2016/09/11

一流になるための本

負ける人は無駄な練習をする―卓球王 勝者のメンタリティー

僕は卓球好きで、自分でも練習しますし、試合にも出たりするのですが、今回のリオ五輪での男子卓球の半端ない盛り上がりには感動を覚えました。

特に、日本のエースである水谷選手をずっと応援してきたのですが、ロンドン五輪以降、色々あった後にどんどん強くなって、ここ1-2年は絶対エースの名にふさわしい選手になられたと感じています。プレースタイル変わっていますから、本当に。

五輪でも、個人戦準決勝の馬龍戦以外は負けなし! 団体決勝でも中国のXu Xinに対し、ゲームオール7-10からの5連続ポイントで逆転勝ち。正直、この試合は痺れました... 鳥肌ものでしたよ。

あのレベルの選手たちで、ああいう場面になると、技術云々じゃないんです、精神的に動揺すると、ミスがどんどん出てしまう。本当に心の強い方が勝つようにできています。

さて、右上の本は、今年始めの出版直後に勝って読んだのですが、チャンピオンとしての心構えや考え方が書いてあります。現役選手の言葉は重いです。かなり過激なことも書いてありますが、日本の卓球界を背負う者としてのプロ意識が半端じゃない。これだけのことをしてきたからこそ、今回の五輪の成果につながったのか、と納得させられます。

卓球をやっている人が読めば特に面白いでしょうが、卓球以外の分野でも一流を目指す人に必要なエッセンスが書いてあると僕は思います。ビジネスや研究の世界でもきっと役に立ちますよ。

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2015/01/18

抗てんかん薬の教科書

The Epilepsy Prescriber's Guide to Antiepileptic Drugs

過去に紹介した抗てんかん薬の教科書、The Epilepsy Prescriber's Guide to Antiepileptic Drugsの改訂版が1年少し前に出ていたことを、つい最近知りました。

欧米諸国で使われている抗てんかん薬(日本で治験中のもの、未治験のものも含む)の詳細な情報が、アルファベット順に詳しく書かれています。

薬の構造、作用機序、効果のある発作型・てんかん、薬物動態、使用量、増減の手順、他の薬との相互作用、副作用等の詳細な記載がなされているのは、従来どおりです。

系統的に抗てんかん薬の勉強をしたい方にはおすすめです。

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2014/11/21

臨床神経生理学会

Handbook of ICU EEG Monitoring

臨床神経生理学会に参加しています。元々は、脳波筋電図学会と呼ばれていた学会です。

自分が参加している学会の中では、最もディープな学会だと思います。

約1か月前に右の本について書きましたが、学会に出店していた書店に数冊おいてあるのを見ました。

この本を紹介した際、欧米式の持続脳波は日本ではまだ敷居が高いと書きました。フルの持続脳波は判読者にものすごく負担がかかるのです。日本だと、どうしても少数精鋭でがんばらざるを得ないという事情(空気?)があります。これは、労働条件として決して好ましくありません。

脳波を読むにも高いレベルが必要です。はっきり言って、通常の脳波が読めるくらいでは話になりません。最低、発作時脳波をきっちり読めるだけの力量が必要ですし、ほぼ瞬時に見分けられるくらいの慣れが必要です。脳波は持続的に記録されていますので、1時間の脳波を2-3分程度で判読して発作の有無等を判定しないと時間がいくらあっても足りません。このような医師が5人も10人もいるような施設は、全国的にもほとんどないでしょう。

紹介した本は、重症患者でみられる特殊な脳波パターンについてなどよく書かれており、知識を得るには良書だと思います。

救急における持続脳波のシンポジウムがあり、聴講したかったのですが、自分が担当しているシンポジウムと同時進行のため、残念ながら参加できませんでした。

しかし、このようなシンポジウムが企画されているということは、日本にも持続脳波を導入しようという動きが出てきているのでしょう。業者さんの脳波機器展示コーナーで尋ねてみたところ、フルの持続脳波をとっている施設はまだほとんどないとのお話でしたが、今後に期待したいところです。

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2014/10/13

ICUでの持続脳波モニタリングのハンドブック

Handbook of ICU EEG Monitoring

最近、右の本を読む機会がありましたので、感想を書きます。

Handbook of ICU EEG monitoring、つまり、ICUにおける脳波モニタリングのハンドブックです。厚さ1.5cm弱といったところでしょうか。

この本には、北米式のICU持続脳波モニタリングの全てが書いてあります。そういった意味では、素晴らしい本です。トロント時代の記憶がよみがえりました。あちらにいた4年強のうち、3年はこの仕事をしましたから。

脳波モニタリングがどういった状況で、どういった目的で行われるのか。適応となる病態への治療をどうするか。そして、ICU持続脳波モニタリングを行う体制をどうやって整えるかが書いてあります。

