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2016/02/04

低ホスファターゼ症でのピリドキサールリン酸

低ホスファターゼ症でのピリドキサールリン酸(PLP)測定の研究を始めました。関係する複数の医療施設による多施設共同研究です。

低ホスファターゼ症は、アルカリホスファターゼ(ALP)という酵素が欠損しているために、骨や神経系の色々な症状が出る病気です。

骨の症状が前面に立ちますので、小児内分泌の専門医が診ておられることが多いと思います。

しかし、けいれんを来たすことがあり、これにはビタミンB6の一種であるピリドキシン製剤が効くとされています。PLPもビタミンB6の一種なのですが、低ホスファターゼ症では血清中PLPが異常高値を示すとされており、診断に有用なマーカーであると考えられています。

20160204_2

PLPは、図の右側にあるように、中枢神経系で抑制性神経伝達物質であるGABAの合成に重要です。しかし、そのためには血液髄液関門を通り抜けて血液から中枢神経系にPLPが入り込む必要があります。

PLPは直接細胞膜を通り抜けられないので、GPIアンカーという構造により細胞膜にくっついた酵素であるALPの働きで、リン酸が外れたピリドキサール(PL)に変換され、このPLが細胞膜を通り抜けて中枢神経系に入っていくようになっています。

ところが、低ホスファターゼ症ではALPが欠損しているので、PLPをPLに変換することができず、最終的に中枢神経系でGABAが不足し、けいれんを起こすとされています。また、PLに変換されないため、PLPは高値になります。

ピリドキシン製剤がなぜ効くかというと、ピリドキシンはリン酸がついていないので、細胞膜を通り抜けられるからです。中枢神経系で最終的にPLPに変わり、効果を示すのではないかと思います。

最近、低ホスファターゼ症の治療薬が発売されました。酵素製剤なのですが、治療効果の評価に血清PLP値が役立つのではないかと期待されており、今回の研究を始めるに至りました。血清PLPの臨床的意義を確立し、最適治療に結び付けられればと考えています。

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コメント

はじめまして
2年前遺伝子検査にて低ホスファターゼ症(HPP)と診断されました40代の男性です。
成人型だと思われ症状も軽症(骨密度平均64% 歯がボロボロ程度)です。

昨年より頭痛に悩まされることが増え月6~7錠ロキソニンを服用していましたが良くならなかっため病院を変え、今年4月頃から脳外科(頭痛専門)に通院し、脳過敏性や薬剤性頭痛の疑いを指摘されています。
予防薬としてバルプロ酸とトリプタノールを毎日服用、頭痛時にアマージ、それでも効果が無い時にロキソニンという形を取っていて少しは軽減してきたように思います。
以前、頭痛とセロトニンの関係についてNETの記事やブログ(そのお医者さんのブログで片頭痛は本質的にはてんかんの一種と書かれてました)を読み、関係があるようなことが書かれていたのですがHPPのGABA不足と関係があるのでしょうか?

先生の立場からのご意見・アドバイスを頂ければと思います。

投稿: 南国人 | 2016/10/22 19:33

南国人さん

コメントありがとうございます。

HPPの方の神経症状がどうやって起こるのかは、まだよく分かっていないと思います。生まれた時から発病している重症の方ではけいれんが起こり、脳内のGABA不足の可能性が推測されています。それ以外については、たぶんよく分かっていません。

私は代謝・内分泌専門医ではありませんので、HPPに関しては知らないことが多いです。なので、分かる範囲では上記のような回答になります。

投稿: あきちゃん | 2016/10/22 22:29

ご返答ありがとうございます。

なるほど、代謝・内分泌の分野になるのですね~
当方の住んでる地域にはHPPに詳しい先生がおらず整形(30代に腰椎圧迫骨折有)で診てもらってますが骨以外の相談は難しいようです。
HPPが不明の多い病気なのは知っているので機序から想定される仮説において、トリプトファン・5-HTPサプリなんかで頭痛が良くならないかな~なんて短絡的ですが素人ながらに思ったものと、最適治療に結び付けられれば、という先生の言葉に惹かれコメントしました。

酵素補充療法から多くの臨床データが集まり、関連研究されている先生方々の尽力により標準治療の確立に繋がってほしいと思っています。

投稿: 南国人 | 2016/10/24 21:27

南国人さん

ピリドキサールリン酸(PLP)は、セロトニン、ドパミンの合成に必要ですから、HPPで脳内のPLPが欠乏すれば、脳内のセロトニン濃度は下がると思われます。ただ、どの程度下がっているのかはよく分かっていません。病型によって、残存しているALP活性は異なりますので。

5-HTPは「頭痛に効くサプリメント」として、ネットに書かれていますね。健常人であれば、5-HTPはAADCという酵素によってセロトニンに変換されるのですが、AADCがきっちり働くにはPLPが補酵素として必要です。

仮に重度のHPPで脳内のPLPが欠乏してAADCが働かないためにセロトニンが不足するような状態であれば、5-HTPは元々脳内に過剰に貯留していますから(セロトニンに充分変換されないので)、ここにサプリメントを入れても、あまり効果はないのかも知れないな、と私は思います。

投稿: あきちゃん | 2016/10/24 22:41

あきちゃん先生、参考になり考えが少し整理できました。ありがとうございます。

現在、先生にお願いしてピリドキサール塩酸塩(30mg/日)を処方してもらっています。約3週間ほどになりますが頭痛だけではなく立ちくらみ、息切れ、疲労蓄積からの体調不良、思考低下などの症状が出なくなりました。数日前からは別の先生から出ている頭痛予防薬(パルブロ酸)も中止し様子を見ているところです。

早計ですがHPPによりB6依存(欠損?)症でのB6 反応貧血の症状だった、というのはありえるのでしょうかねぇ。

投稿: 南国人 | 2017/01/01 09:14

南国人さん

興味深い経過ですね。

残念ながら、ビタミンB6がどこまで働いているかは、何とも結論できません。医学では、個人個人レベルでは何とも言えないのです。

でも、症状が軽減したのはよかったと思います。

まだまだ分からないことが山積みですね。

投稿: あきちゃん | 2017/01/01 10:24

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