2020/05/28

鵜呑みにしない

上の先生に言われたことを鵜呑みにしていませんか?

もちろん、駆け出しの頃は経験がないわけだから、上の先生の真似をし、言われたとおりにした方が間違いが少ないでしょう。

ですが、ある程度自分でできるようになったら、自分の頭でよく考える必要が出てきます。

まずすべきことは、上の先生がなぜそのようにしているのか理由を考えることです。色々調べてみて、裏をとることは大切でしょう。その結果、納得がいくのであれば、それでよいと思います。

納得できない場合、よく考えねばなりません。単に自分の勉強不足かも知れません。上の先生が言われたことが間違っているのかも知れません。よーく考える癖をつける必要があります。場合によっては、方向を180度転換する必要すらあります。

とても偉い先生、世界的に有名な先生が言っていたとしても、盲目的に従ってはなりません。間違っていることはあるのです。代々間違った教えが受け継がれていることもあります。当時は正しかったのかもしれません。しかし、時代とともに新しいことが分かってくるので、ずっと正しいとは限りません。

よく考えて、自分なりの答えを見つけたいものです。見つけられた時は、とてもうれしいです。ただ、それが間違っている可能性はゼロではありません。油断は禁物です。新たな情報が判明したら、方向転換する必要があるかも知れません。

若手を教える立場になりましたが、自分も間違っていることをいくらか(もっと?)は教えていることでしょう。勉強を続けるのは必要で、知識のアップデートをしていかねばなりません。

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2020/05/01

ピリドキシン依存症の新しいバイオマーカー

共同研究先の先生が、ピリドキシン依存症(ALDH7A1欠損症)の新しいバイオマーカーに関する論文を出版されました。私も共著者の1人です。

この疾患のバイオマーカーは、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(α-AASA)ピペコリン酸です。

ALDH7A1遺伝子でコードされるα-AASA脱水素酵素の活性低下によりα-AASAが上昇し、さらにその上流のピペコリン酸も上昇します(稀に例外あり)。

α-AASAは水溶液内ではΔ1-P6Cという物質と平衡状態にあり、このΔ1-P6Cが活性型ビタミンB6を不活化し、脳内のγ-アミノ酪酸(GABA)産生が滞り、てんかんを発病すると考えています。なので、足りなくなったビタミンB6を大量に補えば、発作が改善するという仕組みです。

α-AASAの問題点は不安定であること。また、Δ1-P6Cと平衡状態にあることから、絶対定量は困難でした。

最近、コロラドのグループより、LC-MSとNMRを用いた研究で、6-オキソピペコリン酸がα-AASAよりも安定で有用なマーカーであることが報告されました。また、α-AASAとΔ1-P6Cの平衡の間に、6-ヒドロキシピペコリン酸という物質があることも報告されました。直鎖であるα-AASAが環を巻くと6-ヒドロキシピペコリン酸になり、これが脱水するとΔ1-P6Cになるという順番です。そして、この6-ヒドロキシピペコリン酸から6-オキソピペコリン酸に変換される経路があるらしいのです。また、このグループは、Δ1-P6Cの他にΔ2-P6Cという物質もあるらしいと推測する記載をしていました。

この論文が出た時点で、私の共同研究先の先生はGC-MSを用い、ALDH7A1欠損症の尿中に6-オキソピペコリン酸を既に同定していたのですが、先を越されてしまったと言っておられました。その後、ALDH7A1欠損症の尿中にΔ2-P6Cが確実に存在することを確認されました。さらに、6-オキソピペコリン酸は年長児で高く、新生児期には低いことも示されました。ピペコリン酸は逆でした。これらの結果をまとめ、めでたく論文にされました。

これで、ピリドキシン依存症の診断につながるバイオマーカーが4つになりました。

α-AASAとピペコリン酸は、我々のラボで定量できます(α-AASAは半定量)。

6-オキソピペコリン酸とΔ2-P6Cは尿中メタボローム解析で測定できます。尿中メタボローム解析には尿中有機酸分析が含まれておりますので、施設基準を満たせば、保険請求が可能です(今年度より)。つまり、通常の臨床検査の1つとして行えることになりました。

