2019/05/27

Pediatric EEG Master Workshop 2019

台湾で開かれた脳波のワークショップに講師として参加してきました。昨年に引き続き、2回目です。

台北のシェラトングランドホテルが会場でしたが、とても巨大です。日本にこんなのがあるのだろうか(よく分からない)?

昨年は岡山空港から直行便(タイガーエア)で行ったのですが、今年は席が取れず、関西空港からの直行便(エバー航空)で行きました。エバー航空の方がサービスはよいですし、台北に着く時刻が早いのが魅力です。ただ、関空まで行くのは、正直ちょっと疲れます。

昨年は台湾に遅く着いたうえ、入国審査が長蛇の列で時間がかかり、到着ゲートに着いた時にはお迎えの方がしびれを切らして帰ってしまっていました。そのため、地下鉄を使ってホテルまで自力で行ったのでした。まぁ、経験にはなりましたが。今年は、お迎えの方に無事会えたので、全てスムーズに行きました。

その晩は海鮮料理を御馳走(巨大なカニや海老にびっくり)になり、英気を養って当日の本番です。

朝一番に講演を2つこなし、昼休憩の後は、small groupで病歴、脳波、画像検査を眺めながら、3例のcase discussionです。若手の先生方が多く、活気あふれる議論ができ、勉強になりました。ワークショップの準備を仕切られたのは、陳(Chen)先生という方ですが、準備には時間を要しただろうと思います。

晩には広東料理を御馳走になり、大満足です。台湾の先生方はとても陽気、フレンドリーで、冗談をたくさん言われて面白い。お酒もよく飲まれます。どうもアルコールの代謝酵素が自分とは違うようです。アルコール58度のお酒も出ましたが、ほんのちょっといただくだけにしました。舌や喉が焼けるようでしたが、味はおいしかったです。

台湾に学会関連で参加するのは4回目となり、知り合いも増えました。大切にしていきたいと思います。

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2019/05/02

てんかんの診断の原則

令和の世になりました。

2回目の新年が来たような気分です。

学会講演の準備をしているのですが、てんかんの診断の原則について書きたいと思います。過去にも何回か触れたかも知れません。

てんかんの診断で重要なのは、

病歴 >>> 脳波

です。

脳波は補助検査であり、病歴に優先することは決してありません。

病歴を聴取して、以下の評価をまず行います。

1. てんかんの可能性が高い。

2. てんかんの可能性が低い。

3. 何とも言えず。

1.の場合、脳波で病歴に矛盾しないてんかん発射がみられれば、脳波はてんかんの診断を支持します。脳波に異常がない場合でも、てんかんの否定はできません。この場合、脳波を再検する、発作時脳波を記録する、脳波の所見にこだわらずにてんかんと診断する、といった選択肢が考えられます。これはケースバイケースです。

2.の場合、そもそも脳波検査を行う必要は(高く)ありません。てんかんでないという自信があるなら、もちろん脳波検査は不要(無駄)です。問題になるのは自信があまりない時です。ここで脳波検査を行っててんかん発射が検出された場合、迷路にハマリます。私の考えとしては、それでもてんかんと診断しない方がよいです。あくまで病歴優先、脳波は補助検査です。脳波に全てをゆだねてはなりません。では、てんかんではないと言ってしまってよいのか? これも状況によります。私のお勧めは、確度が高まるまでは判断を保留するということです。

3.の場合、2.の自信がない場合と基本的には同じです。脳波は参考にはなるかも知れません。大切なのは、脳波でてんかん発射が見られればてんかん、見られなければてんかんではない、といった考え方をしてはならないということです。繰り返しますが、脳波に全てをゆだねてはなりません。

病歴より明らかに起立性低血圧による失神と思われるのに脳波をとってしまう、意識障害をともなう焦点発作(従来用語では複雑部分発作)を繰り返していると考えられるのに脳波異常がないために治療を始めない、発熱などの明らかな誘因があるのに脳波検査を行う、といった事例は数多く経験します。

てんかんの診断ミスは、以下によって起こります。

1. 不十分な病歴聴取

2. 発作症状に関する知識不足

3. 脳波の判読ミス

4. 脳波の解釈ミス(脳波への過信)

