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2015/09/30

熱性けいれんの脳波異常に抗てんかん薬? (続き)

前回の記事の続きです。

熱性けいれんの方で脳波をとったときに、てんかん性発射を見つけてしまった場合、「抗てんかん薬の内服でてんかん発症を予防できるかも知れない」という意見についてです。

残念ながら、これは正しいとは言えません。

現時点において、てんかん発症の予防効果をもつ抗てんかん薬は皆無です。

何らかの理由で脳侵襲があった場合(外傷など)、抗てんかん薬で将来のてんかん発症予防ができるか否かは、たいへん興味深い研究です。脳内に発作を起こすような異常な回路が作られるのを予防する、もしくは既にできあがっている異常な回路を中和する、このような効果を「抗てんかん原性」と呼びますが、これが証明された薬剤は未だありません。

上記の話は、熱性けいれんとは違うじゃないか、という意見が出てきそうですが、熱性けいれんに抗てんかん薬を用いててんかん発症率が下がるかどうかを調べた研究というのはありませんから、他の事例から類推するしかないのです。

そもそも、熱性けいれんに抗てんかん薬を使い、てんかん発症を予防できたことをどうやって調べるのでしょうか?

てんかんであると確実に診断するには、非誘発性発作(≒無熱時発作)を2回以上繰り返すことを確認する必要があります。どんなに基準を緩和しても、非誘発性発作1回と脳波でのてんかん発射の存在が必要です(これには不確実性がありますので、研究としては使いにくい基準)。

薬を始めてから治療中止後しばらくの間に無熱時発作がみられなかった場合、2つの可能性があります。1つは、そもそもてんかんを発症しなかったという場合で、これが大多数でしょう。もう1つは、途中からてんかんを発症する運命だったのだが、抗てんかん薬を内服していたために無熱時発作が起こらず、薬を止めるまでの期間にてんかんが治ってしまった場合です。残念ながら、これらを区別するのは不可能です。

抗てんかん薬は毎日、長期間の内服が必要です。治療を始めるには、しっかりした根拠が必要ですし、治療の目標を明確に定める必要があります。目標を定めず、「~かも知れない」という漠然とした考え方で内服するのはよろしくありません。そもそも、てんかん発症予防効果のない薬ですから、てんかんを発症してから治療を始めればよいのです。そうでないと、本来薬を飲む必要のない多数の患者さんに過剰な治療をしてしまうことになります。

もし、てんかん発症予防効果(抗てんかん原性)をもつ薬が開発され、かつ熱性けいれんの中でてんかんの発症リスクが極めて高い方をスクリーニングする手段が確立されれば、薬を予防的に使う意味が出てくるかと思います。こういうことであれば、もちろん大歓迎です。

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