現在論文を執筆中ですが、ピリドキシン依存症の可能性を全く考えられておらず、当方で血清と髄液を分析したてんかんの方(小学生)で、α-AASAの上昇をみとめた方がおられました。主治医に連絡してビタミンB6を始めていただいたところ、年に何回か発作が群発していたのがゼロになり、他の抗てんかん薬を減らせているそうです。後の解析で、ALDH7A1遺伝子に異常がみつかりました。ご家族は非常に喜ばれたとうかがっております。

ピリドキシン依存症は通常新生児期に発病しますが、発病年齢が遅い事例も報告されており、通常の検査では診断ができません。見逃しを減らすには、ビタミンB6製剤のトライアルを積極的に行うことです。ただ、なかなかそうはいきません。

我々のラボでの分析ではタイミングにもよりますが、通常1-2か月待つことになります。上記の尿中メタボローム解析を1回行えば見つかりますし(検査結果は1週間以内で戻ってくる。ついでに130種類の先天代謝異常症のスクリーニングも行える)、早期発見早期治療の方が発達予後にはよいですので、原因不明のてんかんで検査を行う価値は高いと思います。

ちなみに、我々の施設では尿中有機酸分析の依頼は5年以上前に止めました。メタボローム解析の方がはるかに多くの物質を測れ、診断可能な疾患が多いためです。どちらが効率的かは明らかです。

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2020/04/18

ビタミンB6依存性てんかんの検査について

ビタミンB6依存性てんかんを疑って検査依頼がくるケースが時々あります。

 

ビタミンB6製剤が効いたから、という話は分かりやすいです。

ALDH7A1欠損症の場合、診断マーカーは、α-AASAピペコリン酸です。これはビタミンB6製剤による治療開始後も異常を示します(尿中ピペコリン酸を除く)ので、いつの検体でも判断可能です。最近、日本疾患メタボローム解析研究所で、新しいマーカーであるオキソピペコリン酸Δ2-P6Cが測れるようになり(正確には、もともと検出できていた異常ピークの正体がこれらの2つの物質であることが判明した)、尿検体でより正確な診断が可能になりました。

PNPO欠損症の場合、診断マーカーは、血中ピリドキサミンです。さらによいのは、血中ピリドキサミン/4-ピリドキシン酸比で、これは治療開始後も異常を示します。ピリドキサミンはまだ我々のラボでは測れませんが、検査会社のビタミンB6測定のピリドキサミン(これは、ピリドキサミンとピリドキサミンリン酸の和)である程度代用可能と思われます。

PLPBP欠損症の場合、髄液中ピリドキサールリン酸低下の報告しかありません。これは治療を開始すると上昇しますので、治療前検体でないと判断できません。PLPBPの定量キットは市販されていますが、タンパク量を測っているだけで、機能(活性)を測れませんので、点変異による機能喪失の判断は困難です。

高プロリン血症II型の場合、診断マーカーは、P5Cプロリンです。プロリンは通常診療でのアミノ酸分析で測れます。P5Cは、日本疾患メタボローム解析研究所で測定可能です。治療の有無にかかわらず判断できます。

つまり、ビタミンB6製剤が効いた場合、PLPBP欠損症以外については、いつの時点で代謝マーカーを測っても判断可能です。PLPBP欠損症では治療前髄液検体があれば診断の参考になりますが、ピリドキサールリン酸低値のみでは診断に特異的ではありません。現実的には、上記の代謝マーカーをまず測り、いずれも否定的であればPLPBP遺伝子解析を行うといった手順になることでしょう。もちろん、上記の疾患の遺伝子パネルを先に行い、見つかった遺伝子異常の機能解析の一環として代謝マーカーを測定するという順番もあることでしょう。

 

もう1つの「疑って」は、新生児期・乳児期の原因不明のてんかんなので、鑑別診断の1つとしての意味合いです。

この場合、いただいたご依頼のほとんどが「ハズレ」です。希少疾患ですから。

とは言っても分析依頼を断ることはありません。症状が非特異的なので、ある程度スクリーニングが必要だからです。

ただ、依頼をくださる先生方に1つお願いしたいのは、ビタミンB6依存性てんかんを鑑別診断の1つとして挙げるのであれば、検体採取後は必ずビタミンB6製剤のトライアルを行っていただいたい、ということです。代謝物質測定にもある程度の時間がかかるため、トライアルはなるべく早く行う必要があります。効果があれば患者の人生が変わる可能性があるのですから。