日本の先生がこの本を購入するに当たっては、注意しておくべきことが色々あります。

まず、右の表紙の写真を見てもらえばわかるように、通常の脳波が出ています。北米での持続脳波モニタリングは、通常の脳波で行います。頭に10-20個の電極を貼り付けて記録わけです。表紙の左下にトレンド表示が出ています。これは、Persyst社のInsight IIというソフトの機能を用いたもので、かなり高性能です。トロントでは、通常脳波の生波形とトレンド表示を併用していました。

日本のICUで多く使われているのは、おそらくaEEG(amplitude-integrated EEG)CDSA(compressed density spectral array)といったトレンド表示です。頭に貼り付ける電極数も2-8個あたりでしょう。これでおおよその状況は分かります。ただ、脳波の生波形と比べると、発作の認識率は落ち、約8割程度です。この本には、aEEGやCDSAの読み方はあまり書いてありません(簡単に触れてある程度)。

また、北米と日本とで、脳波記録の実施体制に天と地ほどの違いがあります。

北米では、脳波記録を始めるのは脳波技師です。北米の中核病院には、脳波技師のオンコール体制がありますので、いつでも脳波技師が電極を貼ってくれます。医師が自ら電極を貼ることは決してありません。分業体制がしっかりしており、他の者の仕事をとってはならないのです。モニタリング途中でトラブルが発生した場合、オンコールの脳波技師が対応します。

脳波計にはビデオカメラが付いています。ビデオが必要なのは、発作らしき症状があることを想定して症状を録画できるようにするためです。また、吸痰やタッピングなどの処置によるノイズ(アーチファクトという)を鑑別するためにビデオが役立ちます。

脳波を読むのは脳波専門医です。ICUの医師は脳波を読みません。発作かな?とか、今脳波はどういう状態なのかな?と思った場合、ICUの医師が行うのは、脳波専門医のオンコールを呼び出すことです。このオンコール業務を私はトロントでしていたわけですが、何時だろうが呼び出されます。呼び出されたらどうするか? 自分のコンピュータの前に座って、ICUの脳波計に接続し、ネット越しに脳波を読みます。そして、脳波所見を電話で報告します。院内にいればイントラネット、院外にいればインターネットを使って読めます。ICUに出向いてベッドサイドで読む必要は全くありません

治療方針を決めるのはICU医師と神経科医師です。脳波専門医が必ずしも治療方針を決める立場かどうかは分かりません。ここにも分業があるのです(ちょっと能率悪いですが)。

これだけのことをするには、多くの医療資源が必要になります。モニタリング用のビデオ脳波計、オンコール体制が組めるだけの人数の脳波技師、オンコール体制が組めるだけの脳波専門医、院内および院外から脳波を判読できるネットワークシステム、その他もろもろです。

北米のセンター病院には、これだけの医療資源がそろっていますし、そうでなければセンターとは名乗れないという意識があるのだと思います。訴訟対策もあるでしょう。

日本の「救急救命センター」で、このような体制が整っている病院はそうそうないと思います(もしかしたら皆無かも?)。これだけのシステムを作るとなると、医療資源の集約化がどうしても必要です。

というわけで、現場の医師でも貼り付けが簡単で、情報が視覚的にそこそこ得やすいaEEGやCDSAが日本ではより普及していると思います。フルの脳波をとって、専門医が定期的に判読(発作頻発時などは10-15分おきに判読)なんて体制は、今の日本の体制では正直無理です。日本の先生は優秀なので、ICU医師がある程度脳波を読んでくれたりもしますから、なんとかできてしまうといった事情もあるでしょう。

というわけで、今回紹介した本は、北米での持続脳波モニタリングがいかに行われているかを理解するには最適です。しかし、日本の救急の現場で即活用となるとちょっと難しい。注意すべき病態、治療、脳波用語などについては勉強になると思います。日本のICUでの脳波を今後どうしていくか考えていくのに、この本はとてもよい材料になると思います。

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2013/03/13

小児けいれん・てんかんの教科書

子どものけいれん・てんかん 見つけ方・見分け方から治療戦略へ

右の本が、近々発売されます。

分担執筆者なもので、一冊早めに手に入りました。

前半は診断、後半は治療について書かれています。フルカラーの図やフローチャートが多く、大事な点はKey Pointsとして分かりやすく記載されています。

一般の小児科の先生向けに書かれていますが、専門医にとってもなかなか勉強になる本です。小児医療にかかわる幅広い範囲の方々にお勧めします。

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2013/03/10

小児代謝疾患マニュアル

小児代謝疾患マニュアル最近、本屋で見つけたのですが、小児代謝疾患マニュアルの最新版が発売されていました。

代謝疾患の患者さんを診ることは専門外の者としてはめったにないことなのですが、神経症状をきたす代謝疾患は多いので、ある程度の知識は持っておく必要があります。

私がかつて勉強に行っていたトロント小児病院には、代謝専門の神経科医がおられ、彼女の頭はまさに百貨辞典のようだと思いました。というのも、鑑別診断はこれこれで、これを診断するにはこれを調べて、ということが理路整然と出てくるからです。神経科の病棟で、今まで誰もが何か月も診断をつけていなかった患者さんをビシッと診断し、治療開始後にてんかん発作がピタッと止まったのを目の当たりにした時、ひたすらスゴイと感じたものです。憧れのドクターの1人です。

