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2015/09/29

熱性けいれんの脳波異常に抗てんかん薬?

自分がトレーニングを受けていた頃は、臨床的に熱性けいれんであっても、脳波にてんかん性発射がみられれば抗てんかん薬を内服した方がよいと教わりました。理由は、「てんかん性発射があれば、てんかんと変わりない」「てんかんの発症を予防できる」からだと。

最初の頃は素直なものですから言われたとおりにしてきましたが、数年もするうちに疑問に思うようになりました。前回の記事に書いたとおり、抗てんかん薬は対症療法としての薬だということを知ったことにより、この疑問は自分の中ではすっきり解決しました。

抗てんかん薬の内服は不要であると。

最初に書いた理由2つのうち、1つ目について考えてみたいと思います。

そもそも、熱性けいれんとてんかんは違うのか?

「(熱性けいれんであっても)てんかん性発射があれば、てんかんと変わりない」を素直に解釈しますと、

てんかん性発射のない熱性けいれん ≠ てんかん性発射のある熱性けいれん = てんかん

という考え方が根底にあるのではないかと思います。

国際的には、このような考えはメジャーではありません。

てんかん性発射のあるなしで、てんかんと熱性けいれんの線引きは不可能
です。てんかん性発射は、脳の興奮性を反映しているに過ぎないと考えられています。熱性けいれんの方は、てんかんの方よりは脳の興奮性が低いので、てんかん性発射が出にくいだけです。ですが、出る人がいてもよいわけです。健常人だって数%にてんかん性発射が出ているのですから、熱性けいれんの方の一部にてんかん性発射が出ていたとしても、驚くべきことではありません

発作の際に脳で何が起こっているかは、両者で特に変わりないと思われます。定義上、てんかん発作は「大脳神経細胞の異常活動による一過性の神経症状」ですが、熱性けいれんは、「有熱時のみにてんかん発作が起こる疾患」です。てんかんは、「誘因のないてんかん発作を繰り返す疾患」です。両者の区別は、有熱時の発作か否かという点だけであり、ここに脳波所見の入る余地はありません

熱性けいれんの方はてんかんの方よりも脳の興奮性が低いため、有熱時にしか発作がおきない、そしててんかん性発射が出にくい。それだけです。

つまり、以下の様ななだらかなスペクトラムがあり、明確な境界線はないのです。

疾患:       熱性けいれん ---------- てんかん
興奮性:      低い -------------- 高い
てんかん性発射: なし --------------- あり

熱性けいれんとてんかんの間には、例えば、37度台の微熱で発作がある事例等、「典型的でない」熱性けいれんが入るかも知れません。とにかく、間には色々とあるのです。「典型的でない」熱性けいれんの方が、後にてんかんを発症する確率は「典型的な」方よりも高いのですが、それも直感的に納得いきます。

というわけで、自分の考え方としては、てんかんと熱性けいれんは電気生理学的にはよく似たことが起こっているわけで、そういった意味ではあまり区別はありません。

では、熱性けいれんとてんかんをどう区別するのか? 繰り返しますが、発作の誘因で区別します。有熱時のみなのか、そうではないのか。これ以外に考えるべき要素はありません。熱性けいれんとてんかんの区別に必要なのは病歴だけ。脳波は全く不要です。

熱性けいれんは有熱時のみに発作が起こる。つまり発作がある程度予見可能です。てんかんでは、誘因なく発作が起こる。つまり、予見不可能なわけです。発作が予見不可能であるから、毎日抗てんかん薬を飲んで発作を予防する必要があるのです。有熱時のみに発作がある熱性けいれんの場合、薬を使うにしても、発熱しているときだけでよいということになります。有熱時の対応のみで発作を予防できない場合に限って、抗てんかん薬の内服薬を考えればよい。ここにも脳波所見の入る余地はありません

まとめると、熱性けいれんでもてんかんでも発作自体は電気生理学的にはたいした違いはなく、熱性けいれんの方が脳の興奮性の低さを反映して脳波でてんかん性発射が出にくく、診断における両者の相違点は発作の誘因だけ、ということになります。

「てんかん発症を予防できる」については、次回に書きます。

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