2017/07/17

ALPS研究会

7/15(土)は、ALPS研究会という会に参加してきました。

アルプスって山関係? と思われるかも知れませんが、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、ALP)という酵素に関する研究会です。

今回のメイントピックは、低ホスファターゼ症先天的に組織非特異性ALPが欠損する先天性代謝異常症です。

ALPは、自分が研究をしているビタミンB6の末梢血から中枢への輸送に密接に関わっています。その関連で、ビタミンB6依存性てんかんについての講演に参りました。

低ホスファターゼ症は骨がきちんと石灰化しない病気という認識が自分になったのですが、これがビタミンB6との関連でてんかんを起こし得るということで、骨代謝と神経の世界の出会いという何とも不思議な感じです。まぁ、体はどこかで全てつながっているということですね。

今回のALPS研究会、基礎から臨床まで色々な話が聞けてよかったです。低ホスファターゼ症の治療の話、歯の異常についての話、iPS細胞の話、ALP活性を阻害する薬の話、腸管ALP(組織非特異性ALPとは異なるアイソザイム)の機能についての話等、医師の他、薬学や栄養学の先生方も参加されており、研究の横方向への裾野の拡がりを感じました。

異なる分野の研究者の発表を聴講できるのは素晴らしい。自分が今後何をするべきかを考える材料になりましたので、こういった機会を活用していきたいです。

| | コメント (0)

2017/07/10

脳波クイズ A6

前回のクイズの解答です。レベルは3程度。

A6.

1. 同側耳朶を基準とする基準導出。左半球、右半球、正中部の順になっています。正中部のみ、基準電極は平均耳朶電極になっています。

2. 睡眠時記録。

3. 頭蓋頂鋭波、睡眠紡錘波、K複合波、14Hz陽性棘波。

4. 正常脳波。

解説

モンタージュについては省略します。

睡眠時記録である根拠は、後頭部にα律動(alpha rhythm)がみとめられず、後述するような睡眠に特徴的な波形がみられるからです。

下の図で、赤い三角は頭蓋頂鋭波(vertex sharp transient)、赤い線は睡眠紡錘波(sleep spindle)です。中央の頭蓋頂鋭波に紡錘波がつながった部分は、K複合波(K-complex)と呼んでもよいでしょう。K複合波の最初は、頭蓋頂鋭波のようにやや鋭かったり、もう少し丸みを帯びた高振幅徐波だったりします。これに紡錘波が続くパターンです。

水色の四角の部分に着目します。ここには睡眠紡錘波とよく似た周波数の波形が出ていますが、分布がより広い範囲にわたっており、波形自体もやや鋭いですね。これが、14Hz陽性棘波(14Hz positive burst)です。最近は、positive spikeというよりもburstという言い方が正式なようです。日本語だと陽性群発ですが、あまり使われていないので、ここでは従来の陽性棘波という言い方にしています。

20170710_1

ちょっと待ってよ、陽性と言ったけど、上向きだよ!

と思った方はおられますか?

そのとおりです。上向きだと陰性ですね。脳波の世界では。

モンタージュを変えてみます。

20170710_2

基準導出ですが、基準電極を平均基準電極にしました。

どうですか? 頭の後ろの方で下向き(陽性)になっているでしょう?

陽性棘波は、後側頭部(T5、T6)付近で陽性を示すのが特徴とされています。前頭部では上向きに見えますが。

14Hz positive burstは、正常亜型(normal variants)の1つです。波形は、小文字のmが続いたような波形になります。少し隙間が空いて6Hzになることもあり、6 & 14Hz positive burstと呼びます。

昔は自律神経発作と関連があるとされていましたが、現在は臨床的意義は乏しいとされています。尖っていますので、てんかん発射と間違えないように気を付けましょう。

ムムムッ(mmm)? 陽性棘波!

| | コメント (0)

2017/07/07

がんのようなてんかん

がん(癌)のようなてんかんってあるのでしょうか?