1.と2.はワンセットです。ちょっと時間をかけてお話を聞けば出てくる手掛かりが見逃されていることは多々あります。きっちりとした病歴聴取ができなければ、てんかんの診療は不可能です。3.はトレーニングにより解決する問題ですが、きちんと脳波を読める人に教えてもらわなければ、正しい読み方は身につかないでしょう。4.は脳波を読めると思っている人に起こりがちなミスです。波形は認識できていたとしても、これを病歴とくっつけて総合判断できなければ、重大な間違いにつながります。どんな検査にも限界があるのです。

てんかんであるという診断は、多大な注意を要します。患者さんの人生に大きな影響を及ぼすからです。てんかん診療を日頃行っていると、てんかんという病気が当たり前すぎて、この辺りの感覚が鈍ってしまいがちです。気をつけていかねばと強く思います。

もちろん、てんかんをてんかんでないと間違えてしまうと、こちらも問題です。適切な治療の機会を奪うことになるからです。バランスが大切です。

もう1つ大切なのは、偉い先生方の言うことを鵜呑みにしないことです。誰だって間違えますから。何故そうなのか、と常日頃自分の頭で考えることが大切です。今まで当然のことと教わってきたことに、実はたいした根拠がなかったなんてこともあります。

私はまだ中堅どころくらいですが、もし若手の医師がお読みであれば、私の書いたこの記事も鵜呑みにせず、自分の中できっちり消化してから実践していただければと思います。

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2019/04/19

ラコサミドドライシロップと注射薬

新規抗てんかん薬のラコサミドですが、粉薬(ドライシロップ)と注射薬が発売されています。

錠剤をつぶす処方を書く必要がなくなりますし、諸般の事情で内服できない場合にも注射薬が使えるのはとても便利です。

用量設定は、ゾニサミドに近い感覚ですね。

治験での都合上、体重30kgよりも29.9kgの方が使用可能量が多い(最大8mg/kg/日 vs. 12mg/kg/日)ので、ここはリアルワールドの世界で調整せざるを得ません。

個人的には、使いやすいお薬ではないかと考えています。

焦点てんかんに効くとされていますが、CSWS(睡眠時持続性棘徐波)を示すてんかん性脳症に効くのか、とても興味があります。

Naチャネル拮抗薬であるカルバマゼピンはCSWSを悪化させますから。

ラコサミドは、Naチャネル拮抗薬ではありますが、拮抗の仕方が異なります。また、CSWSを示すてんかん性脳症に効いたという症例報告もありますので、期待してしまいます。

レベチラセタムが単剤承認されて、カルバマゼピンに置き換わる第一選択になりそうな雰囲気を感じていましたが、ラコサミドも将来性があるように感じています。

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2019/02/04

ラコサミドが小児に使えるようになりました

新規抗てんかん薬のラコサミド(商品名ビムパット)の適応年齢が引き下げられ、4歳以上に使えるようになりました。

このお薬は、電位依存性ナトリウムチャネルを抑制するのですが、従来薬とは異なるメカニズムで抑制するそうです(遅い不活性化の促進)。

対象となるてんかん発作型は焦点発作です

このお薬は単剤の適応がありますので、てんかんの診断を診断した後、最初に使える薬の候補の1つになります。

今までは、焦点発作に単剤で使える新規抗てんかん薬はレベチラセタムのみでしたので、対抗馬になりそうです。

用量設定は、ゾニサミドに近いです。

主な副作用は眠気、ふらつき。

従来薬でナトリウムチャネルの代表とされるカルバマゼピンよりは、重症薬疹の頻度が低いのがよい点です。また、肝酵素誘導作用もない。薬物相互作用が少ないので、高齢者等、併用薬の多い方には使いやすいと思います。

今は錠剤だけですが、ドライシロップも出てきますので、こどもの患者さんにとっては飲みやすくなりそうです。

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2018/12/28

脳波クイズ A8

今回は、すぐに解答です。年内に終えたいですもんね。

レベルとしては、2-3くらい。

A8.

