低ホスファターゼ症におけるPLP測定
活性型ビタミンB6であるピリドキサールリン酸(PLP)の測定を行う研究をここ4年ほどしています。
もともとは、髄液での測定が主体でした。ビタミンB6依存性てんかんの方では、髄液中PLPが低いことが多いからです。海外の神経伝達物質ラボでも、PLPはほぼルーチンに測られているといってよいでしょう。自分がカナダから2011年に帰国した際には、患者さんの検体でPLPを測れるラボはほぼ皆無でした。そのため、我々のラボで測れるようにしたわけです。
ところが、最近は血液での測定件数が増えています。というのも、髄液でPLPが低かった場合、何故低いのかを調べる必要があるからです。血液でも低ければ、ビタミンB6の摂取が足らない等の原因が一般的には考えられます。
もう1つの原因は、低ホスファターゼ症(HPP)についての共同研究を始めたからです。HPPは、骨の石灰化障害や乳歯の早期脱落を起こす稀な疾患で、組織非特性アルカリホスファターゼ(TNSALP)の先天的な活性喪失または低下で起こります。最近は、骨や歯以外にも色々な症状が出てくることが分かってきており、ビタミンB6に反応するてんかん発作がみられる場合があります。TNSALPはビタミンB6の代謝や輸送にも関わっており、血清・血漿中PLPの上昇が報告されています。
最近になって酵素補充療法の治療薬が発売されたこともあり、HPP患者さんでのPLP測定の依頼が増えてきました。
そのおかげで、HPP患者さんにおけるPLPとピリドキサール(PL。PLPからリン酸が外れたもの)の測定に関する論文を出版することができました。自分は神経専門で、先天性代謝疾患の患者データに基づくきっちりした論文を書くのは初めてでしたので、たくさんの先生方に助けていただきました。感謝しております。共同研究の大切さを強く感じました。
PLPとPLを測定したと書きましたが、日本の検査会社でのビタミンB6測定では、PLPとPLを分けて測定できません。PLPはTNSALPの基質、PLは産物なので、両方を分けて測った方が、TNSALPの活性との関連性を詳しく知ることができるのです。これにより、PLPとPLの濃度比、PLの濃度が重要な指標と考えられることが分かりました。
論文のオンライン掲載にはもう少し時間がかかりますが、この結果がHPP患者さんの診断や治療方針の決定などに少しでも役立てばと思います。
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コメント
以前にコメントしたことがあります、HPP患者です。
問い合わせた当時より少しづつ状態は悪化していますが昨年末より大学病院に転院し今年
はじめから酵素補充療法を開始する予定がコロナの件もあり来月開始になりました。
当県では初めての酵素補充療法を受ける患者になるようで主治医もHPP患者を診るのは初めてです。
今回、治療開始決定に伴いHPP関連を調べこの記事を拝読しました。
あきちゃん先生が書かれた論文に興味があるのですが医師以外ではみれないものでしょうか?
投稿: 南国人 | 2020/05/18 18:39
南国人さん
私が書いた論文は、医療関係者向けのものです。したがって、医療関係者(の一部)しか読めないようになっています。申し訳ございません。
投稿: あきちゃん | 2020/05/18 21:04
了解しました。
主治医に読んでもらいたい場合、HPP患者におけるPLPとPLの測定における論文といえばわかるものでしょうか?
投稿: 南国人 | 2020/05/18 21:29
南国人さん
酵素補充療法を行うのであれば、主治医から製薬会社に尋ねていただければ、すぐに分かります。また、PLPとPLの測定に関する情報もいただけると思います。
投稿: あきちゃん | 2020/05/19 08:36