トライアルは、単発(例えば、静脈注射1回)のみでは不十分です。すぐに効果が得られない場合、充分量を最低1週間は使う必要があります。遅れて反応する方(late responder)がいるからです。

 

私が考えるビタミンB6依存性てんかんの診断手順を以下に書きます。

  1. 原因不明のてんかんでは、ビタミンB6開始前の検体採取・保存をまず行う。
  2. ビタミンB6トライアルを充分に行う(充分量を最低1週間)。
  3. ビタミンB6が有効な場合、ビタミンB6依存性てんかんの代謝マーカーの測定、遺伝子解析を行う。

検体保存の次、ビタミンB6トライアルの前に代謝マーカーのスクリーニング検査をするかどうかは、検査に要するマンパワー、時間、費用について考えて決めることになります。我々のラボではそれなりに時間がかかりますし、ビタミンB6依存性てんかんの原因疾患すべてをひっかけるためには、充分なビタミンB6トライアルが必須と考えております。

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2020/02/29

ミダゾラム口腔用液の製造販売承認申請が行われました

武田薬品工業のウェブページによりますと、てんかん重積状態の治療薬として、ミダゾラム口腔用液の製造販売承認申請が行われたそうです。

ずっと待ち望んでいた申請です。ここから承認まではまだまだ時間がかかるのではありますが...

てんかん重積状態は神経救急の中でよくみられる病態ですが、病院前治療が重要であるにも関わらず、本邦では有効な薬剤が市販されていませんでした。

抗てんかん薬の坐剤は市販されていますが、溶けるのに時間がかかる。すぐに止めねばならない発作を坐剤が溶けるまで20分、30分とのんびり待っている余裕はありません。実際、ガイドラインでは抗てんかん薬の坐剤がてんかん重積状態に有効であるエビデンスはないと記載されています。そうなんです、ただのおまじないみたいなもんです...

てんかん重積状態は、始まってから時間が経過するほどお薬が効きにくくなります。なので、現場でさっさと治療できるようにすることが重要です。

既に米国等で認可されているミダゾラム口腔用液が承認されれば、日本でのてんかん重積状態の病院前治療は大きく前進するといってよいでしょう。

次にクリアすべきは、現場で誰がこの薬を使ってよいかといった体制整備でしょう。学校でてんかん重積状態を起こした場合、親しか使えないのでは意味がありません(親が学校に着くまで待てというのか?)。学校教諭が使えるようになればとも思いますが、医療行為になるという問題がありますし(坐剤については医療行為としないという通達が出ている)、即効性がある分、呼吸抑制や血圧低下といった副作用がどうなるかという注意は必要でしょう。

学校教諭が難しければ、救急隊員による使用を可能にすれば、その後のバイタル監視や必要に応じての呼吸サポートはできることでしょう。こういった体制整備が行われ、救急車が病院に到着した時点では発作は既に止まっていました、という事態が多くなればよいなと思います。海外では救急搬送そのものが減らせることになっていますが、日本では使用後の医療機関受診はおそらく必須化されると思っています。

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2020/02/10

全国てんかんセンター協議会

全国てんかんセンター協議会(JEPICA)へ参加してきました。

JEPICAとは、てんかん診療にかかわる多職種の学会です。

てんかんの患者さんは多くの問題をかかえておりますので、チーム医療が必須です。

いつもながら、とても熱気のある会議だなと思います。他施設の取り組みが色々と発表されるので、とてもためになります。自分たちの弱みもよく分かります...