1. 同側耳朶を基準電極とする基準導出。左右交互配置で、最後は正中部。

2. 覚醒時記録。

3. 右前側頭部(F8)に、1Hz強の比較的律動的な徐波がみられる。

4. 低周波遮断フィルタのカットオフ周波数を下げる、1ページ当たりの秒数を長くする、等。

5. 正常脳波。

解説

モンタージュについては省略。

覚醒時記録なのは、後頭部優位のα律動がみられるからです。

特徴的な波形ですが、F8の部分に律動的な徐波がみられます(下の水色の四角)。

20181228_1

どうやったら見えやすくなるかですが、低周波遮断フィルタのカットオフ周波数を下げるという手があります。

とはいうものの、元々の脳波の表示条件を書いていませんでした。低周波遮断フィルタは1Hzにセットしてありました。

これを0.5Hzに下げますと、以下のようになり、徐波がやや目立つようになります。

20181228_2

さらに、1ページの表示秒数を長くする(脳波を圧縮する)と、より見えやすくなります。

20181228_3

徐波の正体ですが、下の図を見てみましょう。

20181228_4

心電図のR波に合わせて黒い縦線を引いてみましたが、F8の徐波とタイミングが一定していますね。側頭動脈の拍動をF8電極が拾っているのです。

つまり、これはアーチファクトですので、脳波の正常異常については、正常脳波という判定になります。

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2018/12/26

脳波クイズ Q8

年末が近づいてきました。

半年以上ほったらかしにしていましたが、(たぶん)今年最後の脳波クイズです。

Q8. 15歳男児。てんかん発作とおぼしき病歴(詳細は略)で、局在性の脳波異常があるとのことで紹介された。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 出現している特徴的な波形を表現せよ(何かではなく、波の形態)。

4. この波形をより目立つように表示する方法は?

5. 正常脳波か、異常脳波か?

20181226

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2018/12/12

抗てんかん薬は浮気しないこと

紹介されてきた患者さんで、抗てんかん薬を複数剤内服しておられる方は少なからずおられます。

ところが、処方履歴をみますと、最初の薬を充分使わずに次の薬を始め、それも充分使わずに3つ目の薬を加える、といったことをされている事例が時々あります。

おそらくは、あまり手ごたえがないということで、次の薬を始めてしまうわけですが、色々な弊害があります。

第一に、使った薬の有効性が充分評価されていないことです。ある抗てんかん薬が効いていないとはっきり言えるのは、規定の最大量、または副作用が出る手前の量まで増やした状態でも発作が止まらない場合です。最大量の4-5割程度で効かない場合、実は効かない薬なのかも知れませんが、充分量使っていないからという可能性もあります。充分量を使って発作が止まらなければ、そこで初めて次の薬を考えればよいのです。

第二に、多剤療法になりやすいことです。効いていない前の薬を止めてしまうのならよいのですが、次の薬も中途半端に使っていますと、発作がよくならない。なので、前の薬を止められない。こんなことになってしまいます。

第三に、副作用が出やすくなり、かつ原因の切り分けが困難になることです。途中でどんどん薬が足されるので、発作に効かないにもかかわらず、眠気やイライラ、食欲不振等ばかりが出てしまう場合があります。

抗てんかん薬の処方は、なるべく少ない薬剤数で発作を止めるよう試みるのが原則です。

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2018/10/21

ピリミジン代謝異常症

ずっと以前に、ピリミジン代謝異常症 について書きました。

ピリミジン分解経路には、3つの酵素があります。

ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)、ジヒドロピリミジナーゼ(DHP)、β-ウレイドプロピオナーゼ(βUP)です。

これらの疾患の臨床症状については、あまりよく分かっていません。自閉症、知的障害、小頭症などの報告がありますが、無症状例も多い。そのため、神経症状が偶発的なものかどうかがよく分かっていません。

症状がなければ日常生活には問題がないわけですが、特殊な状態では問題になります。

現在まで、DPD欠損症の患者と保因者、DHP欠損症患者では、抗癌剤の5-FU(フルオロウラシル)で極めて重篤な副作用(時には命にかかわる)をきたした報告があるからです。

5-FUはウラシル(ピリミジン塩基の1つ)の誘導体ですから、上記の酵素で分解されます。上流の酵素の異常であるほど、5-FUが体内に過剰に蓄積するのだと思います。

ピリミジン代謝異常症の専門の研究者たちは、5-FUで治療を行う前に上記の疾患のスクリーニングを行うのが理想と考えています。通常は無症状なので、治療前に診断がついているケースはほぼ皆無だからです。

以前にβUP欠損症の方を経験しましたが、最近になり、DHP欠損症の方に出会いました。

運悪く癌になって治療を受ける場合には、この病気にかかっていることを必ず告げるようお話ししています。

先天性代謝異常症を診断することは、特異的な代謝治療があれば行えるというのが最大のメリットですが、もう1つ、使ってはいけない薬があるという情報を伝えられるというのも大きなメリットだと考えています。

