多剤療法の罠2
まだ難治てんかんと考えていない方で、最初のお薬が効かなかった場合を考えます。
効かないとはどういうことかと言いますと、その方の発作のタイプに適切と考えるお薬を充分量使っても、発作がゼロにならない場合です。
充分量とは、その方の体に合わせて想定される最大量、または副作用が出る一歩手前の量です。つまり、もう増やせない、という量です。
発作が減っても、ゼロになっていなければ、効いていません。てんかんの治療のゴールは、発作ゼロだからです。
発作が減っただけでよしとするのは、薬剤抵抗性が明らかで、発作ゼロの目標をあきらめた場合だけです。
次の薬を始めるにあたり、効かなかったお薬は減らして止める方針にするのがよいです。併用がよいこともありますが、原則、お薬の数は少ない方がよい。効かなかったお薬がゼロになってないと、次の薬が効かなくて次の次を始める時に3剤併用になってしまいます。
この流れで行くと、気がついたら、5つも6つも中途半端な量のお薬を飲んでいることになります。薬はいっぱい、副作用もある、発作は止まっていない。多剤併用の罠に見事ハマりました。
次の薬を始める場合の話に戻りますが、最初の薬を減らして発作が増えた時、たぶん色々考えると思います。
前の薬を減らさなければよかったんじゃないか?
新しい薬は効いてないんじゃないか?
気持ちはよく分かります。でも、前のお薬を増やすことはお勧めしません。
私なら、新しい薬を増やし、入れ替えを優先します。前のお薬は減らせるならそうしますが、どうにも無理なら、妥協案として据え置きを勧めます。そして、発作が少しでも落ち着けば、また入れ替えを続けます。
根底には、前の薬は所詮効かなかった薬、という考えがあります。そのようなお薬は、一旦見切りをつけるのです。
もちろん、患者さんの調子によっては、多少の対応の違いはあります。あまりにも発作が増えて我慢ならんということなら、しぶしぶ前の薬を一旦一段階増やさざるを得ないこともあるでしょう。でも、これで落ち着いたなら、新しい薬を増やして前の薬はまた減らすのです。隙を見ては、必ず前に進みます。
処方を考える場合、現在の症状はもちろんですが、先のことも見越して考える必要があります。
そして、自分の考えを患者に伝え、患者のご意向や不安を受け止め、よく相談するのが大切です。
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