ある日の診療事例1、続き2
呆然とする6歳女児のお話です。情報の例をいくつか書きます。
例1
突然それまで行っていた動作が止まり、宙を見つめた状態で呼びかけに反応しなくなる。視線は正面かやや上方。眼瞼が1秒に3回程度の頻度でヒクヒク動く。顔色の変化はなし。姿勢の変化はないことが多いが、時に体幹がわずかに前に傾くことがある。しかし、転倒することはない。四肢の目立った動きはない。この状態が5-10秒続いた後、急に我に返ったように元通りに回復する。その後に眠ることはない。この出来事の起こる前に特に違和感などは感じず、この間に起こったこと(呼びかけなど)は覚えていない。
この現象は、覚醒時、どのような時間帯でも起こる。睡眠時に観察されたことはない。当初は1日5回程度であったが、最近は20回程度はある。
例2
お腹の辺りを気持ち悪そうにする。その10-20秒くらい後に動作が止まり、正面を見つめ、呼びかけに反応しなくなる。しだいに口唇のチアノーゼが出現するが、呼吸の変化はない。その後1-2分にわたり、口をペチャペチャさせたり、左上肢をゆっくりもぞもぞさせる動きがみられる。右手にやや力が入っている。最初から3分ほど経過すると、呼びかけに対して「ん、ん」と反応するようになるが、しっかり応答して会話ができるのは5分ほど経過した後である。これまでには顔色は回復している。その後、しんどうそうにして30-60分ほど眠ることもある。
この現象は、覚醒時に気づかれることが多いが、睡眠中に開眼して同様の症状をきたしたこともある。終了後はそのまま眠っている。頻度は2-3日に1回程度。
例3
目の前、右の方に色のついたものが見えると訴える。その10秒くらい後に開眼状態で動作が止まり、両眼球の水平方向の揺れがみられる。四肢の異常な動きはない。呼びかけには反応せず、顔色の変化はなし。このまま1-2分で終了することもあるが、開始後1分ほど後より頭が右に回旋、両眼球が右に寄り、さらに右半身優位の間代けいれんに進展することがある。この場合は全体で3-4分続く。けいれんに至った場合、終了後に右上下肢の動きが悪くなる。1時間ほど眠り、目を覚ました時には右上下肢の動きは元通り。
覚醒時にも睡眠時にも起こる。睡眠時の場合は、けいれんに至った段階で気づかれるため、最初の様子は分からない。けいれんに至るものは月に1-2回程度、そうでないものは週に1-2回ある。
例4
学校での授業中に起こる。座席で正面を見つめたまま、動作が止まっていることが多い。姿勢がくずれることはなく、四肢や顔面の異常な動きもない。顔色や呼吸はふだんどおり。教師が何回か呼びかけると反応し、元通りになる。開始直後から気づかれていることは少ないため、持続時間の詳細は不明だが、1-2分以内と思われる。何らかの作業を続ける課題中に起こることはなく、教師が話しているのを聞いている時が多い。家庭では全く気づかれていない。
どんな診断が思い浮かぶでしょうか? 実際に受診された方は、例1(に近い方)でした。
以下、次回へ続く。
| 固定リンク
最近のコメント