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2018/10/21

ピリミジン代謝異常症

ずっと以前に、ピリミジン代謝異常症 について書きました。

ピリミジン分解経路には、3つの酵素があります。

ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)、ジヒドロピリミジナーゼ(DHP)、β-ウレイドプロピオナーゼ(βUP)です。

これらの疾患の臨床症状については、あまりよく分かっていません。自閉症、知的障害、小頭症などの報告がありますが、無症状例も多い。そのため、神経症状が偶発的なものかどうかがよく分かっていません。

症状がなければ日常生活には問題がないわけですが、特殊な状態では問題になります。

現在まで、DPD欠損症の患者と保因者、DHP欠損症患者では、抗癌剤の5-FU(フルオロウラシル)で極めて重篤な副作用(時には命にかかわる)をきたした報告があるからです。

5-FUはウラシル(ピリミジン塩基の1つ)の誘導体ですから、上記の酵素で分解されます。上流の酵素の異常であるほど、5-FUが体内に過剰に蓄積するのだと思います。

ピリミジン代謝異常症の専門の研究者たちは、5-FUで治療を行う前に上記の疾患のスクリーニングを行うのが理想と考えています。通常は無症状なので、治療前に診断がついているケースはほぼ皆無だからです。

以前にβUP欠損症の方を経験しましたが、最近になり、DHP欠損症の方に出会いました。

運悪く癌になって治療を受ける場合には、この病気にかかっていることを必ず告げるようお話ししています。

先天性代謝異常症を診断することは、特異的な代謝治療があれば行えるというのが最大のメリットですが、もう1つ、使ってはいけない薬があるという情報を伝えられるというのも大きなメリットだと考えています。

βUP欠損症とDHP欠損症の方をどうやって診断したかと言いますと、尿中メタボローム解析でスクリーニングしたからです。この病気は、症状からこの病気の可能性を疑って診断する、ということはまずできません。

βUP欠損症もDHP欠損症も、世界で20-30例程度しか報告がありません。遺伝子変異の頻度は分かっており、数千人から数万人に1人いるのではないかと言われています。要するに、未診断例がかなりありそうだということです。

この方たちを「病気」というのは必ずしも適切ではないのかも知れませんが、5-FU治療にハイリスクの方というのは間違いありません。

お酒の弱い方にウォッカを飲ませてはいけないように、気をつける必要があるのです。

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コメント

山形の方に次いで、犬のことで失礼いたします。うちの子は生後4ヶ月目に初回重篤な重積が二日にわたって続き、病院でも処置に苦心しました。MRIで多少脳回が認められました。しかし初っ端から抗てんかん薬がまれに見る多剤使用で、月4ー6回発作重積で、1年半後、今年の6月には薬剤抵抗とみられる状態になり、毎日群発、重積になりました。獣医師はどこもお手上げで、自身で調べ尽くし、セカンドオピニオンで断薬の仕方の指示を受け、フェノバールを切り、リハビリと鍼灸、栄養補填で発作が月4回になるまで減らしました。活性ビタミンb6を試したい気持ちがあり問い合わせですが、
難治性癲癇=ビタミンb6依存型ではないですよね。
■ピリドキシン(B6)
ビタミンB6依存性てんかんでは、通常25-50mg /日の経口ピリドキシンでその後維持することができるが、 小児では200mg /日を要したケースもある。

非ビタミンB6依存性てんかんの小児では、160mg /日のビタミンB6補充により発作の完全または部分的改善が認められ、患者のうちの数名は抗てんかん薬の中止が可能となった。
再発性発作を呈した23歳の男性に60mgのピリドキサールホスフェートの静脈内投与を行ったところ、その直後に発作が解消された。またそれに伴い患者の血清ピリドキシン濃度は正常値下限の80%以下まで著しく低下した。

難治性てんかんを罹患するすべての幼児、小児はビタミンB6投与を試してみるべきである。ただ、特定の抗てんかん薬と低ビタミンB6レベルとの強い関連性は、ないという見解とあるという見解がある。特に高用量のビタミンB6は、抗てんかん薬の効果を阻害する可能性がある。
下記ネット記載内容より、体重比がないので微妙ですが、大量投与すると抗てんかん薬効果が落ちるとあり、気にします。もし、非依存型癲癇であれば
80ー200mg 与えれば、逆に転換が増える恐れがあるということですね?


ある研究では、 80-200mg /日のピリドキシンは、てんかん児の血清フェニトインおよびフェノバルビトン値を低下させた。ピリドキシンの500 mg /日以上の長期投与は、成人で神経毒性をもたらした症例が報告されている。またビタミンB6 補充はマグネシウムの要求を増加させる。

ただ、非依存型と依存型の成人と小児で効果が見られた量の記載は、上記の抗てんかん薬阻害域に入ってます。
依存型であれば、抗てんかん薬が効果薄くなってもいいですが、これを
どう判断するか、臨床では静注でまず反応見るんでしょうか?経口では発作状態の経過観察に時間がかかります。人の患者さんでも、高額医療検査を
色々できる人ばかりでないと思います。そういった方の場合、いつビタミンb6大量処方のポイントになるのでしょうか?
このままだと肝臓障害もあり、QOL維持のため、癲癇コントロールから末期準備に掛からなくてはならず必死です。どうぞご教示のほど宜しくお願い致します

投稿: 犬塚雅子 | 2020/10/24 12:20

犬塚雅子 様

難治性てんかんは、ビタミンB6依存性てんかんとイコールではありません。ほとんどの場合は全く違います。つまり、ビタミンB6は効きません。

犬に活性化ビタミンB6を使われる件については、獣医師でない私にはさっぱり分かりません。犬にビタミンB6依存性てんかんや、ビタミンB6に反応するてんかんがあるのかどうかすら知りません。

まともな回答はできませんので、回答は控えさせてください。

投稿: あきちゃん | 2020/10/24 14:12

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