2017/08/25

教科書執筆

最終更新から気が付くと1か月以上経っていました。

ただいま、脳波の教科書を執筆しておりまして、かなりの時間をそちらに取られていました。しかし、もうじき一段落つきそうです。

余裕が出来たら、脳波クイズも再開する予定です。

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2017/07/10

脳波クイズ A6

前回のクイズの解答です。レベルは3程度。

A6.

1. 同側耳朶を基準とする基準導出。左半球、右半球、正中部の順になっています。正中部のみ、基準電極は平均耳朶電極になっています。

2. 睡眠時記録。

3. 頭蓋頂鋭波、睡眠紡錘波、K複合波、14Hz陽性棘波。

4. 正常脳波。

解説

モンタージュについては省略します。

睡眠時記録である根拠は、後頭部にα律動(alpha rhythm)がみとめられず、後述するような睡眠に特徴的な波形がみられるからです。

下の図で、赤い三角は頭蓋頂鋭波(vertex sharp transient)、赤い線は睡眠紡錘波(sleep spindle)です。中央の頭蓋頂鋭波に紡錘波がつながった部分は、K複合波(K-complex)と呼んでもよいでしょう。K複合波の最初は、頭蓋頂鋭波のようにやや鋭かったり、もう少し丸みを帯びた高振幅徐波だったりします。これに紡錘波が続くパターンです。

水色の四角の部分に着目します。ここには睡眠紡錘波とよく似た周波数の波形が出ていますが、分布がより広い範囲にわたっており、波形自体もやや鋭いですね。これが、14Hz陽性棘波(14Hz positive burst)です。最近は、positive spikeというよりもburstという言い方が正式なようです。日本語だと陽性群発ですが、あまり使われていないので、ここでは従来の陽性棘波という言い方にしています。

20170710_1

ちょっと待ってよ、陽性と言ったけど、上向きだよ!

と思った方はおられますか?

そのとおりです。上向きだと陰性ですね。脳波の世界では。

モンタージュを変えてみます。

20170710_2

基準導出ですが、基準電極を平均基準電極にしました。

どうですか? 頭の後ろの方で下向き(陽性)になっているでしょう?

陽性棘波は、後側頭部(T5、T6)付近で陽性を示すのが特徴とされています。前頭部では上向きに見えますが。

14Hz positive burstは、正常亜型(normal variants)の1つです。波形は、小文字のmが続いたような波形になります。少し隙間が空いて6Hzになることもあり、6 & 14Hz positive burstと呼びます。

昔は自律神経発作と関連があるとされていましたが、現在は臨床的意義は乏しいとされています。尖っていますので、てんかん発射と間違えないように気を付けましょう。

ムムムッ(mmm)? 陽性棘波!

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2017/06/27

脳波クイズ Q6

次なる脳波クイズです。

Q6. 13歳男児。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 出現している特徴的な波形の名前を述べよ。1つとは限らない。

4. 正常脳波か、異常脳波か?

20170627

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2017/06/24

脳波クイズ A5 その3

前回の続きです。ちょっと長い説明になりますし、私個人の意見ですので、異論があるかも知れません。

右後ろ(P4、T6、O2)の棘波と左前頭極(Fp1)の棘波に時間差がないということに違和感があるという話でした。

A5.

6. O2とFp1で時間差がないという場合、1つの仮説は2か所からの棘波がたまたま同時に出たということです。でも、これではちょっと面白くありません。

複数の電極で本当に同時に棘波が見える場合、容積伝導による現象が考えられます。これは単純に電場の拡がりということで、ある所で振幅の高い棘波が出たら、近くの電極でもそれを拾うということです。O2で棘波が出れば、隣のP4やT6でも見えるというわけです。でも、Fp1は遠すぎますよね。

発想を少し変えます。Fp1で上向き棘波が出ているように見えるわけですが、このチャネルは、正確にはFp1-A1ですね。上向き棘波が出ていると考えるのはFp1ばかり見ているからで、相棒のA1も忘れちゃいけない。もし、A1から下向き棘波が出ていたら... Fp1-A1では上向き棘波に見えちゃいますね。

