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2012/01/07

血中濃度続き (Blood level, continued)

バルプロ酸(VPA)フェニトイン(PHT)は、昔からある抗てんかん薬です。

この2剤を併用する際、ちょっと注意すべきことがあります。

VPAもPHTも、血液中では、大部分(約90%)が蛋白に結合しています。どういうことかというと、蛋白に結合したVPAやPHTは、蛋白の分子が大きいために脳に入っていきません。実際に脳に入るのは残りの約10%で、これを遊離VPA遊離PHTと呼びます。

VPAとPHTを併用すると、どちらも蛋白に結合しようとするので、競合がおきます。そのため、十分に蛋白に結合できなくなり、遊離VPA、遊離PHTが増えます。遊離VPAがどのくらい増えるかはよく知りませんが、遊離PHTは倍くらいに上がったりします。

例を示しますと、PHTの有効血中濃度は15-20µg/mLですが、その場合、遊離PHTは10%で1.5-2µg/mLです。ところが、VPAを併用していてPHTの血中濃度が20µg/mLの場合、遊離PHTが20%になっていたとすれば、4µg/mLになります。これは、VPAを併用していない時のPHT濃度に換算すると40µg/mLに相当しますので、中毒域になります。つまり、VPAとPHTを併用する場合、PHT濃度がそんなに高くなくても、遊離PHTが高いために中毒症状が出る場合があるというわけです。

そのほかにも、PHTは用量と血中濃度が直線関係を示さないということが有名で、ちょっと注意を要します。15µg/mLを超えたくらいからは、少し増やすだけで血中濃度が急に上がって副作用が出る場合があるので、きめ細かい調節が必要です。

VPAですが、血中濃度が上がれば上がるほど、蛋白結合率が低くなることが分かっています。大量療法(>120µg/mL)になってくると、VPAは血中濃度が上がりにくくなるのですが、遊離VPAの割合は増えてくるので(130µg/mLで20%近く)、遊離VPAは案外上がっていることがあります。

また、VPAやPHTのように大部分が蛋白に結合する薬剤は、血中アルブミン濃度の影響も受けます。アルブミンが低い患者さんの場合、見かけ上の血中濃度が低くなりますので、これにも注意です。

遊離VPA、遊離PHTのいずれも測定することはできますので、特に臨床的に中毒が疑われる場合等、VPAやPHTの血中濃度が異様に高くなくても測ってみる価値はあると思います。

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コメント

リクエスト(睡眠導入剤について)

『てんかん』について、わかりやすく書いていただき、ありがとうございます。
小児の脳波検査等で使用する睡眠導入剤について、詳しく教えていただけないでしょうか?

投稿: 臨床検査技師 | 2012/01/07 11:16

臨床検査技師さん

一般的には、トリクロリール、抱水クロラール、ラボナ等を用いるようですが、どういった「詳しい」情報をご希望なのでしょうか?

投稿: あきちゃん | 2012/01/07 22:30

お忙しいところ、恐縮です。
現在私が勤務している施設では、トリクロリールシロップとエスクレ坐薬を使用しています。
トリクロリールシロップは嫌いな(工夫しても飲みにくい)お子さんが多く、ふらつきのために帰宅が大変だと言う親御さんから、「飲みやすくて、すぐに効いて、目覚めが良い睡眠導入剤を使用して欲しい。」と言われます。
メラトニンを使用している施設もあると聞いていますが、小児(0~12歳)にはどのような睡眠導入剤が使用可能なのか、それぞれの特徴などを教えていただけないでしょうか?

投稿: 臨床検査技師 | 2012/01/08 09:48

確かに、トリクロリールは作用が後までかなり残る方がおられます。ずっと酔っ払いのようだったりしますし。抱水クロラール(エスクレもそうですし、内服でも)も、代謝産物はトリクロリールと一緒ですので、似たりよったりかも知れません。

今私が勤務している施設では、ラボナ錠を使っている先生もおられますが、私自身は使ったことがありません。日本小児神経学会のサイトにも記載があります(http://child-neuro-jp.org/visitor/qa2/a12.html)。

メラトニンについては、私は現時点では使おうとは思いません。なぜなら、日本で医薬品として認可されていないからです。

最後に、睡眠導入剤の使用の是非という問題があります。これに関しては、別の記事に書きます。

投稿: あきちゃん | 2012/01/08 15:41

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