2017/06/14

脳波クイズ A5 その2

前回、少し問題を変えたQ5の解答の続きです。学会直前なので、5番のみ答えを書きます。

A5.

5. この脳波では、右後頭部優位(P4、T6、O2)の棘波が見られます。PzやP3からも見えています。これ以外に、左前頭部優位(Fp1、F7、C3)にも棘波が見られます。2か所からの棘波なのでしょうか?

この方は、Panayiotopoulos症候群の方で、後頭部と前頭部の棘波はよく見られるパターンです。

しかし、脳波に赤い縦線が入っていますね。右後頭部(O2)と左前頭極(Fp1)の棘波には時間差がないように見えます。ここでの時間差とは、数十ミリ秒以下のレベルの話です。

F7はO2より少しピークが遅れています。しかし、Fp1は全く遅れがない。こんなに遠く離れているのに時間差が全くないのはどうしてなのでしょうか? Panayiotopoulos症候群では通常は後頭部の棘波が時間的に先行することが多いので、ここに違和感が感じられるのです。

20170614

これを踏まえたうえで、残りの6番と7番の答えは学会後に書こうと思います。

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2017/06/07

ビタミンB6依存性てんかんの診断で大切なこと

最近、ビタミンB6依存性てんかんの診断について問い合わせを受けることが増えています。ありがたいことです。

時々あるのが、「ビタミンB6依存性てんかん疑い」として相談されたにもかかわらず、ビタミンB6製剤が未使用である事例です。

使っていないのに、何故疑うの? とついつい思ってしまいます。

もちろん、原因不明のてんかんでは、ビタミンB6依存性てんかんの可能性は考えないといけません

このような状態でまず行うべきことは、ビタミンB6製剤を試してみることです。

ビタミンB6製剤がよく効けば、ビタミンB6依存性てんかんの可能性はあります。

ビタミンB6製剤が全く効かなければ、ごく少数の例外を除き、ビタミンB6依存性てんかんの可能性はかなり低いです。

ビタミンB6製剤が効いた方では、ビタミンB6依存性てんかんを疑って積極的に検査を行う。そうでなかった方でも気になる場合には、一応検査を出しておく。

治療開始前の検体を残しておくことは、一般的に大切なことです。治療による修飾が入ってしまうと、病態が分からなくなることがありますので

ただし、ビタミンB6依存性てんかんを示す疾患の大部分(ALDH7A1異常、PNPO異常、ALDH4A1異常、低ホスファターゼ症等)は、治療開始後の検体であっても生化学的診断は可能です。つまり、ビタミンB6を使ってみて反応を見てからでも大丈夫です。

なので、よく分からない事例では、まずはビタミンB6を試してみるという考え方になると思います。

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2017/06/06

脳波クイズ A5 その1

前回のクイズの回答です。

前回の脳波の図ですが、チャネルの順番を一番よく用いられている順番に変更しておきました。波形自体は同じです。

今回は、1番から4番までの回答を書きます。

というのも、5番は見た目ほど簡単じゃないことが分かったからです。後で述べます。

1番から4番までは、レベル3くらいです。

A5.

1. 同側耳朶を基準とする左右交互の基準導出。

2. 覚醒時記録。

3. 垂直方向の眼球運動。

4. 前頭筋の筋電図活動。

解説

モンタージュについては、以前の問題と同じなため、省略します。

覚醒時記録である根拠は、両側後頭部(O1、O2)に約9Hzのα律動がみられるからです。

赤色の丸で示された下方向の振れは、前頭極(Fp1、Fp2)優位で、波形からは垂直方向の眼球運動です。おそらくは、ごく軽い瞬目によるものでしょう。

水色の四角の部分は、脳波がやや太くギザギザして見えます。これは、筋電図活動です。左に目立っていますが、右にも少し入っています。部位から考えると、前頭筋由来と考えられます。

さて、5番の異常波形ですが、下の図の赤い四角で囲んだ部分に出ています。これはてんかん発射で、棘徐波(spike-wave)です。

20170606_1

さて、この分布ですが、左側のてんかん発射に注目して、脳波を時間方向に引き延ばした図を下に示します。1画面3秒表示です。分布を分かりやすくするため、チャネルの順番を変更しています。

20170606_2

陰性(上向き)棘波が右頭頂後頭部と左前方(かなり広範囲)に出ていますね。

この方は、Panayiotopoulos症候群というてんかんの方で、後頭部と前頭部に棘徐波がみられるのは、よくある所見です。

ここまで示したうえで、再度問題です。レベル8~9くらい。

Q5. (改題)

5. この棘徐波の分布には違和感があります。どこがおかしいのでしょうか?

6. このような脳波になっていることを説明する仮説を考えてください。

7. 正確な分布を確認するための方法は?

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2017/06/04

脳波クイズ Q5

久しぶりの脳波クイズです。

Q5. 7歳男児。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 赤色の丸で示された下方向の振れは何か?

4. 水色の四角で示された部分は脳波の線が太目に見える。何か?

5. この脳波でみられる異常波形はどれか? その分布は?