ちょっとキツめで不適切な例えかも知れませんが、以下を読んでいただくためです(笑)。

てんかんとひとくくりに言っても、原因は千差万別です。

良性てんかん、難治てんかんという言い方がありますが、この2つは治療に関しては別の病気と言ってもよいくらい違います。

難治てんかんの方をずっと診療していると、脳波異常が徐々に拡がってくる方がおられます。最初は狭い領域からのてんかん発射だったのが、徐々に周囲に拡がってくる。そのうちに大脳半球内や反対側の半球にも異常が拡がる。発作の起こる場所も拡がってくる。

こんな感じです。

てんかん原性という過程があります。

正常な脳を、てんかん発作を起こすような病的な脳に変えていく過程です。

脳のどこかに発作をしょっちゅう起こしたり、てんかん発射がひっきりなしに出ている部分があると、そこにつながっている元々は正常な部分も、徐々にてんかん発射を出すようになり、しまいには自分で発作を起こすようになる。

悪い人と付き合っていると悪いことを覚えてしまう。朱に交われば赤くなる、というような現象です。

癌のように、癌細胞が拡がるのとは異なりますが、脳内の異常な回路が徐々に拡がってくる。あまりにも拡がってしまうと、てんかん外科で切除できなくなってしまう。こんなところが、ちょっと癌に似ているように思うのです。

これに伴い、認知能力も徐々に落ちてきたりします。

てんかん外科手術を行う場合、時期を適切に選ぶことは大切です。病気が進んでしまった場合、最悪手術不能になります。また、年齢が大きくなって手術した場合、幼い時期の手術よりも回復には時間がかかります。脳の可塑性が期待できなくなるからです。

難治てんかんは進行しうることを意識しておくことは大切です。

| | コメント (0)

2017/06/28

北京出張

月末は、北京に出張です。片言の中国語が通じるか?

我去北京、なんちゃって。

中国語は、四声(上げ下げ)をきっちり発音しないと通じないそうです。音楽のメロディーのようなものですね。

音楽のような言語、中国語。

韓国語は抑揚がかなり日本語的で、中国語は日本語と全然違う。どちらも面白い。

ずっとよく分からん言語だと思っていた中国語ですが、かじってみると結構楽しい。文法は英語より単純かな? 漢字表記なので、親近感あり過ぎ。

中国語をマスターすれば、世界の数割を制覇したようなもんですよ。さらに英語とスペイン語あたりがあれば、無敵!?

出張ネタに戻りますが、北京から講演に呼ばれているのです。演題は、

クレアチン代謝異常症の診断と治療

たいへん光栄であります。

50分の講演をがんばってこなしてきます。

| | コメント (0)

2017/06/27

脳波クイズ Q6

次なる脳波クイズです。

Q6. 13歳男児。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 出現している特徴的な波形の名前を述べよ。1つとは限らない。

4. 正常脳波か、異常脳波か?

20170627

| | コメント (0)

2017/06/24

脳波クイズ A5 その3

前回の続きです。ちょっと長い説明になりますし、私個人の意見ですので、異論があるかも知れません。

右後ろ(P4、T6、O2)の棘波と左前頭極(Fp1)の棘波に時間差がないということに違和感があるという話でした。

A5.

6. O2とFp1で時間差がないという場合、1つの仮説は2か所からの棘波がたまたま同時に出たということです。でも、これではちょっと面白くありません。

複数の電極で本当に同時に棘波が見える場合、容積伝導による現象が考えられます。これは単純に電場の拡がりということで、ある所で振幅の高い棘波が出たら、近くの電極でもそれを拾うということです。O2で棘波が出れば、隣のP4やT6でも見えるというわけです。でも、Fp1は遠すぎますよね。

発想を少し変えます。Fp1で上向き棘波が出ているように見えるわけですが、このチャネルは、正確にはFp1-A1ですね。上向き棘波が出ていると考えるのはFp1ばかり見ているからで、相棒のA1も忘れちゃいけない。もし、A1から下向き棘波が出ていたら... Fp1-A1では上向き棘波に見えちゃいますね。

この可能性を考える場合、右後頭部に上向き棘波、左側頭部に下向き棘波というパターンがあるのだろうかと考えないといけません。

これは... あります。ダイポールです。

棘波の電位分布を考える場合、その電流源の位置と向きを考えます。ダイポールは日本語で双極子といいますが、プラスとマイナスの電荷が極めて近い位置に存在するものです。小さな磁石のN極とS極のようなもの、超小型の電池とでもいいましょうか。

