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2010/01/28

発作原性とてんかん原性 (Ictogenesis and epileptogenesis)

抗てんかん薬の話などをしていて、ちょくちょく出てくる言葉が、発作原性ictogenesisてんかん原性epileptogenesisという言葉。

ざっくばらんに書くと、発作原性とは「発作を起こす能力」てんかん原性とは「てんかん焦点を形成する能力・過程」といった感じでしょうか? 発作原性によりてんかん発作が起こる。てんかん原性でてんかんを発症する。なんか複雑になってきました。てんかん発作という症状と、てんかんという疾患を混ぜこぜにすると混乱してしまいます。

てんかん原性の例としては、頭に怪我を負ったとします。受傷後しばらくしててんかん発作が起こるようになりました。なぜ発作が起こるようになったのか。受傷を契機に、今まで正常だった脳に何らかの変化が起こり、発作を起こす回路が作られたからです。この過程がてんかん原性。正常な脳を異常な脳に徐々に変化させる過程です。

別の例としては、最初は1箇所にてんかん焦点があったのに、長い間治療に難渋した後、別の場所にまで焦点ができてくることがあります。Secondary epileptogenesisと呼ばれる二次性焦点の形成で、これもてんかん原性です。

発作原性とは、発作の頻度に関連しているのだと思います。発作原性が高いほど、発作を起こしやすい。例えば、難治てんかんの代表みたいなレンノックス・ガストー症候群では発作原性が高く、毎日のように発作が起こります。一方、ローランドてんかん(正式には、中心側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん)は発作原性が低いので発作は少ない。一生に1回しか発作を起こさず、薬を飲む必要すらない場合もあります。

なぜこれが大切かというと、現時点で使用可能な抗てんかん薬は、発作原性に効くのであって、てんかん原性には効かないと考えられているからです。発作原性に効くというのは、てんかん発作を起こさないようにする、軽くするといった対症療法です。一方、てんかん原生に効くということは、脳内の異常なてんかんネットワークの拡がりを押さえ、既に出来上がっているてんかん焦点を中和し、てんかんを根本的に直す力です。

抗てんかん薬という名前を聞くと、てんかんを直す薬というように聞こえますが、これは厳密には正しくなく、抗てんかん発作薬というのがより正確なわけです。動物実験レベルでは、抗てんかん原性が示唆されている薬はありますが、人ではまだだと思います。

なので、今行われている治療は、発作を起こさないように抗てんかん薬で対症療法的に治療し、あとは患者さんが自分の力で直るのを待っているわけです。ですが、これだけでは、てんかん焦点の拡がりを抑えることはできません。てんかん原性が高い場合、最終的に薬は効かないことになりますし、てんかん外科のような別の治療方法が必要になる場合もあります。

てんかん焦点を中和することのできる、真の意味での抗てんかん薬が出てくることを切に願っています。

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