« 古いラケット | トップページ | GrassとCurl »

2012/07/26

てんかん外科は早いほどよいか

てんかん外科は最終手段ではない。
薬物治療の継続こそが最終手段。

5月の小児神経学会のシンポジウムで僕が強く訴えた内容です。その他のシンポジストたちも同じようなことを話してくださいました。まぁ、シンポジウムのタイトルが「小児てんかん外科 - 早期手術患者の発見と利点」というものでしたから。

簡単に言えば、「薬を使い尽くしたから仕方なく手術」なのではなく、「手術できるか早い段階で考えて、手術やその他の治療(ケトン食療法など)が無理なら、薬物治療を継続する」ということです。

理由は、小児の難治てんかんは時間との勝負だから。30歳の大人の1年と、1歳児の1年の重要性はまったく違いますし、言語などの能力の獲得にきわめて大切な時期だからです。

昨年英国より出た論文。国際抗てんかん連盟の雑誌Epilepsiaに掲載されています(Epilepsia 2011; 52: 1966-1972)。この論文には以下のことが書いてあります。他にもよく似た研究はいくつも出ています。

1. てんかん外科の前後でIQは変化しない。たとえ、発作が抑制されても変化しないようだ。
2. 発症から手術までの期間が長いほどIQは低くなる。
3. 発症年齢が幼いほどIQは低くなる。
4. 手術後のIQと関連していたのは、手術前のIQのみ。

これから、次のようなことが導けます。

1. 難治なてんかんは進む可能性がある。発作がなかなかとまらないとIQが下がってくる。
2. 手術後のIQを高くするためには、手術前のIQが高くなければならない。
3. 手術前のIQを高くしておくには、発症から手術までの期間を短くする必要がある。
4. 言い換えれば、IQが下がる前に手術可能なら手術をする

僕たち小児神経科医は、発作が簡単に止まらない子どもを診たら、正直かなり焦るべきだと思います。もちろん、たとえ手術可能な患者さんでも、最終的に手術するかどうかを決めるのは患者さん自身と御家族なわけですが、そういう治療選択肢をきちんと提供してあげるのが僕たちの重要な責務です。僕たちが勝手にドアを閉じてしまってはいけません。

えらそうなことを書いていますが、自分にも日々言い聞かせるつもりです。

|

« 古いラケット | トップページ | GrassとCurl »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 古いラケット | トップページ | GrassとCurl »