マイナス側が右後頭部に向き、プラス側が左側頭部に向くようなダイポールを考えれば、話は合いそうな気がします。つまり、左側頭部付近では右後頭部の陰性棘波を裏側から見ている(つまり陽性棘波を拾っている)という仮説です。

7. 正確な分布を確認する方法の1つとしては、基準電極を変えてみるというのがあります。例えば、平均基準電極にしてみます。一番下に、耳朶電極(A1、A2)も表示しています。

20170624_1

T3、A1で陽性(下向き)になっていますね。左前(Fp1、F7)には陰性棘波がみられます。右前(Fp2、F8)にも陰性棘波がみられますが、左前よりほんの少し遅れています。また、左前の棘波は右後頭部(P4、O2)より少し遅れています。多少の遅延時間があるのは、部位間の連絡時間と考えられ、一応納得がいきます。

いやいや、平均基準電極って本当に信用できるの? と思う方がいるかも知れません。そうですね、頭皮上の電極の電位を平均したものだから脳波の影響を多少なりとも受けるでしょ、という突っ込みがあるかも知れません。

そこで、グゥの音も出ないと思われる別の方法を出します。

20170624_2

これも基準電極導出ですが、基準電極がX1になっています。X1ってどこ?

脳波全体を見ると、心電図が混入していますね。X1は心電図を拾っている電極で、肩につけてあるのです。つまり、X1は頭部外の電極というわけで、これだと基準電極が脳波の影響を受ける(コンタミする)可能性はとても低くなります。

これは静岡てんかん・神経医療センターのT先生という、私が脳波ソムリエと呼んでいる方から教わった方法です。初めて聴いたときは、コロンブスの卵でした。

ところで、もう1つ納得できない点はありませんか?

後ろから棘波が出て、何故前から少し遅れて棘波が出るのでしょうか? サイドが違うんですけど。右前の棘波は左前よりも遅れているので、右後ろから右前に行った後に左前に行ったとは思えません。

ここで、右後ろの棘波が本当はどこから出ているのか、と考えてみたいと思います。ダイポールの話をしましたね。ずっと以前に立体角に関する記事を書きました。その記事の下側の図を参照していただきたいのですが、脳表で陽性と陰性の棘波が同時に見える場合、電流源の真上の電極では何も見えないのです。

これを上の脳波に応用すると、一番棘波が見えにくい電極はどれかということになるのですが、それは左後頭部の電極(O1)です。

つまり、左後頭部のどこかに、右後頭部に向けてマイナス面が向き、左側頭部に向けてプラス面が向いたダイポールがあるのではないかということになります。

後頭葉や前頭葉の内側面に電流源がある時は、陰性棘波が反対側から出ているように見えることがあります。Paradoxycal lateralizationという有名な現象です。

本当は、もうちょっと複雑な分布のようで、これだけで充分説明できていないところはあります。

棘波の分布を読む上での考え方をいくつか提示させていただきました。

今回は、思ったよりも複雑な問題になってしまっていましたので、次回からは、もうちょっと分かりやすい問題にしようと思います。

| | コメント (0)

2017/06/14

脳波クイズ A5 その2

前回、少し問題を変えたQ5の解答の続きです。学会直前なので、5番のみ答えを書きます。

A5.

5. この脳波では、右後頭部優位(P4、T6、O2)の棘波が見られます。PzやP3からも見えています。これ以外に、左前頭部優位(Fp1、F7、C3)にも棘波が見られます。2か所からの棘波なのでしょうか?

