« 同門会 | トップページ | ネットにおけるてんかんの情報 - 英語と日本語 »

2012/08/14

抗てんかん薬は抗発作薬

以前に書いたネタかも知れません。

世の中に出ている抗てんかん薬は、全て発作を抑えるためだけの抗発作薬に過ぎません。

どういう意味かといいますと、発熱に対して解熱剤を使うのと一緒ということです。たとえば、細菌が体に入って発熱を起こしているとします。解熱剤は発熱を抑えるためだけの薬、抗生物質は細菌を退治する根本的な治療の薬です。

今使われている抗てんかん薬は、ここに挙げた例の解熱剤に相当します。つまり、単なる対症療法としての薬です。

本当の意味での抗てんかん薬であれば、脳に出来上がった(または出来上がりつつある)異常なてんかんネットワークを中和することにより、てんかんを根本的に直してくれるのですが、そういう作用がヒトで証明されたお薬はまだありません。

子どものてんかんは成長につれて治っていく傾向があります。それまでの間、発作を起こさないように「しのぐ」のが、抗てんかん薬を使う主な目的です。なので、発作回数が少ないと分かっているてんかんの一群では、そもそも内服治療を行わない場合すらあります。長期にお薬を飲んだ後に減量・断薬しても発作が出てこないのは、お薬でてんかんが治ったというよりは、成長につれて自分の力で治ったという方が大きいと思います。

一方、大人の場合はそのような自然治癒の傾向が少ないので、たとえ発作が止まっても、大人ではお薬の断薬はより難しくなります。

こういった事情なので、抗てんかん薬(抗発作薬)の治療対象は発作であり、脳波異常ではありません(一部の特殊なてんかんを除く)。発作が抑制されれば、脳波異常を完全に消し去るまで薬を増やすことは通常ありません。

通常のてんかん: 発作抑制を目標。脳波の治療は不要。
特殊なてんかん(てんかん性脳症と呼ぶ): 発作抑制のみならず、脳波異常の軽減も治療目標とする。

ちょっと単純化し過ぎかも知れませんが、だいたいこういう感じになっています。

|

« 同門会 | トップページ | ネットにおけるてんかんの情報 - 英語と日本語 »

コメント

こんにちは、ブログ拝見し勉強させていただいています。
なぜてんかん性脳症の場合のみ、脳波異常も治療するのですか?

投稿: 7 | 2012/08/15 12:19

7さん、こんにちは。

国際抗てんかん連盟の定義によりますと、「てんかん性脳症とは,認知・行動障害に関して,てんかん性活動そのものが基礎病理(例:皮質形成異常)単独で予想されるよりも重症な障害を引き起こす原因となり,しかもこれらの障害が経時的に悪化するという概念」です。

ざっくばらんに言いますと、発作だけでなく脳波異常も悪さをしているという考え方なので、発作だけでなく脳波異常も退治したいということになります。

通常のてんかんではそこまでではありませんので、薬を増やすことによる副作用のリスクも考え、脳波異常を徹底的に治療はしません。

投稿: あきちゃん | 2012/08/15 13:04

ご丁寧な回答をありがとうございました。娘の発作(ミオクロニー)がラミクタールで抑制され、次は脳波を綺麗にしたいという親心があり質問させて頂きました。勉強になりました。

投稿: 7 | 2012/08/15 22:00

7さん。事情は分かりました。

僕の記事は、あくまで白黒を分かりやすく書いたものです。灰色というのはどこの世界でもあり、そこでは医師どうしの意見でも食い違いが出ることは少なくありません。

治療の細かい点は娘さんのてんかんの診断にもよりますので、担当の先生にも疑問点は尋ねてみてください。

治療がうまくいくことを願っています。

投稿: あきちゃん | 2012/08/15 22:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 同門会 | トップページ | ネットにおけるてんかんの情報 - 英語と日本語 »