この可能性を考える場合、右後頭部に上向き棘波、左側頭部に下向き棘波というパターンがあるのだろうかと考えないといけません。

これは... あります。ダイポールです。

棘波の電位分布を考える場合、その電流源の位置と向きを考えます。ダイポールは日本語で双極子といいますが、プラスとマイナスの電荷が極めて近い位置に存在するものです。小さな磁石のN極とS極のようなもの、超小型の電池とでもいいましょうか。

マイナス側が右後頭部に向き、プラス側が左側頭部に向くようなダイポールを考えれば、話は合いそうな気がします。つまり、左側頭部付近では右後頭部の陰性棘波を裏側から見ている(つまり陽性棘波を拾っている)という仮説です。

7. 正確な分布を確認する方法の1つとしては、基準電極を変えてみるというのがあります。例えば、平均基準電極にしてみます。一番下に、耳朶電極(A1、A2)も表示しています。

20170624_1

T3、A1で陽性(下向き)になっていますね。左前(Fp1、F7)には陰性棘波がみられます。右前(Fp2、F8)にも陰性棘波がみられますが、左前よりほんの少し遅れています。また、左前の棘波は右後頭部(P4、O2)より少し遅れています。多少の遅延時間があるのは、部位間の連絡時間と考えられ、一応納得がいきます。

いやいや、平均基準電極って本当に信用できるの? と思う方がいるかも知れません。そうですね、頭皮上の電極の電位を平均したものだから脳波の影響を多少なりとも受けるでしょ、という突っ込みがあるかも知れません。

そこで、グゥの音も出ないと思われる別の方法を出します。

20170624_2

これも基準電極導出ですが、基準電極がX1になっています。X1ってどこ?

脳波全体を見ると、心電図が混入していますね。X1は心電図を拾っている電極で、肩につけてあるのです。つまり、X1は頭部外の電極というわけで、これだと基準電極が脳波の影響を受ける(コンタミする)可能性はとても低くなります。

これは静岡てんかん・神経医療センターのT先生という、私が脳波ソムリエと呼んでいる方から教わった方法です。初めて聴いたときは、コロンブスの卵でした。

ところで、もう1つ納得できない点はありませんか?

後ろから棘波が出て、何故前から少し遅れて棘波が出るのでしょうか? サイドが違うんですけど。右前の棘波は左前よりも遅れているので、右後ろから右前に行った後に左前に行ったとは思えません。

ここで、右後ろの棘波が本当はどこから出ているのか、と考えてみたいと思います。ダイポールの話をしましたね。ずっと以前に立体角に関する記事を書きました。その記事の下側の図を参照していただきたいのですが、脳表で陽性と陰性の棘波が同時に見える場合、電流源の真上の電極では何も見えないのです。

これを上の脳波に応用すると、一番棘波が見えにくい電極はどれかということになるのですが、それは左後頭部の電極(O1)です。

つまり、左後頭部のどこかに、右後頭部に向けてマイナス面が向き、左側頭部に向けてプラス面が向いたダイポールがあるのではないかということになります。

後頭葉や前頭葉の内側面に電流源がある時は、陰性棘波が反対側から出ているように見えることがあります。Paradoxycal lateralizationという有名な現象です。

本当は、もうちょっと複雑な分布のようで、これだけで充分説明できていないところはあります。

棘波の分布を読む上での考え方をいくつか提示させていただきました。

今回は、思ったよりも複雑な問題になってしまっていましたので、次回からは、もうちょっと分かりやすい問題にしようと思います。

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2017/06/14

脳波クイズ A5 その2

前回、少し問題を変えたQ5の解答の続きです。学会直前なので、5番のみ答えを書きます。

A5.

5. この脳波では、右後頭部優位(P4、T6、O2)の棘波が見られます。PzやP3からも見えています。これ以外に、左前頭部優位(Fp1、F7、C3)にも棘波が見られます。2か所からの棘波なのでしょうか?

