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2011/12/13

ホストイン注射液

フォスフェニトインの注射薬が11月25日に薬価収載されたそうです。

これは、抗てんかん薬のフェニトインのプロドラッグで、体内に入った後に加水分解されてフェニトインに変化します。なので、効果はフェニトインと変わりません。

最大のポイントは、副作用の軽減です。フェニトインは水に難溶性であり、注射液はpHが12付近とかなりのアルカリ性です。そのため、注射による血管痛や静脈炎といった副作用があります。また、血管外に漏れると組織壊死を起こします。また、注射に15-20分はかける必要があります。

一方、フォスフェニトインは水溶性であり、注射液のpHは8-9と低くなっています。そのため、注射による痛みが少ないですし、組織壊死を起こしません(北米では筋注もOK)。また、注射速度をフェニトインの3倍の速さにすることができます(7-8分でOK)。

問題点は、まだ薬価が高いことでしょうか。しかし、フェニトイン注射薬を使うリスクを回避できることを考えますと、それでも使う価値があるように思います。ちなみに、アメリカではフェニトイン(商標名Dilantin)の注射薬は販売終了になったと聞いています。

最大の疑問点は、用量が海外と異なりmg表示になっていることです。海外では、フォスフェニトインの用量は全てフェニトイン当量(PE)表示になっています。つまり、500mgPEのフォスフェニトインから500mgのフェニトインができるということです。そのため、フェニトインとフォスフェニトインの使用量の「数字」は一緒になります。ところが、日本の表示だと、750mgのフォスフェニトインから500mgのフェニトインができる、と自分で計算しないといけません。正直、面倒くさいですし、海外の文献を読む際に混乱が生じます。特に、海外での講演では、mgPEのPEを入れ忘れたスライドを作る医師もいますので、なおさら困るのですが、海外ではPEを使うのが当たり前なので、入れ忘れだなと分かるのです。トロント小児病院でも、「フォスフェニトイン3mg = フォスフェニトイン2mgPE = フェニトイン2mgで、フォスフェニトインの用量の記載にはmgPEを用いること」と病棟にわざわざ貼り紙がしてありました。

なぜ、日本で、外国と異なる用量表示が選ばれたのかは分かりません。さぞかし強い理由があったのでしょうが、僕の理解の範囲外です。海外の文献を読む際に間違えないようにするのはもちろんですが、論文を書く際にも気をつけないと、日本は投与量がやや多いといった世界に誤ったメッセージを発することになりかねません(北米では小児のてんかん重積に15-20mgPE/kgを使う。日本では22.5mg/kgで15mgPE/kgに相当するので多くはないが、22.5という数字だけ見ると、PE表示しか知らない外国人には多いと誤解されるかも知れない)。

また、フォスフェニトインの保険適応の1つに「フェニトイン内服中の患者が内服できない際の代替療法」というのがありますが、1.5倍量(mgで)を与えよと明記されています。わざわざこんなことしなくても、フェニトイン当量で同じだけ与えれば、わざわざ計算をせずともすみ、ヒューマンエラーを減らせるのになぁとしみじみ思います。

こういった混乱を起こしそうなのは予測できるので、何故なのかなぁと思います。

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コメント

おひさしぶりです。国立岡山の新生児で御一緒させて頂いた犬尾です。
ご活躍を拝読してさすがだなぁとあらためて自分の未熟さを実感する毎日です。

ちょっと教えて下さい。

ホストインは、まだ認可されてから間もないので私は使用経験がないのですが、これから使っていきたいと思っている薬剤です。
日本での治験の時には発作頻発状態の抑制効果のデータがあったということですが、群発型、たとえば、本邦だと胃腸炎関連痙攣などで全くクリアな状態があって、時々短時間の痙攣が起こるようなケースでの使用にはとてもよい適応と言ってもいいのでしょうか?
また、海外では、そのような重積だけでなく、群発というてんかん発作でもよく使われるのでしょうか?

投稿: ホストイン | 2012/06/17 22:18

ホストインさん(犬尾先生)、お久しぶりです。

私は日本での治験の成績はよく知りません。ですが、フェニトインのプロドラッグですから、フェニトインが効くであろう事例では同じように使えます。

重積とまではいかない発作頻発状態ですが、保険上の問題はさておき、選択肢としては上がると思います。フェニトインより安全に注射できますから。

トロントでは、発作頻発の場合は、まず注射の前にロラゼパム舌下錠を使っていました。これで治まらない場合は、てんかん重積に準じた治療(ロラゼパム注射→フォスフェニトイン注射)の流れをたどることが多かったと思います。もちろん、ケースバイケースですが。

投稿: あきちゃん | 2012/06/17 23:20

あら、すみません。名前の所にタイトルを入れてしまいました。

早速ありがとうございます。勉強になります。
私、アレルギー医をやっていますが、2年前から藤田保健衛生大学の小児科で小児科もやっています。一時期小児救急に関わっていたこともあって、痙攣のコントロールには関心がありますが、なかなかフォロできていないのがお恥ずかしい限りです。

ロラゼパムは日本では抗痙攣適応薬になる気配はないようですね。

非常に勉強になるブログだなぁと思っています。うちの若いドクターにもお勧めさせてもらいます。

投稿: 犬尾 | 2012/06/18 23:28

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