み、それを熟練者の前でプレゼンし、その場でフィードバックをもらうことです(トロント小児病院の方式)。
これが無理なら、自分で読んで報告書を書き、熟練者に添削・フィードバックをしてもらうことです(私の職場の方式)。
脳波のアトラスをいくら眺めても判読は上達しません。アトラスには分かりやすい波形が載せてあるだけで、波形の個人差、アーチファクトなどのあるリアルワールドの脳波とは異なるからです。
また、どうしてそのように考えるのかという脳波判読に重要な思考プロセスが全く書かれていません。ここは、熟練者と議論しながら身に着けていく技です。
宣伝を書きますが、私の初心者向けの著書(脳波データのCD付き)には、美しい脳波の図(カラー印刷で高品質の紙を使っています)に加え、この思考プロセスがきっちり書いてあります。興味のある方は、コメント欄からお問い合わせください。医師のみならず、臨床検査技師にもお勧めです。
で、なぜ公開レポジトリがあるとよいかと言いますと、全国の脳波判読に興味をもつ方が、同じデータをどのように解釈するか議論できるからです。ウェブサイト上で動く脳波ビューワがあり、ブラウザでレポジトリの脳波を読め、好きな箇所にマークしてコメントを入れられ、他の方がこれに対して意見を書くなどできれば、なおよいと思います。
研究目的で脳波データをシェアするのにも使えると思います。コンピュータによる発作検出やてんかん発射検出、自動判読ソフトの開発にも役立つでしょう。
脳波データは、個人情報を削除してしまえば、完全に匿名化が可能です(個人の特定は不可能)。他に必要なのは年齢、意識状態で、これは判読に必須です。診断名(もしくは個人が特定できない程度の簡略な病歴)も必要であればあってもよいかと思います。
つまり、データを公開するのに必要な倫理審査をクリアするのは比較的容易と考えます(侵襲はなく、データの完全匿名化ができるため)。
臨床神経生理学会が、若手の教育用にこのような取り組みをしてくださるととてもうれしいです。
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