20170604_2


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2017/05/20

台湾(続き)

台湾での講演は無事終了。スライドが少し多いかなと思いましたが、図が多かったこともあり、30分(質疑応答含む)のところ、25分強で終了。質疑を入れるとちょうど治まりました。よかったよかった。

午後は、ランチをごちそうになり、お茶の専門店へ。試飲を楽しみ、欲しかったお茶を買うことができました。台湾の烏龍茶は、とても香りが素晴らしくておいしいです。日本のペットボトルや居酒屋のものとは全然違う。ちょっとディープで、少しハマりそうな予感。

色々と贈り物をいただき、キャリーバッグになんとか治まりました。もう1つ多かったら、アウトでした。

台湾の先生方の「おもてなし」に感謝感激です。

今回のもう1つの収穫は、片言でも中国語を使えたことです。もっともっと上達したいなと思います。中国語をマスターしたら、世界の4人に1人とは会話ができるわけですから。

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2017/05/19

台湾

更新をしばらくサボっていました。椀子そばのように仕事が降ってくるもので。

昨日から、台湾に来ています。Taiwaneese International Congress of Neurology(TICN)という学会で、難治てんかんへの対応法に関する講演です。

今年は学会発表・講演が立て続けにあり、今月は先週に福岡のアジア・大洋州小児神経学会議(AOCCN)があり、今回のTICN、来週も国内で講演、6月は大阪で日本小児神経学会学術集会、その後は北京で講演です。

2-3か月先の予定は分かっているんだけど、そのうえで、数日~2週間ほどで済ませなければならない仕事が次々降ってくる。だから、だいぶ先の仕事と分かっていても、時間があるときにやっておかないと後できつくなるのですが、これがなかなかできないので難しい。

今、一番のプレッシャーは、8月末締め切りの仕事です。1年以上前から引き受けていて、かなり時間がかかる仕事なのですが、これがまだ6割くらいしかできていない。6月の学会が終わったら、他の仕事を放り出しても優先しないといけないのだろうなと思っています。

それはさておき、台湾です。今回が4回目。中国語は、相変わらず挨拶くらいしかできないけれど、雰囲気には慣れてきました。食事がうまいのでうれしいです。ホテルにたどり着くまでに、色々とトラブルがありましたが(学会が手配したお迎えが来ていない、事務局の指示でタクシーに載ったら間違ったホテルに連れて行かれた)、これも旅行ならではです。前回はバスで自力でホテルに行きましたら、その方が間違いがなかったのかも...

何はともあれ、観光と講演(明朝に30分)をがんばることにします!

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2017/04/12

お勧めの本

初めてのけいれん さあどうするか

私のかつての指導医の著書の第2弾が出版されました。

けいれんの患者を初めて診た場合にどうするか?

実際的な解説満載で、分かりやすく書かれています。

うんうん、あるある!

よくある落とし穴についてしっかり解説されていますし、問診のテクニック、日々の診療で注意すべきところ等、とてもためになる内容です。

脳波の過信についての警鐘もしっかり書いてあります。共感するところが多いです。

脳波は大切な検査ですが、いい加減な知識で使うととんでもないことになってしまいます。そういったこともきちんと書いてある。

一般の医師のみならず、てんかん専門医にも強くお勧めです。自分の診療を見直すよい機会になるかも知れません(私を含め)。

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2017/03/25

脳波のclinical correlation

年度末業務に追われております。

脳波レポートを書くにおいて、所見の本文を書いた後、最終評価を書きます。

カナダで教わったのは、その次にclinical correlationを書くことでした。Clinical correlationとは、直訳すれば、臨床所見との関連付けとでもいいましょうか。

え、なんでこれが必要?

と思うかも知れません。

実は、脳波の所見の解釈は状況によって異なりますし、素人には解釈ができない場合もあるからです。

例えば、右中心側頭部から、てんかん発射が出ている。波形は、ローランド発射の形態です。脳波の最終評価としては、異常脳波(右中心側頭部からのローランド発射)になります。

ですが、ある患者さんでこの所見が見られた場合、この方の診断は何になるのでしょうか?

これには臨床情報が必要です。

仮に、左顔面けいれんの病歴のある学童期の患者さんであれば、中心側頭部に棘波を示すてんかん(いわゆるローランドてんかん)が疑われます。この場合、clinical correlationは、病歴と総合すると、中心側頭部に棘波を示すてんかんが示唆されるとなります。

ですが、発作の病歴のない場合はどうなるのでしょうか? この場合、脳波異常のみで特定の診断にはなりません。Clinical correlationとしては、発作の病歴のない場合、この所見の臨床的意義は明らかではない等の書き方になるでしょう。

別の例として、発作の病歴があるのに正常脳波の場合、どうなるでしょうか?

カナダでは、以下のように教わりました。

正常脳波であっても、てんかんは臨床診断であるため、てんかんの診断は除外されない。病歴を含め総合的に判断を。

右前頭部に多型性(polymorphic)徐波がみられる場合、どうしましょうか?