このようなすごい先生ですが、脳波は専門外だったので、困った脳波に関しては私が手助けをさせていただく場面も結構ありました。専門分化の進んだ北米ならではの話です。

というわけで、おすすめの本でした。

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2012/11/20

小児神経のハンドブック

Paediatric Neurology (Oxford Specialist Handbooks in Paediatrics)僕がお気に入りの小児神経のハンドブックの改訂版が出ています。

ページ数は、前回より少し増えています。内容はもっと読まないといけませんが、症状からのアプローチの章と疾患からのアプローチの章の各項目がアルファベット順に並べ替えられています。

他科からの紹介への対応、救急対応、薬辞典もしっかりついています。

コンパクトながらも小児神経の奥深さを知ることができる本だと思います。

トロント小児病院神経科のレジデントたちにも評判でした。お勧めです。

 

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2010/02/11

小児神経学のテキスト (Textbook in Pediatric Neurology)

Clinical Pediatric Neurology: A Signs and Symptoms Approach:  Expert Consult - Online and Print

僕が気に入っている、FenichelのClinical Pediatric Neurologyの最新版が出ています。

症候からのアプローチになっているので、主要な症状から鑑別診断を考えていくのには良い本だと思います。各疾患の説明は簡潔になっているので、詳しく知りたい方、治療の勉強をしたい方は、それなりのテキストや論文を読む必要があります。

僕が小児神経の門をたたいたときの教授が、「これは達人の本だから」と薦めてくださいました。

Paediatric Neurology (Oxford Specialist Handbooks in Paediatrics)

僕がカナダに来た際に、個人的に送別会を開いてくださった方々が、これの以前の版をプレゼントにくださいました(表紙の裏にメッセージつきで)。今も、大切に使っています。まだまだ、読めてない部分は多いんですが。せめて、それだけでも通読しないといけないなと思いつつ、なかなか...

これと、右のハンドブックがあれば、症候からのアプローチは、かなりのことがこなせると思います。また、このハンドブックは、救急、PICU、NICU等、他科からのコンサルトへの対応など、小児神経の現場で役立つことが色々書いてありますので、トロントの小児神経科のレジデント・フェロー達にも人気があります。

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2010/01/30

サリンジャー氏死去 (Salinger passed away)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)キャッチャー・イン・ザ・ライ

「ライ麦畑でつかまえて」で有名なサリンジャー氏が死去されました。

僕も読みましたよ。ちょっと汚いというか、くだけた言葉が多いです。当時の高校生の言葉の貴重な資料にもなっているとか。

村上春樹さんの「キャッチャー・イン・ザ・ライ・」もよいですが、僕は右の青い本から入りました。

なかなか特色ある方(偏屈おじさん?)だったようです。禅にかなり興味を持っていたようで、短編集の「ナイン・ストーリーズ」の最初に、有名な隻手の公案が書いてあります。

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

両手の鳴る音は知る/片手の鳴る音はいかに?

実は、僕はナイン・ストーリーの方が好きです。ただ、問題は、どうして好きなのかがはっきりと言えないんですよね。

1つ1つの話を読んでも、あまりよく分からないんです。???って感じで。だけど、底でなんとなくつながっているんです。とてもモヤモヤした感じです。一番最後のテディが一番好きですね。

英語版にチャレンジしようかと書店で除いたことがあるんですが、ちょっと難しく見えて、買うのを断念しました。今回を機会にがんばってみようかな?

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2009/10/15

長年の謎 (Question since my childhood)

今日、小さな頃からずっと抱いていた疑問が解けました。

もうせん」という言葉。これは、「小さいももちゃん」「ももちゃんとあかねちゃん」という子供向けの小説に出てきます。全く知らない言葉だったけど、文の内容から「ずっと前」といった感じの意味だろうと勝手に解釈して読んでいました。

それから今まで、この言葉に出会ったことは一度もありません。だから本気で考えたこともありませんでした。

ところが、今日、なんとなく急に思い出してネットでサーチすると、Yahoo辞書で見つかりました! 意味も思ったとおりで、「もう先」と書くのだそうです。

他愛もないことだけど、日本語の奥の深さに一人感動していたのでした。

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