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2012/12/02

講演会

近隣の医師会からの依頼で、てんかんのプライマリケアについてお話をしてきました。こういうことにまだ慣れておらず、少し時間オーバーしてしまい、申し訳ない思いをしました。

その後の質疑応答で色々とご質問をいただけたのがうれしかったです。

いくつかあった中で、熱性けいれんへの脳波検査についての質問をいただきました。

熱性けいれんで脳波をとりたがる紹介理由のほとんどが、「てんかんの可能性を考えて」です。過去の記事にも書きましたが、僕はあまり意味のある検査だとは思っていません。少なくとも、自分に直接紹介されてきた場合には脳波はとらずにお返しするよう努力しています。理由は、次のとおりです。

1. 有熱時の発作のみの方で、臨床的にてんかんの診断はくださない。
2. 脳波でのてんかん発射の有無にかかわらず、診断は同じ。
3. 脳波でのてんかん発射の有無にかかわらず、治療方針も同じ。
4. 脳波所見で、将来のてんかん発症は予測できない。
5. 抗てんかん薬で、てんかん発症の予防をできる証拠はない。

熱性けいれんとてんかんとの最大の違いは、発作の予見可能性にあります。てんかんは非誘発性の発作を繰り返す疾患ですので、発作がいつ起こるか分かりません。なので、常日頃発作を抑える薬を飲むことになります。熱性けいれんの発作は、通常高熱時にのみ起こります。つまり、高熱を出したときにだけ注意・対処すればよいのです。熱性けいれんが初回の場合、再発率は3割なので、何も対処しない場合もあります。保護者の希望により対処する場合の例としては、抗てんかん薬の発熱時投与があります。これで発作の予防が不可能なとき(高熱を見逃してしまう、発熱してから発作を起こすまでの時間が短く間に合わない等)には、やむなく毎日抗てんかん薬を内服することがあります。

脳波にてんかん発射ががあればてんかんか、といいますと、そんなことはありません。脳波でのてんかん発射≠てんかんです。脳波には偽陽性があり、てんかんでない方でもてんかん発射がみつかることがあります。このような方は、抗てんかん薬による治療対象にはなりません。脳波には偽陰性があり、てんかん患者の2-5割では、脳波でてんかん発射が見えません。しかし、抗てんかん薬による治療対象です。つまり、脳波「だけ」でてんかんの診断や除外は不可能です。脳波を過信してはなりません。てんかんか否かも脳波だけでは分からないのですから、将来のてんかん発症を予測することもできません。

最後に抗てんかん薬ですが、発作が起こるのを抑えることはできますが、発作を起こす脳の異常そのものを治す作用は今のところ証明されていません。てんかんがなぜ治るのかといいますと、自分の力で治るところが大きいのです。その時期が来るまで発作が起こらないように対症療法としてしのぐための薬が抗てんかん薬です。厳密には抗発作薬と呼ぶのが正しいのです。てんかん発症予防のために薬を飲むという考え方は、今のところ根拠がありません。

脳波を過信するあまりに無用な検査・服薬をすることは避けたいものです。もちろん、臨床的に熱性けいれんではないと判断した場合には別の話ですので念のため。

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