βUP欠損症とDHP欠損症の方をどうやって診断したかと言いますと、尿中メタボローム解析でスクリーニングしたからです。この病気は、症状からこの病気の可能性を疑って診断する、ということはまずできません。

βUP欠損症もDHP欠損症も、世界で20-30例程度しか報告がありません。遺伝子変異の頻度は分かっており、数千人から数万人に1人いるのではないかと言われています。要するに、未診断例がかなりありそうだということです。

この方たちを「病気」というのは必ずしも適切ではないのかも知れませんが、5-FU治療にハイリスクの方というのは間違いありません。

お酒の弱い方にウォッカを飲ませてはいけないように、気をつける必要があるのです。

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2018/10/17

銀杏のお菓子

世の中には、銀杏(ぎんなん)のお菓子が売られているようです。

ネットで検索すると、けっこうヒットします。近くのコンビニでも見かけました。

自分も銀杏は好きで、おつまみには最高ですね! 秋の味覚です。

ですが、小児科医、小児神経専門医としては、警鐘を発したい。

銀杏には、銀杏毒が含まれています。

特に、小さなこどもは、たくさん食べてはいけません

銀杏は年齢の数まで、と言われたりします。

銀杏中毒の報告が時折あります。詳しくは、こちら

中毒センターからの情報も有用です。

やっぱり怖いのは、けいれん意識障害を起こす場合があることです。

銀杏毒は、4'-メチルピリドキシンというビタミンB6類似物質で、体内でのビタミンB6の作用を阻害します。ビタミンB6は、脳内でGABA(抑制性神経伝達物質)を作るのに必須なため、銀杏中毒ではGABA欠乏により脳の興奮が抑えられなくなり、けいれんが起こるのです。

治療としては、ビタミンB6製剤を大量に使って銀杏毒に拮抗させるのが有効です。

銀杏のお菓子で問題なのは、けっこうな数が1袋に入っていることです。食べようと思えば、何十個も食べられる。

ついうっかりテーブルのうえに出しっぱなしにしておいたら、子供が全部食べてしまっていた、なんてことが起こる可能性があります。

小さな子供のいるご家庭は要注意ですよ!

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2018/09/23

ロラゼパム静注薬が承認

9/21付けで、ロラゼパム静注薬の製造販売が承認されました。

ロラゼパム静注薬はベンゾジアゼピン系薬剤であり、てんかん重積状態の第一選択薬となる薬剤です。

欧米諸国ではもちろん使用可能で、私もカナダ留学時代に何度も使いました。

海外では、ロラゼパムの他、ジアゼパム静注薬が使用されます。日本は事情が異なり、ミダゾラム静注薬も承認されています。

ロラゼパム静注薬の特長は、ジアゼパムやミダゾラムよりとあまり変わらない即効性を有し、かつ作用時間が数時間と長いことです。そのため、てんかん重積状態の発作を止めた後、再発予防効果がより高いのではと期待されます(今の所、これをきっちり示したエビデンスは出ていないと思われますが)。

ロラゼパム静注薬はジアゼパム静注薬のような強い血管痛を起こしませんので使いやすいです。また、ジアゼパム静注薬は希釈すると結晶が析出してしまうため、原液のまま使用でしたが、ロラゼパム静注薬は希釈可能です。

微妙なのは、日本では既にミダゾラム注射薬が承認されており、これとの住み分けがどうなるかといったところです。

とはいうものの、海外のガイドラインに第一選択薬と記載されている薬剤が日本で使えるようになったのは、とても喜ばしいことです。

唯一の不満は、最大使用量が海外の半分であることです。

カナダ・米国では、0.05-0.1mg/kg/回を最大2回使えます。私自身、カナダでは0.1mg/kg/回でしか使ったことがありません。副作用で困ることはほとんどありませんでした。ですが、日本で承認された用量は、0.05mg/kg/回を2回までです。

てんかん重積状態は緊急事態であり、なるべく早く発作をきっちり止める必要があります。0.05mg/kg/回で止まる方が多いのでしょうが、止まりにくい方(過去に止まりにくかったことがある患者さんなど)では、十分量のお薬で発作を止めにいくことが重要と思います。この際に使用量の上限を海外より低く設定されていては困ります。添付文書にそう書かれてしまうと、裁判等で問題になる可能性があるからです。

以前に同じことがホストインでも起こりました。これも用量が海外の75%に制限されています。これも未だ解決していません。

治験計画をたてた関係者が、いったい何を重要視されたのかなぁと悩んでしまいます。

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