この会議の終了後、てんかん診療拠点病院の会議があり、てんかんコーディネーターを今後どのようにして育成していくかの話し合いがありました。

いや、そもそも、てんかんコーディネーターとは何なのか? がきっちり明らかにされていないので、なかなか前に話が進みません。

当院では医療ソーシャルワーカーと小児専門看護師が担当していますが、「てんかん診療を円滑に行う(院内および院外)」という考え方はたぶん一致しますが、それぞれ独自の仕事の領分があるわけです。他の施設でも、精神保健福祉士や医師が担当しているところがあり、業務内容は千差万別です。

てんかん診療拠点の事業では、県内でのてんかん診療連携を円滑に行うことが重要項目でありますので、こういった連携にも何らかの役割を果たしていただくことになるのかなと考えております。

てんかんの診療機関でもそれぞれ果たすべき役割があり、てんかんセンターを名乗る機関で全てやろうとするとパンクは必定です。患者さんに不安を与えないように配慮しつつ、医療機関での分業が必要と考えています。そのため、県内全体の診療レベルの底上げを図ろうとしているところです。

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2019/12/23

5年の月日

ある代謝物の測定系を作っていますが、ようやくほぼ納得いくレベルになりました。

記録を眺めると、実験を始めたのが2015年1月。ほぼ5年経っています。

この間、がんばって実験しては失敗、しばらく休憩してまた実験、失敗、の繰り返しでした。他の仕事もあったので、時間を割くのには気力が必要でした。

2年ほど前にある程度測れるようになったのですが、まだ気になる点が色々ありました。この段階で論文を書いたのですが、却下が続き、正直気分が萎えました。

この1か月ほどで集中して実験し、以前よりも精度がやや高くなり、かつ測定に要する時間が8割に減りました。

発想を少し変えてみたのがよかったと思います。「急がば回れ」みたいな感じ。

がんばってみるものだな、とつくづく感じました。

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2019/12/07

脳波クイズ Q9

なかなかブログの更新ができません。心の余裕がある時にはチビチビ書き残したいと思います。

久しぶり(1年ぶり!)に脳波クイズです。

Q9. 2か月女児。新生児仮死後(詳細は省略)。フォローアップ目的の脳波(やや眠い時点の記録)です。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か? ちなみに、A12は、耳朶平均電極です。

2. 出現している特徴的な波形を表現せよ(何かではなく、波の形態)。

3. この波形の正体は何か?

4. 正常脳波か、異常脳波か?

20191207

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2019/10/25

てんかんの病態に切り込むにはどうするべきか?

先天代謝異常学会に参加しています。

一応、学会員でありますので。

やっていることは、かなりニッチな内容なので、発表カテゴリーは「その他」とか、オムニバス的なカテゴリーとかが常です。

まぁ、ニッチならではの強さはあります。競争が激しくないとか。

思えば、今までいつも人とは違うことをしてきたなぁ...

話題を学会に戻します。

学会の性質上、基礎的な話、研究的な話が多いですし、医師以外の参加もわりとあります。次世代シーケンス、質量分析、酵素活性測定、ドラッグデリバリー等、実験関係が好きな方は、心がときめくかも(私もわりと好き)。希少疾患が多いので、臨床医としてもどのように早期診断して治療するか等、興味はつきません。治験も精力的に進められています。

自分はてんかん専門医でもあるのですが、てんかん学会では、こういった基礎的な話がこんなには多くないと感じています。基礎疾患の診断のための次世代シーケンスは非常に発達し、あまたのてんかん性脳症の遺伝子が見つかりました。ですが、これらからどうしててんかんが起こるのかは、まだあまり分かっていないように思います。異常な回路網ができて発作活動が起こるのは、コンピュータシミュレーションで計算したりなどもできますが、遺伝子などの根っこから、異常な電気活動という表層へ届く道のりがイメージできないのです。

先天性代謝疾患はターゲットが見えやすい、てんかんはターゲットが見えにくい。こういった違いが原因なのかなとも思いますが、てんかんの起こるメカニズムにもう少し踏み込めたら、といつも思っています。そのため、先天代謝異常学会に参加している方々の「見方」を少しでも学べればと思います。

