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2022/12/08

ある日の診療事例2

2歳男児

主訴:全身をブルブル震わせる

家族歴、既往歴:特記事項なし

現病歴:2-3週間前より、全身をブルブル震わせるけいれん(?)がみられている。

「御高診をよろしくお願いします」とのお手紙。

 

市中病院で小児神経外来をしていると、このような紹介状は時々きます。

どのような情報が必要でしょうか?

以下、次回へ続く。

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2022/12/05

ある日の診療事例1、続き3

呆然とする6歳女児のお話の続きです。

色々と情報を集めた事例を前回紹介しました。

ここでは、てんかん発作かどうかという観点から考えてみたいと思います。

呆然とする症状を示すてんかん発作は、大きく2つのタイプがあります。

一つは焦点意識減損発作(従来の複雑部分発作)、もう一つは(定型、非定型)欠神発作です。

これらに該当しないと考えた場合は、てんかん発作以外の現象を考えることになります。

 

定型欠神発作は、わりと分かりやすい症状です。

原則、覚醒中に起こり、持続は数秒から数十秒。突然始まり、視線は正面からやや上方、宙を見つめたままで無反応。眼瞼が1秒に3回程度の頻度でフラフラ動くことがある。時に体幹がやや前方や後方に傾いたりもある。お口もぐもぐ、上肢を動かすといった自動症が見られる場合もある。顔色は不変。終わりも突然で、回復は速やか。終了後に眠ることはない。

未治療の場合、過呼吸賦活で発作は容易に誘発されます。上記のような病歴の場合、診察の際にティッシュを繰り返し吹いてもらえば、たいていは1分も立たないうちに発作が誘発されます。この間にキャラクターなどの名前を告げておき、後で覚えているかを確認します。

脳波検査で過呼吸賦活を行い、全般性3Hz spike-wavesが症状出現中にみられれば、定型欠神発作の診断確定です。

前回の例1は、まさにこれでした。

てんかんの診断としては、発作型診断に、年齢、発達、神経学的所見などを合わせて総合的に行います。この場合は、小児欠神てんかんです。

 

非定型欠神発作は、難易度がぐっと上がります。定型欠神発作よりも、症状の始まり終わりの境目が分かりにくい。意識減損の程度が軽く、外からの刺激に反応する場合もあったりします。これは、専門医向けなので、省きます。

 

焦点意識減損発作は、呆然とするてんかん発作としては欠神発作よりも頻度が高いので、要注意です。また、発作焦点により、症状や長さが異なる場合もあるので、この辺りは勉強が必要です。呆然とする症状を示す場合、以下のような特徴があれば、焦点意識減損発作を疑った方がよいです。

覚醒中のみならず睡眠中にも起こる。

呼びかけても反応しない状況が、分単位で続く。

眼球一側偏位、頭部一側回旋、顔色の変化(蒼白、チアノーゼ)、呼吸や脈拍の変化を伴う。

四肢の筋緊張の変化(例:一側上肢のこわばり)を伴う。

無意味な動作(お口もぐもぐ、上肢もぞもぞ、うろうろ歩くなど)を伴う。

終わると眠る(眠い状況ではなかったにも関わらず)。

てんかん発作は人によってさまざまなタイプがありますが、個々の患者さんでは、わりとワンパターンな症状を繰り返すのが特徴です。要するに「いつもの発作」が起こるわけです。こういった情報も参考になります。

前回の例2は側頭葉てんかんの焦点意識減損発作、例3は後頭葉てんかんの焦点意識減損発作(と焦点起始両側強直間代発作)でした。

 

例4のような事例は、時折学校で問題になることがあります。特定の場面で起こるてんかん発作は一般的に稀であり(特殊な反射発作を除く)、通常はご家庭、遊んでいる最中など、色々な場面で起こるのがふつうです。面白くない(興味のない)状況で手持無沙汰な場合、独り考え事にふけることもあるかと思います。

もちろん、上記のようにてんかん発作を思わせる他の症状があるようであれば、調べるのはもちろんです。

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