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2016/12/11

頭皮上脳波で見える皮質の広さ

アメリカてんかん学会で勉強した知識の1つです。

頭皮上脳波でspikeが見えるには大脳皮質のどれくらいの広さの皮質でspikeが同時起こらなければならないか、という有名なお話があります。

一般的には、6-10cm2 とされています。これより狭い領域でspikeが起こっても、頭皮上から見えないということです。

最近(といっても10数年くらい前から)話題になっている高周波振動(HFO)はどうなのでしょうか? 頭蓋内脳波の研究からは、HFOは拡がってもせいぜい1-2cm2 程度と分かっています。

では、頭皮上脳波でHFOは見えないのか? と言いますと、実は見えます。

何故?

Lennox awardを受賞されたモントリオール神経研究所のGotman先生が分かりやすく講演してくださいました。

脳波上である信号が見えるのに重要なのは、活動が出ている領域の面積ではなく、S/N比であるということです。

これを聞いた瞬間、そりゃそうだと目から鱗、コロンブスの卵でした。

S/N比とは、ノイズに対する見たい信号の振幅の比です。HFOを見るにおいてのノイズは、脳波の背景活動です。これに対してHFOが際立っていれば(振幅が充分高ければ)、理論上HFOは見えます。HFOは一般的に80Hz以上の活動ですが、この周波数では背景活動の振幅が非常に低いため、S/N比は充分確保され、HFOを見ることができるのです。

一方、spikeが狭い領域からだと見えないのは、spikeの周波数(β帯域あたり)では、脳波の背景活動の振幅が高いため、S/N比がよくないからです。

というわけで、HFOは比較的狭い領域から起こっているわけですが、頭皮上脳波でも充分見えます。ふだんのHFOの判読で、これは経験としては自分にありましたが、きっちり言語化していただき、すっきりしました。思い込みを払拭してくださるような、たいへん素晴らしい講演でした。

ということは、頭皮上HFOが見えないとすれば、電極の空間解像度の問題の方が大きいことになります。頭皮上19電極では、HFOの出ている部位の直上に電極がないと見えません。電極数を増やした高密度脳波ではHFOを頭皮上から見つけられる確率が上がると思います。

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2016/12/10

アメリカてんかん学会

12月2日~7日は、ヒューストンで開催された、アメリカてんかん学会に参加してきました。

やはり、レベルが高い。突き抜けています。勉強になる内容が多く、今後の参考になります。

残念だったのは、時差ぼけがひどく、午後遅くは頭がろくに回らなかったことです。2日に到着して、5日はだいぶ楽になっていたので、もう1日早く行っておけばよかったと思います(長くは休み難いのですが)。

画像解析の講演を聞きましたが、かなり進歩しています。限局性皮質異形成がコンピュータ計算で自動的に見つけられたり、てんかんによる認知機能障害を動物のニューロンレベルでイメージングしたり等。

アメリカは研究の規模が大きいですね。臨床医だけでなく、多くの研究者も活躍しています。臨床医も研究をできる時間がとれるのがうらやましい。日本の臨床医で研究をするといえば、ちょっとした診療の合間か夜だけでしょう。そういった中で、面白い課題が見つかることもあるとは思いますが、時間は正直欲しい。

研究を今後どのように進めていくべきなのか、よく考えていかないといけません。

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2016/12/04

抗てんかん薬の止め時(続き)

抗てんかん薬による治療を始めて発作が無事に止まったら、薬を止められるかどうか考える、ということは前回に書きました。

一般的には、2年間発作が止まったら、薬を止められるかどうか考えます。施設によっては、3年間という所もあります。1年の違いは長いですが、発作抑制期間が長いほど再発率が低い、という話もあったりするため、どちらがよいかは一概に言えません。

薬を止める前には脳波をとります。脳波でてんかん発射が残っている方が、残っていないよりも、再発率が高いと考えられています。てんかん原性(≒てんかん発射)が残っていれば、火種は残っているわけですから。

脳波でてんかん発射がない場合、1年ほどかけて薬をゆっくり減らして中止します。脳波でてんかん発射が残っている場合は、患者さんとよく相談することになります。

てんかん発射が残っていても、いわゆる良性波形(ローランド棘波等)であれば、発作原性はそんなに高くありません。もともと良性波形を示すてんかんでは、発作回数が少ないのです。このような場合は、てんかん発射が残っていても、薬を止めていきます。だいたいはうまくいきます。

良性波形でない場合は、薬をすぐには減らさない場合があります。しかし、小児患者の場合、ずっと薬を続けようと即決するわけではありません。数年見て異常の程度があまり変わらない場合には、試しに薬を減らしてみる場合はあります。発作が再発するようなら、薬を再度増やさざるを得ません。年齢が上がってくるにつれて薬を止めるのは難しくなっていき、成人になってしまうとかなり難しくなります。

一方、成人の場合、てんかん発射が消えていても、薬を減らすと発作が再発する場合があります。成人の脳波では、てんかんが治癒していなくても異常が出ない場合がわりとあり(感度が低い)、注意を要します。成人の場合、お仕事や運転免許のこともあり、積極的に薬を減らしていくのはなかなか難しいです。

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