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2019/08/26

エベロリムスの適応拡大が承認

エベロリムスという薬剤が、結節性硬化症の治療薬として使われています。

結節性硬化症は、脳、心臓、腎臓、肝臓、皮膚などに病変ができる先天性の疾患です。細胞増殖などに関連するmTOR経路の亢進により起こります。

エベロリムスには、このmTOR経路を阻害する作用があり、これが治療効果を発揮すると考えられています。

このたび、このお薬が、結節性硬化症に合併する難治てんかんに対して保険適応の拡大が承認されました。

結節性硬化症のてんかんは、お薬が効きにくいことが多いのですが、1つ選択肢が増えたことになります。

選択肢が増えたのはうれしいですが、治療の順番に悩む機会は増えそうです。

通常の抗てんかん薬、ビガバトリン(West症候群に対して)、てんかん外科などの他の治療法、それぞれの適切なタイミングを考えなければなりません。

また、エベロリムスは免疫抑制作用があるため、小児の場合は予防接種が問題になります。生ワクチンは接種できなくなりますし、不活化ワクチンも効果が落ちますので、治療の順序と時期をよく計画していく必要があります。

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2019/07/22

てんかん重積状態は、てんかん以外でも起こる

てんかん重積状態について講演をするため、準備をしているところです。

てんかん重積状態は、てんかん発作が遷延する場合、または頻発して発作と次の発作の間に意識が戻らない場合、です。

時々(しょっちゅう?)誤解されているのですが、てんかん重積状態は、てんかんの方以外でも起こります。なぜなら、てんかん発作がてんかんの方以外でも起こるからです。

つまり、

てんかん発作 ≠ てんかん

なわけです。

てんかん発作は、大脳ニューロンの異常活動により一過性に脳機能に障害がもたらされる病態です。

この定義の中に、「てんかんに罹患している必要性」は一切記載されていません。頭部外傷だろうが、低血糖だろうが、電解質異常だろうが、熱性けいれんであろうが、大脳ニューロンの異常活動によりてんかん発作が起こりえます。

でも、ふつう「てんかん」発作と聞くと、「てんかん」という病気をお持ちの方で起こる発作と解釈しがちですよね? なんと、てんかん専門医ですら、そのような誤解をしている方々もおられます(不勉強と言えば、それまでですが)。

仕方ないですね。用語が不適切なのですから。誤解を招くような用語を使っているのが悪い。てんかん学会の用語委員会が改訂してくれないものか... でも、そもそも英語がepileptic seizureなので、世界的な問題なのかも。

なぜ、このような用語の是非にこだわるかというと、以前に日本小児神経学会から、小児けいれん重積治療ガイドライン2017という本が出版されたのです。私もガイドライン策定委員会の委員の1人でした。

この委員会で真っ先に問題になったのが、「けいれん重積という用語は不適切ではないか?」ということでした。この表現は、小児科領域ではよく使われます。けいれん重積型急性脳症なんて言われることはよくありますし。

しかし、医学用語として、けいれん重積という用語はないのです。あるのは、てんかん重積状態(status epilepticus)という用語です。けいれん重積は、正確には、けいれん性てんかん重積状態(convulsive status epilepticus)というのが正しいです。

なので、小児てんかん重積状態治療ガイドラインでよいのではないか、という意見もありました。

ここで、最初に書いた「誤解」の問題が議論になりました。

てんかん重積状態ガイドラインという名前にしてしまうと、特に小児救急の場で問題になる熱性けいれん重積状態、電解質異常や低血糖、脳炎・髄膜炎、頭部外傷等による発作重積状態といった大切な事項が意識されなくなってしまうのではないか? これは「てんかん」を診療する医師のためへのガイドラインであり、一般医家には関係のうすいガイドラインと誤解されないか? こういった懸念です。

そのため、医学用語としては正しくなくとも、小児科領域でよく使われている「けいれん重積」という言葉がガイドラインのタイトルに用いられたわけです。一般の小児科医、救急科医にも手にとっていただけるように。この辺りは、導入部分で経緯が詳しく説明されています。

けいれん重積という用語の欠点は、もう1つの大切な病態である、非けいれん性てんかん重積状態(non-convulsive status epilepticus)の概念が抜け落ちていることです。これは、特に救急・集中治療で問題になる病態ですから、今後のガイドライン改訂に反映していく必要があります。

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