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2009/11/28

統計のトリック (Tricks in statistics)

診療報酬改定に関するニュース記事がチラホラ出ています。

開業医と勤務医の年収格差の是正と医療費増加ではなく診療報酬配分の見直しを求める財務省、それだけじゃぁダメだろという厚生労働省。

いつも思うんですよね。開業医の平均年収が2500万円、勤務医の平均年収が1500万円。僕は今までの勤務医人生15年間で1500万円なんて収入をもらったことは一度たりともありませんが、それは横に置いておきます。

なんで、この手の統計にいつも平均値を使うのでしょう? 年収っていうのは、正規分布ではありません。つまり、ピーク(山)が、分布のど真ん中に来ないのです。通常、ピークは分布の左寄りにあります。つまり、収入の少ない人が多数を占め、多い人は少数派。統計では、positive skewと呼びます(ここに図があります)。

この場合、平均値は、中央値よりも必ず大きくなります。中央値とは、上または下から数えてちょうど真ん中に当たる値のことで、例えば、99人いたとしたら、上または下から50番目の人の年収が中央値です。平均値というのは、少数の大きく外れた値に影響されます。一方、中央値は影響を受けません。正規分布をしない年収の表記に平均値を使うと、過大評価になります。そうであれば、僕が今までに勤務医の平均年収に一度たりとも届いたことがないのも、少しは納得できますね...

というわけで、本来、中央値のような、もっと安定した指標を使うのが正しいと思います。では、なぜ、平均年収として報告されるのでしょうか? 僕には3つの理由しか思いつきません。

  1. 平均値という概念が、中央値という概念よりも一般人に広く知られているから。
  2. 平均値が中央値よりも不安定という事実を知らない。
  3. 過大評価になる平均値を利用して、一般人をミスリードしたい。

あくまで善意にとれば、1なのかと思います。2は、まずないでしょう。しかし、3は十分ありえます。医療費抑制、医師の収入減少を図りたいのは分かってますから、世論を誘導するにはもってこいです。しかし、統計としては正しくないと思います。平均値を示すのはかまいませんが、ヒストグラムは最低限必要です。分布がゆがんでいれば、平均値はあまり信頼できません。

もう1つ、疑問に思うのは、なぜ、開業医と勤務医を比較するのかということです。開業医は社長です。診療所の経営責任すべてを負う立場。勤務医は、ただの雇用者です。この格差を是正する必要性を感じません。同じ論理でいけば、企業の社長と社員の給与格差も是正しなければなりません。比較すること自体、ナンセンスだと思いませんか?

ミスリーディングな情報を堂々と流さないで欲しいです。

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