この方は、Panayiotopoulos症候群の方で、後頭部と前頭部の棘波はよく見られるパターンです。

しかし、脳波に赤い縦線が入っていますね。右後頭部(O2)と左前頭極(Fp1)の棘波には時間差がないように見えます。ここでの時間差とは、数十ミリ秒以下のレベルの話です。

F7はO2より少しピークが遅れています。しかし、Fp1は全く遅れがない。こんなに遠く離れているのに時間差が全くないのはどうしてなのでしょうか? Panayiotopoulos症候群では通常は後頭部の棘波が時間的に先行することが多いので、ここに違和感が感じられるのです。

20170614

これを踏まえたうえで、残りの6番と7番の答えは学会後に書こうと思います。

| | コメント (0)

2017/06/07

ビタミンB6依存性てんかんの診断で大切なこと

最近、ビタミンB6依存性てんかんの診断について問い合わせを受けることが増えています。ありがたいことです。

時々あるのが、「ビタミンB6依存性てんかん疑い」として相談されたにもかかわらず、ビタミンB6製剤が未使用である事例です。

使っていないのに、何故疑うの? とついつい思ってしまいます。

もちろん、原因不明のてんかんでは、ビタミンB6依存性てんかんの可能性は考えないといけません

このような状態でまず行うべきことは、ビタミンB6製剤を試してみることです。

ビタミンB6製剤がよく効けば、ビタミンB6依存性てんかんの可能性はあります。

ビタミンB6製剤が全く効かなければ、ごく少数の例外を除き、ビタミンB6依存性てんかんの可能性はかなり低いです。

ビタミンB6製剤が効いた方では、ビタミンB6依存性てんかんを疑って積極的に検査を行う。そうでなかった方でも気になる場合には、一応検査を出しておく。

治療開始前の検体を残しておくことは、一般的に大切なことです。治療による修飾が入ってしまうと、病態が分からなくなることがありますので

ただし、ビタミンB6依存性てんかんを示す疾患の大部分(ALDH7A1異常、PNPO異常、ALDH4A1異常、低ホスファターゼ症等)は、治療開始後の検体であっても生化学的診断は可能です。つまり、ビタミンB6を使ってみて反応を見てからでも大丈夫です。

なので、よく分からない事例では、まずはビタミンB6を試してみるという考え方になると思います。

| | コメント (0)

2017/06/06

脳波クイズ A5 その1

前回のクイズの回答です。

前回の脳波の図ですが、チャネルの順番を一番よく用いられている順番に変更しておきました。波形自体は同じです。

今回は、1番から4番までの回答を書きます。

というのも、5番は見た目ほど簡単じゃないことが分かったからです。後で述べます。

1番から4番までは、レベル3くらいです。

A5.

1. 同側耳朶を基準とする左右交互の基準導出。

2. 覚醒時記録。

3. 垂直方向の眼球運動。

4. 前頭筋の筋電図活動。

解説

モンタージュについては、以前の問題と同じなため、省略します。

覚醒時記録である根拠は、両側後頭部(O1、O2)に約9Hzのα律動がみられるからです。

赤色の丸で示された下方向の振れは、前頭極(Fp1、Fp2)優位で、波形からは垂直方向の眼球運動です。おそらくは、ごく軽い瞬目によるものでしょう。

水色の四角の部分は、脳波がやや太くギザギザして見えます。これは、筋電図活動です。左に目立っていますが、右にも少し入っています。部位から考えると、前頭筋由来と考えられます。

さて、5番の異常波形ですが、下の図の赤い四角で囲んだ部分に出ています。これはてんかん発射で、棘徐波(spike-wave)です。

20170606_1

さて、この分布ですが、左側のてんかん発射に注目して、脳波を時間方向に引き延ばした図を下に示します。1画面3秒表示です。分布を分かりやすくするため、チャネルの順番を変更しています。

20170606_2

陰性(上向き)棘波が右頭頂後頭部と左前方(かなり広範囲)に出ていますね。

この方は、Panayiotopoulos症候群というてんかんの方で、後頭部と前頭部に棘徐波がみられるのは、よくある所見です。

ここまで示したうえで、再度問題です。レベル8~9くらい。

Q5. (改題)

5. この棘徐波の分布には違和感があります。どこがおかしいのでしょうか?

6. このような脳波になっていることを説明する仮説を考えてください。

7. 正確な分布を確認するための方法は?

| | コメント (0)

2017/06/04

脳波クイズ Q5

久しぶりの脳波クイズです。

Q5. 7歳男児。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 赤色の丸で示された下方向の振れは何か?

4. 水色の四角で示された部分は脳波の線が太目に見える。何か?

5. この脳波でみられる異常波形はどれか? その分布は?

20170604_2


| | コメント (0)

より以前の記事一覧