« てんかん診療における脳波の役割 | トップページ | グアニジノ化合物研究会 »

2015/08/01

てんかん診療における脳波の役割(続き)

脳波検査をして偶発的に異常をみつけてしまった場合、どうしますか?

例えば、熱性けいれんや頭痛で脳波をとり、てんかん発射を見つけてしまった場合です。そもそも、これらでどこまで脳波が必要かという話もありますが(もちろん必要な場合もあります)。

脳波にてんかん発射があるからといって、将来無熱時発作を起こすかどうかはきっちり予測はできません。ただし、ある特定の所見がみられた場合(例えば前頭部からのてんかん発射)、リスクが増すという報告はあります。

ですが、疑問が生じます。

だから、どうするの?

薬を飲むのか? 脳波を定期的にとるのか?

無熱時の発作がない場合、薬を飲むという話にはふつうなりません。脳波で異常が見つかっても、将来的に無熱時発作を起こさない人もそれなりにいるからです。みんな薬を飲ませてしまうと、飲まなくてもよい人にも飲ませてしまう危険が大きいです。おまけに、薬は100%効きません。明らかに無熱時の発作があった方でも、最初の薬で発作がきっちり止まるのは5-6割です。

つまり、脳波異常だけで薬を始めるということは、飲む必要がない人にも飲ませてしまうことになるし、飲んだからといって効く確率は100%にほど遠いという、全く理に適っていないことになります。おまけに、少数ではありますが、薬疹などの副作用が出ます。こんなことが起こってしまったら、目も当てられません。

抗てんかん薬は、抗発作薬。熱さましと同じで、あくまで対症療法の薬です。発作が出てから使うのが、一般的には正しい。脳波異常の原因となる脳の問題は薬では治りません。このような薬はまだ見つかっておらず、時間とともに自力で治るのを待つしかありません。つまり、無熱時発作がないうちから、予防治療というのは医学的根拠がありません。

脳波を定期的にとるかどうか。これにも疑問を感じています。偶発的にせよ、異常を見つけてしまった場合、なんとなく半年や1年に1回くらいは経過を追っておきたいという衝動には確かにかられます。

でも実際の所、発作が出なければ脳波をいくらとっても何もしません。前回よりてんかん発射が多くなっていても、症状が出なければ、薬はふつう使いません。どちらかと言えば、「異常が出たのだから、経過をみないといけない」と、医者も患者さんも自分たちの心の平安のためだけにそうしているのではと感じます。

一般的に、治療方針の決定に影響しない検査は意義が乏しいと考えられています。最近は、保護者とよく相談し納得された場合、偶発的な異常を見つけてもフォローはしないことにしています。この辺りは、医者によって意見が色々あるところだとは思いますが。

ちなみに、発作の様相が変わったとき等の変化がみられた時には、脳波はとるべきだと思います。時には、薬で発作や脳波が悪くなったり、違うタイプの発作が出てしまったりすることがありますので。

|

« てんかん診療における脳波の役割 | トップページ | グアニジノ化合物研究会 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« てんかん診療における脳波の役割 | トップページ | グアニジノ化合物研究会 »