この方は、Panayiotopoulos症候群の方で、後頭部と前頭部の棘波はよく見られるパターンです。

しかし、脳波に赤い縦線が入っていますね。右後頭部(O2)と左前頭極(Fp1)の棘波には時間差がないように見えます。ここでの時間差とは、数十ミリ秒以下のレベルの話です。

F7はO2より少しピークが遅れています。しかし、Fp1は全く遅れがない。こんなに遠く離れているのに時間差が全くないのはどうしてなのでしょうか? Panayiotopoulos症候群では通常は後頭部の棘波が時間的に先行することが多いので、ここに違和感が感じられるのです。

20170614

これを踏まえたうえで、残りの6番と7番の答えは学会後に書こうと思います。

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2017/06/06

脳波クイズ A5 その1

前回のクイズの回答です。

前回の脳波の図ですが、チャネルの順番を一番よく用いられている順番に変更しておきました。波形自体は同じです。

今回は、1番から4番までの回答を書きます。

というのも、5番は見た目ほど簡単じゃないことが分かったからです。後で述べます。

1番から4番までは、レベル3くらいです。

A5.

1. 同側耳朶を基準とする左右交互の基準導出。

2. 覚醒時記録。

3. 垂直方向の眼球運動。

4. 前頭筋の筋電図活動。

解説

モンタージュについては、以前の問題と同じなため、省略します。

覚醒時記録である根拠は、両側後頭部(O1、O2)に約9Hzのα律動がみられるからです。

赤色の丸で示された下方向の振れは、前頭極(Fp1、Fp2)優位で、波形からは垂直方向の眼球運動です。おそらくは、ごく軽い瞬目によるものでしょう。

水色の四角の部分は、脳波がやや太くギザギザして見えます。これは、筋電図活動です。左に目立っていますが、右にも少し入っています。部位から考えると、前頭筋由来と考えられます。

さて、5番の異常波形ですが、下の図の赤い四角で囲んだ部分に出ています。これはてんかん発射で、棘徐波(spike-wave)です。

20170606_1

さて、この分布ですが、左側のてんかん発射に注目して、脳波を時間方向に引き延ばした図を下に示します。1画面3秒表示です。分布を分かりやすくするため、チャネルの順番を変更しています。

20170606_2

陰性(上向き)棘波が右頭頂後頭部と左前方(かなり広範囲)に出ていますね。

この方は、Panayiotopoulos症候群というてんかんの方で、後頭部と前頭部に棘徐波がみられるのは、よくある所見です。

ここまで示したうえで、再度問題です。レベル8~9くらい。

Q5. (改題)

5. この棘徐波の分布には違和感があります。どこがおかしいのでしょうか?

6. このような脳波になっていることを説明する仮説を考えてください。

7. 正確な分布を確認するための方法は?

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2017/06/04

脳波クイズ Q5

久しぶりの脳波クイズです。

Q5. 7歳男児。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 赤色の丸で示された下方向の振れは何か?

4. 水色の四角で示された部分は脳波の線が太目に見える。何か?

5. この脳波でみられる異常波形はどれか? その分布は?

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2017/03/25

脳波のclinical correlation

年度末業務に追われております。

脳波レポートを書くにおいて、所見の本文を書いた後、最終評価を書きます。

カナダで教わったのは、その次にclinical correlationを書くことでした。Clinical correlationとは、直訳すれば、臨床所見との関連付けとでもいいましょうか。

え、なんでこれが必要?

と思うかも知れません。

実は、脳波の所見の解釈は状況によって異なりますし、素人には解釈ができない場合もあるからです。

例えば、右中心側頭部から、てんかん発射が出ている。波形は、ローランド発射の形態です。脳波の最終評価としては、異常脳波(右中心側頭部からのローランド発射)になります。

ですが、ある患者さんでこの所見が見られた場合、この方の診断は何になるのでしょうか?

