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2012/04/15

不幸な事故

不幸な自動車事故のニュースが先日報道されました。亡くなった加害者はてんかん患者だったとのことですが、事故との因果関係は今後の調査を待つ必要がありそうです。

色々思うことはあるのですが、簡単に書けません。この問題は非常に根が深いからです。とりあえず、まとまりがありませんが、箇条書きにします。

まず、亡くなった方々とご遺族に深い哀悼の意を表します。

てんかん患者さんに限らず、車の運転中に車のコントロールが不能になる症状のある方は、運転免許を取得・更新できません。治療により症状の治まっている方でも申告義務があり、診断書を提出する必要があります。義務を怠り、症状が出て事故を起こせば、もちろん責任が生じます。

てんかん患者さんで発作が薬によって治まっている方は、運転免許を取得・更新できます(取得条件があります)。薬を毎日忘れずに内服し、規則正しい生活を心がけていただくというのが前提であり、患者さんの義務でもあります。

てんかん患者さんの大部分は、発作の最中以外はごくふつうの方です。発作を目撃しない限りてんかんとは分かりませんし、その方の能力が劣るわけでもありません。まじめに治療を受け、法令を遵守されている患者さんが「社会の凶器」になることはありません。

てんかんは、「泡を吹いて全身がひきつけて倒れる病気」というくらいにしか世間に認知されていません。100人に1人という「ありふれた」病気なのですから、もっと一般人に理解してもらいたい。啓蒙活動がもっと必要です。

大きな問題は、てんかんに対する無知です。目に見える障害は理解されやすく、援助もわりあい得られやすいのです。しかし、自分の家族や知り合いに患者さんがいない限り、てんかん発作を見ることはほぼないです。見えないものは理解できない。理解できないものは「得体が知れない」「こわい」。このような偏見があると、患者さんは自分が病気だと人に告げられなくなります。

てんかんという病名による運転免許の一律制限をしたらという極論があるようですが、適切とはいえません。1つは病名による患者差別。てんかん以外でも運転不能になるような病気はいくらでもありますし、意識を失わず運動障害を伴わないてんかん発作もある。個人個人の状況での判断が大切。もう1つは、てんかんか否かをきっちり判定する医学的方法がないこと。脳波で「てんかんの波」は正常人の数%でも見られますし、てんかん患者で脳波異常のない方もおられます。なので、脳波はあてにならない。

医師には、てんかん発作がありながら運転免許を取得している方を警察へ通報する義務はありません。といいますかできません(医師の守秘義務に違反する)。このようになっていないと、患者さんが医師に発作の有無をきちんと告げなくなり、治療に支障をきたすからです。つまり、警察への通報義務を医師に課すと、かえって治療の質が低下し事故の危険を増やすことになる。

この問題を根本的に解決するには、みんながてんかんという病気を理解して、患者さんが自分でみんなに病気があることを告げられるような社会にすること。そして、そうすることによって差別や大きな不利益をこうむらないような社会にすることです。これが理想論だとは分かっていますが、この方向に向かわない限り、不幸な自動車事故の予防は難しいでしょう。

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