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2014/06/22

先天性代謝疾患11

2年ほど前に、てんかんを起こす先天性代謝疾患についていくつか書きました。主に、治療法のあるものについて書きましたが、まだ治療法のないものについても少し書きました。

久しぶりに追加しておきたいと思います。

今回は、コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素(SSADH)欠損症についてです。

この疾患は、言葉や運動発達の遅れ、自閉症、てんかんなどを示す疾患です。

抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の分解経路の異常で、神経伝達物質病の1つです。

GABAは、まずGABAトランスアミナーゼにより、コハク酸セミアルデヒドに変換され、これがコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素によりコハク酸に変換されて、クエン酸(TCA)回路に入ります。

SSADH欠損症では、後者の反応が行えず、代わりにγ-ヒドロキシ酪酸(GHB)が蓄積し、尿中に排泄されます(γ-ヒドロキシ酪酸尿症)。

症状としては、言葉や運動発達の遅れ、体が柔らかい、知的障害が主であり、その他、てんかん、自閉症、運動失調などもみられます。

症状が特異的ではないため、見逃し例がけっこうありそうな疾患です。MRIでは淡蒼球に異常信号が出ることがあると言われています。

治療法は未確立ですが、GHBの前駆体であるコハク酸セミアルデヒドの生成を抑えるビガバトリン(抗てんかん薬)の使用報告があります。効果は一定していないようです。

診断の鍵は、尿中有機酸分析でGHBの排泄増加を確認することですが、これにはいくつか問題があります。

1. GHBは通常の尿中有機酸分析では、よく見逃されます。そのため、GHBを鋭敏に検出するため、それに特化した分析方法の併用を勧める論文もあります。オーダーする際に、「GHBの有無についてご検討願います」といったコメントをつけるようにと言われる先生もおられます。

2. 尿中有機酸分析が保険診療適応外検査であることです。正確には、自施設内で検査できない医療機関では保険が効きません。つまり、外部の検査会社等に頼んではダメということです。

日本では混合診療が禁止されていますから、診察や他の検査と一緒に行おうとした場合、本来なら保険が効く診察や検査も含めて自費診療で患者さんが全額負担することになります。尿中有機酸分析の検査料金は、1-2万円弱です。

保険の効かない検査のみ、医療機関が負担(研究費などを使って自腹)する場合もあります。しかし、当然ながら、医療機関からの持ち出しには限界がありますので、どうしても必要な患者さんのみで行ったり、検査ができる他の医療機関に紹介したりが多いと思います。

尿中有機酸分析は、発達に問題のある方では全員行ってもよいくらいの検査です。なので、「自施設内での検査」という制約が早く外されることを願っています。

他の方法としては、民間の検査施設に患者さんから直接尿を送って検査を受けてもらい、支払いも直接していただく方法があります。これだと、医療機関は支払いに関与しませんので、混合診療には該当しないはずです。

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コメント

はじめまして。
今回、小学生の息子が、SSADH欠損症かも・・・という診断を受け、血液検査の結果を待っているところです。
この病気を検索して、このブログにたどり着き、しかも書かれているのが最近、ということで、コメント書かせていただいています。
症状が、書かれている通り、MRIの淡蒼球の異常、知的障害、てんかん、運動や言葉の遅れなど、怖いほど一致しています。結果を待っている今、不安で不安で押しつぶされそうです。
もしその病気なら、息子はどうなっていくのか。。。報告例が少ないので、情報がほとんどないんですよね。
何か、詳しくわかることがあれば、教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

投稿: 七夕の願い | 2014/07/07 22:38

はじめまして。

息子さんのこと、さぞかしご心配だと思います。

SSADH欠損症の主な症状はてんかんや発達障害であり、代謝専門の医師よりも小児神経科医である我々が最初にかかわることが多いため、少しでも広く知ってもらおうとこの記事を書きました。

SSADH欠損症は報告が少なく、将来的にどうなるのかについての情報は残念ながらまだ不十分です。

家族会としては、小児神経伝達物質病家族会というのがあります(ホームページもあります)。そこに、SSADH欠損症の情報も少し掲載されています。

ただ、診断をきっちりつけないと、何も始められません。

検査の結果が届きましたら、主治医の先生とよく相談してくださいね。

投稿: あきちゃん | 2014/07/08 15:46

お忙しい中、お返事ありがとうございます。
そうですよね、診断がついてから、ですよね。先生にも言われました。
見逃されて埋もれてる患者さんが結構いる、とのことですが、この病気と疑われて、遺伝子検査した人はどのくらいいて、その中で、陽性だった人はどのくらいいるんだろう、とふと疑問に思いました。
わかる範囲でいいので、教えてください。
次回の診察まで時間があって、主治医の先生に聞けないので、あきちゃん先生に聞いてみました。もちろん主治医にも聞いてみるつもりです。

投稿: 七夕の願い | 2014/07/09 11:41

遺伝子検査を行われた方の数はよく存じ上げませんので(自分達の手で遺伝子検査をしていないので)、残念ながら、どのくらいの率で陽性なのかはお答えできません。

陽性率が低くても陽性に出ればその病気ですし、陽性率が高くても陰性に出る人もいます。なので、やっぱり結果待ちとしか申し上げられないです。

やきもきする気持ち、ご不安な気持ちはお察しいたします。

投稿: あきちゃん | 2014/07/09 15:08

はじめまして。私の孫は4ーヒドロキシ酪酸尿症です。もう3年も立ちました。状況は今は落ち着いてます。ただいえるのは重度の患者です。まだ日本には4人しか居ないって聞いてます。軽度7人と聞いてます。これから本当にどうなるのか不破です。分かれば情報が欲しいです。

投稿: naonao09 | 2015/06/15 16:18

nanao09さん

ご不安な気持ち、お察しいたします。

この病気は、確かに程度の軽い方と重い方とがおられます。遺伝子の変異の種類等、色々な要因があるかと思います。

将来のことについては、情報がまだまだ足らず、私自身これからもっと勉強していく必要があります。

お答えにならず、申し訳ございません。

投稿: あきちゃん | 2015/06/15 17:42

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