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2015/01/17

L/P比

ミトコンドリア病という疾患群があります。ミトコンドリアは細胞内にあり、エネルギー産生を行う重要な構造物です。乳酸が高くなることで有名ですが、その際にL/P比という言葉が出てきます。Lはlactate(乳酸)、Pはpyruvate(ピルビン酸)を意味します。

教科書を読んでいると、ミトコンドリア呼吸鎖異常ではL/P比が上昇し、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)欠損症ではL/P比は正常~低めと書いてあります。また、L/P比は細胞内のNADH/NAD+比を反映するとも書いてあります。

代謝を専門にしておられる先生方には常識なのかも知れませんが、自分なりに理解するため調べたこと、考えたことを、メモとして書き残しておこうと思います(忘れるので!)。

L/P比は重量比ではなくモル比(mol/mol)です。代謝の場合、分子の数が大切ですから。ただし、乳酸とピルビン酸は分子量がほとんど同じですので、重量比≒モル比です。

まず、L/P比とNADH/NAD+比との関係です。何故、前者が後者を反映するのでしょうか?

乳酸脱水素酵素(LDH)と呼ばれる酵素があり、ピルビン酸と乳酸を相互変換できます。

ピルビン酸 + NADH ⇔ 乳酸 + NAD+

酵素反応は平衡反応なので、

平衡定数 = [乳酸][NAD+] / ([ピルビン酸][NADH])

という関係が存在します。ここで、[]は濃度を表します。すると、

[乳酸] / [ピルビン酸] = 平衡定数 × [NADH] / [NAD+]

左辺はL/P比ですから、L/P比はNADH/NAD+比と比例関係にあることになります。もちろん、NADHとNAD+は他の多くの酵素反応でも使われていますので、この式だけで論じるのは単純化し過ぎです。ですが、L/P比とNADH/NAD+比のおおざっぱな関係としては、これでよいのではと思います。

NADH/NAD+比が何故大切かというと、これがあまりにも上昇してしまうと(NAD+が相対的に欠乏すると)、解糖系が動かなくなってしまうからです。というのは、解糖系の途中にある酵素反応にNAD+が必要なためです。実際、乳酸脱水素酵素の存在意義として、ピルビン酸を乳酸に変換することによりNAD+を補充するというのがあり、これでNADHとNAD+のバランスをきっちりとることができます(無酸素運動時などの嫌気的解糖)。

次に呼吸鎖異常では、何故L/P比が上がるのか?

解糖系と、その後のクエン酸回路で、たくさんのNADHが作られます。これは、ミトコンドリア呼吸鎖の電子伝達系に送られてATPの合成に使われ、NAD+に戻されます。呼吸鎖がうまく動いていないと、NADHを消費できません。そのため、NADH/NAD+比が上昇し、これを反映するL/P比も上昇する、と考えられます。

PDHC欠損症の場合、解糖系からクエン酸回路に入れないわけですから、クエン酸回路由来のNADHが過剰に貯留することはありません。一方、解糖系で作られたNADHは、乳酸脱水素酵素でNAD+に戻され、ここはトントンになります。ですので、NADH/NAD+比の上昇は起こらないことになります。

以上が、L/P比について自分で調べて理解した内容です。間違いに気付かれた方は、ご遠慮なく教えてください。

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