« 2022年12月 | トップページ | 2023年3月 »

2023/01/27

ある日の診療事例2、続き2

全身をぶるぶる震わせる2歳男児の話です。

情報の例をいくつか挙げます。

 

例1

突然両上肢を伸展させ、側方に挙上する。これと同時に頭部と体幹が前屈する。両下肢も伸展する。四肢、体幹の筋肉には力が入っており、細かくブルブル震えている。眼球は上転している。顔面はやや紅潮し、チアノーゼはない。これが約5-20秒持続する。終了後、意識は速やかに回復するが、持続が長い場合には疲れた様子を見せることもある。立位で起こった場合には、転倒する。座位で起こった場合には、前方へ倒れて床に頭部をぶつける。覚醒時に気づかれることが多いが、夜の睡眠時にも目撃されたことがある。頻度は、1日2-5回。

 

例2

突然頭と体幹が右に引っ張られるように右方向へ回旋する。眼球も右に寄っている。右上下肢は伸展、左上下肢は屈曲する。四肢、体幹の筋肉には力が入っており、細かくブルブル震えている。顔にはチアノーゼがみられる。持続は20-30秒。睡眠中に起こり、終了後はそのまま眠る。頻度は、2-3日に1回。

 

例3

突然肩をすくめるように挙上し、肩回り~顔面に力が入った状態で、細かくブルブルと震える。眼球は正面、チアノーゼはない。持続は1秒あるかどうか。首の後ろに冷たい物を当てられた時のような動きに似ている。しっかり覚醒して遊んでいる時などに起こる。倒れることはなく、この出来事の後は速やかに元通りになる。機嫌が悪くなることはない。何度か繰り返すことはあるが、間隔は不規則であり、しばらくの間全く起きないこともある。

 

以下、次回へ続く。

|

2023/01/13

ある日の診療事例2、続き

続きは次回で、と書いておいて1か月以上空いてしまいました。

全身をぶるぶる震わせる2歳男児の話の続きです。

情報として、どのようなものが欲しいでしょうか?

 

まずは、症状そのものについて。

震えそのものですが、震えの大きさ(細かいか、より大きな動きなのか)、速さ、震えが見られる部位。四肢の場合は先(遠位部)か根本(近位部)のどちらが強いか。

震えの質については、震えの往復運動のスピード差も気になります。ブルブル、ワナワナの場合は、往復のスピードはほぼ同じですが、ピクンピクンという場合は、ピクンの時に力が入って速く、次のピクンまでは力が抜けるので遅かったりします。患者さん、ご家族はこれも「震え」「ガタガタ、ブルブル」と表現される場合がありますので、要注意です。

 

震えと同時に起こっている症状も知りたいです。

体幹や四肢に力が入っていないか? ブルブル震えつつも、両腕や片腕がグーっと挙がったり、頭や体幹が片方に回ったりはないか。顔の表情がこわばっていないか? 顔の片方が引きつってはいないか?

目つきも大事です。上に上がって白目になっていないか。片方に引っ張られていないか。正面を見たままか。

顔色はどうでしょう? 紅潮しているか、チアノーゼが出ているか。

唾液が流れ出たりはしないか?

 

震えの前に、何かおかしなことは起こっていないでしょうか? ぼーっとする、おびえてご家族の方にやってくるなど。

症状の持続時間はどうでしょうか? 1-2秒程度? それとも数十秒? 数分?

転倒の有無も重要ですし、倒れる場合は、どちら向きに倒れるかも知りたいです。

終わった後にすぐ元通りになるのか? ぐずるのか? それとも疲れて眠るのか? 嘔吐はないか?

 

1日何回程度起こるのか? 複数回の場合、立て続けに起こるのか? 目を覚ましている時だけなのか、眠っている時にも起こるのか? 症状が特に起こりやすい状況はないか?

 

知りたい情報の例を書き並べてみました。ほかにも有用な情報があることでしょう。

「ブルブル震える」だけでは、細かい情景が目に浮かんできません。

たいていの場合、患者さんが目の前で症状を示すことはないので、細かくお話を聞き、自分の脳内でイメージすることが大切です。

スマホの動画があれば、とても役立ちます。ぜひ見せてもらいましょう。

ですが、カルテに書くときにきっちり言語化できるよう、よく練習しておく必要があります。

|

« 2022年12月 | トップページ | 2023年3月 »