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2014/12/19

小児の難治てんかんへの対処

前回の記事で、小児の場合はより深刻だと書きました。

その理由は、こどもの脳はまだ十分完成されていないため、てんかんが発達に及ぼす悪影響を考えないといけないからです。

神経内科のように、成人を診療する科では、獲得された機能が失われるというのをよく経験すると思います。例えば、脳梗塞で言葉が出なくなる、片腕が動かなくなる等です。

一方、私が専門としている小児神経科では、機能の獲得過程そのものの異常をよく経験します。本来は1歳過ぎで出るはずの言葉がなかなか出ない、左手の使い方は上達しているのに右手がなかなか使えない等です。

「言葉が出ない」という同じ表現でも、中身は全く異なります。これが、大人の神経内科とは全く異なる小児神経科の特殊性です。

さて、小児のてんかんですが、小児には良性てんかんがわりと多く、これはあまり問題になりません。薬でわりと簡単に発作が止まり、発達にも大きな影響なく、時とともに治っていきます。

一方、小児の難治てんかんは深刻です。

何故なら、てんかんの罹病期間が長いほど、知能指数(IQ)が下がってくることが分かっているからです。また、発症年齢が早いほど、IQの低下は著しいのです。罹病期間とは、てんかん発作が始まってからの期間です。これが長いほど脳の機能に悪影響があってIQが下がってくるのは直感的に分かるかと思います。

発症年齢が早いほど問題になるのは、人生における時間の重みが異なるのが理由の1つです。成人にとっての3か月と、生後6か月の赤ちゃんにとっての3か月は、全く重みが違います。赤ちゃんにとっては人生の半分ですから。別の理由としては、幼い時期は、言語などの色々な機能を獲得するために、脳の成長が極めて著しいとても大切な時期であるということです。発達には、この時期を逃すと二度と獲得できないという臨界期が存在します。てんかん発作が邪魔をして、この重要な時期を逃してしまうと、後で追いつくのは極めて難しくなってしまいます。

てんかん外科が無事行えた患者さんがおられたとします。手術後に最終的にどのくらいのIQになるかは、手術前のIQで決まるのです。発作がいくらピタッと止まったとしても、手術前にIQが落ちてしまっていれば、大幅な回復はそんなに見込めません。なので、IQが落ちてしまう前に手術をする必要があります。まさに時間との勝負なのです。

先日参加してきたアメリカてんかん学会で、小児てんかん外科のセッションがあり、ある先生が、「私は乳児のてんかんの薬物治療を始めた段階で、既に手術のことも考えることにしている」と言われました。患者さんが幼いほど、治療している医師は色々と急いで考える必要があるのです。のんびりしていてはいけません。

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