これには臨床情報が必要です。

仮に、左顔面けいれんの病歴のある学童期の患者さんであれば、中心側頭部に棘波を示すてんかん(いわゆるローランドてんかん)が疑われます。この場合、clinical correlationは、病歴と総合すると、中心側頭部に棘波を示すてんかんが示唆されるとなります。

ですが、発作の病歴のない場合はどうなるのでしょうか? この場合、脳波異常のみで特定の診断にはなりません。Clinical correlationとしては、発作の病歴のない場合、この所見の臨床的意義は明らかではない等の書き方になるでしょう。

別の例として、発作の病歴があるのに正常脳波の場合、どうなるでしょうか?

カナダでは、以下のように教わりました。

正常脳波であっても、てんかんは臨床診断であるため、てんかんの診断は除外されない。病歴を含め総合的に判断を。

右前頭部に多型性(polymorphic)徐波がみられる場合、どうしましょうか?

患者さんが通常の意識状態で記録された脳波であれば、右前頭部に局在性の脳機能低下が示唆される。器質的病変の鑑別も必要なため画像検査の検討を、あたりでしょうか。細かく言えば、白質を含む障害があるも言えると思います。

しかし、てんかん発作の直後に記録された脳波であれば、上記に加え、右前頭部から始まったてんかん発作後の脳波変化をみている可能性もあります。

このように、同じ脳波でも、文脈によって解釈は異なります。

そのため、脳波レポートを書く際には、ここまで書くのが理想です。

自分達の診療科のみであれば、そこまで書かなくてもだいたい通じるのですが、カルテは他科の医師も読むことがあります。また、他科の医師から脳波判読を依頼される場合もあります。このような場合に、clinical correlationの記載がないと、脳波にてんかん発射があるから(発作がないにもかかわらず)てんかん、(発作があって臨床的にてんかんと考えられるのに)脳波異常がないからてんかんではない、といった誤解を招いてしまいます。

脳波は正常異常のみならず、その意味まで考える。これが大切です。

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2017/03/11

脳波クイズ A4

前回のクイズの回答です。レベルは3くらいです。成人の脳波しかご存知ない先生だと、レベル5くらいに感じたかも?

A4

1. 縦連結の双極導出、いわゆるダブルバナナモンタージュです。

2. 睡眠時記録です。

3. 睡眠紡錘波(sleep spindles)です。

4. 正常脳波です。

解説

モンタージュは、Q1と同じです。4本ずつ左、右になっており、上の8本は側頭部を通り、次の8本は中心部を通ります。

睡眠時記録と考えるのは、後頭部優位の律動が出ておらず、睡眠紡錘波(sleep spindle)が出ているからです。ちなみに、8か月児では、後頭部優位律動の周波数は6~7Hz程度であり、θ律動です。α律動ではありません。

非レム睡眠段階2(sleep stage N2)に入ると睡眠紡錘波が出現します。下図の四角で囲ったのが睡眠紡錘波であり、青が左半球、赤が右半球からのものです。乳児期の睡眠紡錘波は成人のそれとは異なり、やや尖った形態を示します。

20170310

正常か異常かですが、これは正常脳波です。

睡眠紡錘波は左右同時に出現するのが原則です。左に出ていれば、その時には右にも出ている。そうでなければ異常です。

しかし、乳児は例外です。左右大脳半球の連絡が未成熟であるため、睡眠紡錘波は左右バラバラに出現します。この現象は、2歳までは正常と考えられています。

バラバラに出現するは言っても、ある一定時間の中で数えれば左右の出現回数には大差ありません。もし、片方が明らかに少なければ、少ない側の大脳半球に問題ありと考えます。

年長児以降で睡眠紡錘波が左右別々に出る場合は、異常です。脳梁欠損等、左右大脳半球の連携がよくない場合に、このようなことが起こります。

左右バラバラ紡錘波、大人と違うよ赤ちゃんは

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2017/03/04

脳波クイズ Q4

次なるクイズです。

Q4. 8か月女児。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 持続2秒弱の特徴的な律動波形が出ている。何か?

4. これは正常脳波か、異常脳波か?

20170304

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