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2015/06/25

グアニジノ化合物の高感度分析

クレアチン代謝異常症の1つにグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ(GAMT)欠損症という疾患があり、以前に何度かこのブログでも触れました。

これは治療可能な先天性代謝異常症であり、発症前に見つけ出して治療することにより、正常知能が獲得できたという報告が海外から出ています。一方、発見が遅れれば、ほぼ確実に知的障害を引きおこります。その他、てんかんなどの神経症状もみられます。

GAMT欠損症では、下に示すクレアチン合成経路においてGAMTが働きませんので、前駆体のグアニジノ酢酸が体液中に貯留します。グアニジノ酢酸にはけいれん誘発作用があり、てんかんの原因になっていると考えられています。

20150625

治療としては、不足しているクレアチンの補充と、グアニジノ酢酸をこれ以上増やさないようにAGATを阻害する目的でオルニチンの大量投与を行います。それでも不十分であれば、安息香酸ナトリウムによるグリシン捕捉アルギニン摂取制限(低たんぱく食)を行い、AGATへ供給される材料を減らします。

治療効果の評価ですが、まずは症状の改善です。次いで、頭部MRSを撮り、クレアチンピークをチェックする。治療前は、クレアチンピークが欠損していますが、治療すると上がってきます。問題は、発症前に治療を始めた場合です。この場合、症状で評価するのは無理です。ですが、きっちり治療しないと発症してしまう可能性があります。

GAMT欠損症の治療がうまくいっているかどうかは、毒性を示すグアニジノ酢酸をいかに下げられるか、ということです。ですので、グアニジノ酢酸を正確に評価できる方法が必要です。

私の職場では、尿中グアニジノ酢酸の定量は可能です。しかし、これは尿の濃さの影響を受けます。クレアチニン補正はもちろん行いますが、治療にクレアチン補充をしますので、当然ながら尿中クレアチニンは増えており、評価に難ありです。

ですので、血液(可能なら髄液も)のグアニジノ酢酸を定量して推移を追う、ということが必要です。ここで色々と難題があります。血液には蛋白がとても多く、前処理が必要です。また、色々な事情で、希釈して分析することになります。髄液は前処理はほとんど不要ですが、グアニジノ酢酸の濃度が健常人ではとてつもなく低い(数十nM)。なので、私の職場の今の分析法では測定感度がとどかない状態でした。

なので、蛍光分析で高感度検出する測定系を作ることにしました。質量分析計があれば比較的簡単なのですが、なかなか高価な機器なもので... グアニジノ化合物に特異的な蛍光誘導体化反応を用い、検出します。これで、測定感度が100倍以上アップします。これでうれしいのは、グアニジノ酢酸以外のグアニジノ化合物も分析できることです。とりあえず、10種類ほど一気に測定する系を作る予定です。

測定感度を上げられれば、新生児マススクリーニングに使っている乾燥ろ紙血での測定も可能になります。将来的に、新生児期の発症前治療に結び付けられるかも知れません。

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