秋の味覚の危険な罠
食欲の秋です。自分もだいぶヤバイです!
昨日、NHK総合のお昼の放送で、秋の味覚の銀杏が紹介されていました。
おいしそうなレシピの紹介が。
銀杏シューマイ(上に銀杏が載っている、中の餡にも入っている)
銀杏パスタ(上に銀杏が8-10個程度載っている)
「銀杏大好き」お母さんと、パスタをおいしそうに食べるほのぼのとした光景。
番組の出演者も「おいしそう」「ナッツ代わりに」などといったご発言(一部うろ覚え)。
そして、銀杏の高い栄養価をフリップ付きでアピール。
銀杏かぁ、秋だものなぁ、食べてみよーなんて気持ちにさせてくれる番組です。
この番組をずっとハラハラしながら観てました(昼食中だったので、サボリではありません)。
いつ、銀杏中毒について警告すんの!?
高い栄養価のアピールの後、女性キャスター(?)が笑顔で、「銀杏はたくさん食べないように、こどもは気を付けて(といった内容)」と口頭のみでサラッと説明して終わり。
とても怖い気持ちになりました。銀杏のPRだからとは言え、中毒の危なさ、怖さが全く伝わらないじゃん... あまりにも大雑把で絶句。
銀杏中毒では、嘔吐、下痢、呼吸困難、けいれんなどを起こし、最悪死亡します。
医学商業雑誌のページ(著者は、岡山大学病院救命救急科教授)
中毒量には個人差がありますが、上記の情報によれば、こどもでは7個以上で中毒例の報告があります。死亡例については15個以上で報告があるそうです。
つまり、番組で紹介されたレシピをこどもが一人でたいらげると、運が悪ければ中毒を起こすということです。
銀杏毒は過熱しても失活しません。どんなに調理しようと、数を食べ、運が悪ければアウトなのです。
他にも気になるものが売られています。
銀杏スナック(揚げ銀杏)です。ネットでの評判は上々。
たぶん、とってもうまいわ... 私は手を出したことはありませんが、20個くらいは余裕で入っていそうです。
小さなこどもが一袋くらい食べてしまう、ということは十分あり得ます。
保護者の監督不行き届き、ということになるのでしょうね。もし何かあれば。
昔から、銀杏は年の数までと言われます。昔の人々の叡智は無視できません。ボリボリ食べるようなものではありません。
専門的なことを書きますと、銀杏毒はメチルピリドキシンというビタミンB6類似物です。そのため、ビタミンB6の体内での働きを妨害します。ビタミンB6は、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)を作るのに必須なビタミンです。なので、ビタミンB6が働かなくなるとGABAが少なくなり、脳の過剰な興奮を抑えられずにけいれんをきたす場合があります。銀杏中毒の治療には、ビタミンB6製剤が使われます。
ビタミンB6にかかわる研究をしているものだから、銀杏中毒については、どうしても気になってしまいます。
PRはもちろんよいのだけど、命にかかわる情報は、視聴者にきっちり伝わるように具体的・明示的(これこそフリップや字幕で出すべき)に提示していただきたいものです(NHKに意見投稿しました)。
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