患者さんが通常の意識状態で記録された脳波であれば、右前頭部に局在性の脳機能低下が示唆される。器質的病変の鑑別も必要なため画像検査の検討を、あたりでしょうか。細かく言えば、白質を含む障害があるも言えると思います。

しかし、てんかん発作の直後に記録された脳波であれば、上記に加え、右前頭部から始まったてんかん発作後の脳波変化をみている可能性もあります。

このように、同じ脳波でも、文脈によって解釈は異なります。

そのため、脳波レポートを書く際には、ここまで書くのが理想です。

自分達の診療科のみであれば、そこまで書かなくてもだいたい通じるのですが、カルテは他科の医師も読むことがあります。また、他科の医師から脳波判読を依頼される場合もあります。このような場合に、clinical correlationの記載がないと、脳波にてんかん発射があるから(発作がないにもかかわらず)てんかん、(発作があって臨床的にてんかんと考えられるのに)脳波異常がないからてんかんではない、といった誤解を招いてしまいます。

脳波は正常異常のみならず、その意味まで考える。これが大切です。

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2017/03/16

多剤併用の罠

難治てんかんの薬物治療でついついはまってしまう多剤療法。あくまで、非薬物療法が困難と考えた事例でのお話です。

こうならないように気をつけているつもりですが、なかなか難しい。紹介されてきた時点で多剤になっている方は、もっと難しい。

ある抗てんかん薬を使って発作抑制が得られない場合、次のお薬を試します。この際に、元の薬を中止できないと、多剤療法へのドアが開いてしまいます。

中止できない理由(言い訳)は色々とあるのです。

多少は効いた(かも知れない)。

減らすと発作が増えた。

新しい薬を加えてから減らそうと思っていたが、発作の改善が十分でなく減らせない。

でも、よく考えると、元の薬で発作は止められなかったのです。発作が減っただけでは効果不十分です。国際抗てんかん連盟によれば、発作ゼロにならなければ、その薬による治療は失敗です。そのような薬にこだわっても仕方がない。

いやいやそんな単純なものではない、というご意見もきっとあるでしょう。

でもね、聞きたいです。5剤も6剤も併用していて、2剤3剤と大きな差はあるの?

デメリットはたくさんあります。

処方が複雑になりミスの機会が増える。

内服が大変。

薬物相互作用を考えないといけない。

副作用が出やすい。出た場合、どの薬のせいか分からない。

新薬が使えるようになっても、簡単に試せない。

多剤になっている状態で、どれかを抜くための労力はたいへんです。患者さんにも頑張ってもらわないといけないし、時間もかかります。薬を何か加える際には、あらかじめどれを抜くか考えておかないといけないし、そう決めたらある程度は心を鬼にして入れ替えを完遂する意志が必要です。すぐには減らせなくても、チャンスと見るや減らす、そういった心配りも必要です。

私の前任地の静岡てんかん・神経医療センターでは、引き算の治療が重視されていました。多剤併用で紹介されてこられる方が多いため、入院して薬を減らすわけですが、発作の増減は一時的にあるものの結果的に減らせますし、副作用・内服の手間が減って患者さんは楽になります。

そもそも、多剤併用を避けるように処方されていれば、上記のような入院は要らないのであって、結果的に時間の大きな無駄を生じていることになります。

処方はシンプルがベスト!

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2017/03/11

脳波クイズ A4

前回のクイズの回答です。レベルは3くらいです。成人の脳波しかご存知ない先生だと、レベル5くらいに感じたかも?

A4

1. 縦連結の双極導出、いわゆるダブルバナナモンタージュです。

2. 睡眠時記録です。

3. 睡眠紡錘波(sleep spindles)です。

4. 正常脳波です。

解説

モンタージュは、Q1と同じです。4本ずつ左、右になっており、上の8本は側頭部を通り、次の8本は中心部を通ります。

睡眠時記録と考えるのは、後頭部優位の律動が出ておらず、睡眠紡錘波(sleep spindle)が出ているからです。ちなみに、8か月児では、後頭部優位律動の周波数は6~7Hz程度であり、θ律動です。α律動ではありません。

非レム睡眠段階2(sleep stage N2)に入ると睡眠紡錘波が出現します。下図の四角で囲ったのが睡眠紡錘波であり、青が左半球、赤が右半球からのものです。乳児期の睡眠紡錘波は成人のそれとは異なり、やや尖った形態を示します。

20170310

正常か異常かですが、これは正常脳波です。

睡眠紡錘波は左右同時に出現するのが原則です。左に出ていれば、その時には右にも出ている。そうでなければ異常です。

しかし、乳児は例外です。左右大脳半球の連絡が未成熟であるため、睡眠紡錘波は左右バラバラに出現します。この現象は、2歳までは正常と考えられています。

バラバラに出現するは言っても、ある一定時間の中で数えれば左右の出現回数には大差ありません。もし、片方が明らかに少なければ、少ない側の大脳半球に問題ありと考えます。

年長児以降で睡眠紡錘波が左右別々に出る場合は、異常です。脳梁欠損等、左右大脳半球の連携がよくない場合に、このようなことが起こります。

左右バラバラ紡錘波、大人と違うよ赤ちゃんは

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