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2010/02/12

難治性てんかん重積 (Refractory status epilepticus)

治療にもかかわらず止まらないてんかん発作重積(発作がずっと続く場合、または短い発作が断続的に起こり意識が回復しない場合)は、難治性てんかん重積と呼ばれます。

発作の初期治療は、どこでもあまり変わりません。ジアゼパムまたはロラゼパム(日本にはない)、フェニトインまたはフォスフェニトイン(日本にはない)、フェノバルビタール(最近、日本で認可)の注射薬を用います。ざっくばらんに言えば、これらの初期治療で止まらなければ、難治性てんかん重積と考えられます。発作間に意識が戻るのであれば、発作頻発であり、重積とは呼びません。

難治性てんかん重積の治療にきっちり定まったプロトコルはまだありません。しかし、各施設で考えておいた方がきっと良いでしょうね。

トロント小児病院での難治性てんかん重積の治療プロトコルは、以下のとおり。

ミダゾラム持続点滴

  • 0.15 mg/kgを静注、2 μg/kg/minで点滴開始
  • 必要に応じ、5分毎に2 μg/kg/minずつ増量、最大24 μg/kg/min
  • 点滴スピードを増やす場合、その都度0.15 mg/kgを静注してから増量

チオペンタール持続点滴

  • 2-4 mg/kgを静注、2-4 mg/kg/hで点滴開始
  • 必要に応じ、30分毎に1 mg/kg/hずつ増量、最大6 mg/kg/h
  • 点滴スピードを増やす場合、その都度2 mg/kgを静注してから増量

その他の方法

  • バルプロ酸静注(日本にはない)
  • トピラメート大量療法: 10 mg/kg/day 2分服(経鼻チューブで)で開始、3 mg/kg/dayずつ1-3日毎に増量、最大24 mg/kg/day。

抗てんかん薬以外では、麻酔薬のケタミンの持続点滴がありますが、個人的にはいい思いをしたことはまだありません。患者さんによっては、免疫グロブリン、ステロイドを使う場合もあります。明らかに発作焦点が限局している場合、手術をした事例もあります。

トロント以外では、例えば、リドカイン持続点滴が日本でわりと行われています。米国ではレベチラセタムの注射薬があります。ラコサマイドの注射薬もあり、症例報告が出ています。

てんかん重積の初期には、抑制性神経伝達物質であるガンマアミノ酪酸(GABA)を増強させる薬剤(ジアゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、フェノバルビタール等)が効きますが、時間がたつにつれ、神経細胞膜表面のGABA受容体が減少し、これらの薬剤の効果が落ちてきます。そのため、別の作用メカニズムを持つ薬を使うという考え方です。

そういうわけで、ナトリウムチャネル遮断薬(フェニトイン、フォスフェニトイン、バルプロ酸、リドカイン、ラコサマイド)、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体遮断薬(トピラメート、ケタミン)、シナプス膜蛋白作用薬(レベチラセタム)などが使われます。

発作が治まれば、経口薬への移行を考えますが、ここでの薬剤の組み合わせは千差万別です。

最後に、忘れてはならないのは、発作の治療をしながら基礎疾患をしっかり診断し、その治療も平行して行うことです(診断がつかない場合は、見込み診断で治療する場合もあります)。これがなかなか難しいんですよね...

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