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2012/02/15

先天性代謝疾患8

モリブデン補酵素(補因子)欠損症という疾患について書きます。

モリブデン補酵素(補因子)、略称MoCoというのは、微量元素のモリブデンを中に含んだ物質ですが、いくつかの重要な酵素が働くのに重要な役割を演じています。特に大切なのが亜硫酸酸化酵素で、体の中でできた毒性の高い亜硫酸を硫酸に酸化して解毒する働きがあります。

MoCo欠損症では、毒性の高い亜硫酸が体にたまり、脳などの臓器に障害が起こります。生後間もなくからのてんかん発作、重度の発達遅延等が主な症状ですが、亜硫酸の毒性による障害が続きますので、基本的に進行性の病気です。

この疾患は、その経過と画像所見から、しばしば重症の低酸素性虚血性脳症と間違われます。診断の鍵は、「重症仮死のはっきりした既往がない(乏しい)のに、あまりにも症状や画像所見が重度で話がうまく合わない」という印象を受けた際に、この疾患を考えるということです。

まず行うとても大切なテストがあります。尿中亜硫酸テストです。これには、理化学機器等の会社から販売されている亜硫酸試験紙を用います(Googleで検索するとすぐ出てきます)。正常人ではこの試験紙の色は変わりません。しかし、MoCo欠損症の方は濃い色にすぐ変わります。1つ注意点があり、必ず新鮮尿で検査するということです。でないと、偽陰性が出る場合があります。この亜硫酸試験紙ですが、日本全国のNICUに常備しておくべき品だと僕は思います。

亜硫酸テストが陽性だった場合、偽陽性の可能性を否定するため、より特異的な物質を測定します。それが尿中スルフォシステインという物質で、日本国内に測れる施設があります。

尿中スルフォシステインが上昇していた場合、診断はMoCo欠損症か亜硫酸酸化酵素欠損症の2つに絞られます。この2つを鑑別するのに大切な検査が血中尿酸です。MoCo欠損症であれば、血中尿酸が著明低値(感度以下)になります。これは、尿酸を生成するキサンチン酸化酵素がMoCoを必要とするため、MoCo欠損症ではこの反応もうまくいかなくなるからです。ここでも注意点があり、生後間もなくは尿酸値が必ずしも低くない、ということです。母体からの移行があるからだと思います。

残念なことに、MoCo欠損症も亜硫酸酸化酵素欠損症も(両者の症状はほぼ同じ)、現時点では治療方法がありません。MoCo欠損症の一部に対してはcPMPという物質が注目されていますが、世界のどこかで治験が始まったという報告はまだないようです。今後の進歩を待ちたいところです。

小児神経科医として覚えておきたいのは、原因がはっきりしない新生児発症の発作では尿中亜硫酸テストを行う、血中尿酸低値に気をつけておくということです。

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コメント

数年前の未熟児新生児学会でこの病気を知ってから一応尿酸値は気にしていましたが、繰り返しは見ていませんでした。亜硫酸試験紙探してみます。うちの新生児発作対応(診断も含めて)マニュアルを作成中ですが、わからないことも色々あるので、また相談に乗っていただけるとうれしいです。

投稿: take | 2012/02/15 19:42

take先生、お元気ですか。

亜硫酸試験紙はスクリーニングにとても役に立ちますので、ぜひ手元に置いといてください。

新生児発作対応マニュアル、がんばって良いものを作ってくださいね。

投稿: あきちゃん | 2012/02/15 21:50

尿中スルフォシステインという検査を省き、遺伝子検査で診断する場合もあるのですか?

投稿: 7 | 2012/06/28 15:17

7さん

遺伝子検査をいきなり行うのは不可能ではないでしょうが、遺伝子検査を行うに足る傍証を得ることは大切だと思います。亜硫酸テストは簡易テストですから。

日本では、スルフォシステインの測定も遺伝子検査も同じ施設でできますので、話はスムーズに進みやすいです。

投稿: あきちゃん | 2012/08/30 15:37

はじめまして。
私の息子は、1歳半でこの病気だと判明しました。現時点での病院からの薬はてんかんの薬を処方してもらっています。他は口頭軟弱症の薬や今の息子の症状に合わせての薬のみです。この病気についての質問や症状、そしてどのように進行していくかなど今の主治医に相談しても先生自身も知らなかった病気なので、脳性麻痺の症状と同じ対応しかしてもらえません。脳性麻痺という括りにはなるとは思うのですが根本の病気に関する知識は主治医は皆無です。(もしろん先生がブログに記した内容の事は説明はして頂きましたが)自分でたくさん文献を読み、調べましたが、やっぱり実際に日本でモリブデン補酵素欠損症の患者を診てる先生の話やその子たちに会いたいと思うのですがそこはなかなか難しい問題になっています。このように、あきちゃん先生のようにブログでこの病気を紹介してくださいる事でもっと情報が多くなる事を願っています。先生は、この病気がどのように進行していくか、そしてどのくらい生きられるかなど分かりますか?海外でそういうお子さんは診ていらっしゃいましたか?分かる範囲で結構です。何でもこの病気について知っている事をお教え願ませんか?宜しくお願いします。

投稿: こーりゃ | 2012/12/19 18:55

こーりゃさん、公開された場所には書きづらいですので、メールでお返事いたします。

投稿: あきちゃん | 2012/12/19 21:09

初めましてこんにちは。
一歳2ヶ月になる男の子の母です。
先日、息子がモリブデンコファクター欠損症の可能性が高いと病院で言われました。

38週3514gで出産。
出生後すぐに黄疸があり光線治療。(後日血液検査で母乳性黄疸と判明)
その時の血液検査で尿酸値が0.4とかなり低いと判明。
何度か尿検査しましたが毎回0.2〜0.4と低い。

生後4ヶ月にRSで入院しました。その時に目がずっと上向くのでおかしいと思い後日脳波とMRI検査をしましたが、異常ありませんでした。

生後9ヶ月の時風邪をこじらせて気管支肺炎になったので入院しました。
その時座ってた首と腰がグニャっとなり、肘をついて首を上げれない、腕の動きが変なかんじになり寝返りもできなくなり、低緊張?後退かな?と思いましたが体調が回復するにつれて首や腰のグニャグニャや低緊張ぎみの手もなおり元どうりすごく元気になりました。
その後また脳波とMRI撮りましたが異常ありませんとのことでした。(気泡はあるが問題ないとのことでした。)

一歳1ヶ月の時風邪を引いてまた体がグニャっとなってきたのすぐかかりつけの病院に紹介してもらった脳神経の先生に診てもらうと、周期性四肢麻痺、高カリウムと言われました。しかしその後家に帰ってもやっぱりいつもと違うしゴールでウィーク前にもう一度見てもらおうと思い再度病院へいくと高カリウムではなくなっていて、手、顔に付随運動が見られるのですぐに違う病院へ紹介してもらってそのまま入院になりました。

そしてそこで尿検査、血液検査、髄液検査、MRI、MRS、夜から朝からまでカメラ回しての脳波検査をしました。

脳波ではてんかんではないとのことでした。
MRIでは脳に左右対称に白く影があるといわれました。(以前MRIで撮影した時なにもないといわれましたが、画像を取り寄せてもらって確認すると1回目の撮影時にも白い影はありました。でも1回目も2回目の撮影の時もサイズは大きくなってなかったです。)
髄液検査ではなにもゆわれませんでした。
血液検査、尿検査でモリブデンコファクター欠損症の可能性が高いといわれました。


しかし息子は一歳2ヶ月になりますが、自分の足でハイハイし、つかまり立ち、つたい歩きもできるようになってきてます。
自分の意思で笑ったり、ないたり、好きなものを食べたり毎日元気です。

このモリブデンコファクター欠損症という病気は出生後発病し、多くの子は小さい時に亡くなってしまったり、寝たきりの子が多い病気だとききました。
主治医の先生もこの病気でこんなに元気に育ってる症例がないのでわからない。といわれました。

主治医の先生は、この子はモリブデンコファクター欠損症でもすごく軽度、欠損症までいかない、少したりないくらい??なレベルで2SDにはいるかはいらないかな???のすごく微妙なところ。と言ってました。

普段は酵素足りてて、でも体調悪くなると上手く代謝できなく、予備力(酵素の貯え)がないのでその時だけ症状がでるのかもしれないと言っていました。主治医の先生もこの病気の専門ではないみたいなので先生も手探り状態です。

アキちゃん先生におききしたいのですが、このモリブデンコファクター欠損症の場合こんなに元気に育っていけることはあるのでしょうか?

これから急に悪くなったりする可能性や、ほかの病気と考えらる事はありますか??

私が不思議な点は、息子は体調悪くなった時にだけ、付随運動や周期性四肢麻痺みたいな症状がでる。体調が回復するとその状態はすっかり消え元気に戻り月齢とともに元気に成長していっている。という事です。

私もこの病気を知ったのが昨日なので質問がおかしかったり、無知なところがたくさんあるかと思いますが何か情報や考えられる可能性などなにかあればお聞かせ頂きたいです。
お忙しいとは思いますがよろしくお願いします。

投稿: Lmama | 2018/05/25 17:05

Lmamaさん、こんばんは。

お子様がモリブデン補因子欠損症の可能性があるとのこと、さぞかしご心痛のこととお察しいたします。

この病気ですが、上に書いておりますとおり、尿中亜硫酸試験陽性、血中尿酸低値がみられた場合に疑い、さらに細かい検査で診断を確定します。

軽症の患者さんの報告が少数ながらあり、発達がわりと保たれており、体調不良時に症状が出るというような記載があります。詳しくは主治医の先生に尋ねられてはと思います(インターネットで論文を検索できます)。

この病気はかなり稀な病気であり、実際に診療の経験がある医師はほとんどおりません。

ですが、情報検索は昔よりかなり行えるようになってきておりますので、主治医の先生とよく相談してくださいね。

投稿: あきちゃん | 2018/05/25 23:38

アキちゃん先生こんにちは。
お忙しい中早急なお返事ありがとうございます。
軽度な方の報告、体調不良時に正直が出るといった報告があるという事で少しホッと致しました。
自分なりにモリブデンコファクター欠損症 軽度、体調不良時に症状出る などでいろいろ検索してみたのですが、論文を見つけ出されません。
お忙しい中大変恐縮ですが、論文のURLなど教えて頂けたらと思いますm(_ _)m
よろしくお願いします。

投稿: Lmama | 2018/05/26 12:45

Lmamaさん、こんにちは。

私が見つけた論文は一般の方はダウンロードできないようになっています。どちらも英語の論文です。

医師向けの論文ですので、一般の方が読んだ場合に誤解等が生じる可能性もあり、直接はご案内しないようにしています。ご了承下さい。

主治医の先生に読んでいただき、内容を噛み砕いて説明していただくのが一番よいと思いますよ。

2001年と2018年に出版された論文で、医師向けの論文検索サイトで容易に検索できますから、主治医の先生にお伝えください。

投稿: あきちゃん | 2018/05/26 13:33

ご丁寧に説明ありがとうございました。
来週遺伝子検査の為病院に行くので主治医の先生に相談してお願いしてみます(╹◡╹)
ほんとにありがとうございました。
また何かありましたらご相談させて頂くことがあるかと思いますがその時はどうぞよろしくお願いします。

投稿: Lmama | 2018/05/26 15:14

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