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2009/05/13

脳波専門医試験用のティーチング (Teaching for Canadian EEG exam)

ここのところ、今年の6月にカナダ脳波専門医試験を受験するfellowたちにtechnology partに関して教えてくれと頼まれることが多いです。光栄なことだと思って引き受けてます。やっぱ、みんな合格してほしいから。ただ、1回につき教えるのに2時間以上かかります。

以前にも書きましたが、カナダの脳波専門医試験は3つの分野からなります。

  1. 臨床 (clinical part)
  2. 生理学 (physiology)
  3. テクノロジー (technology)

臨床とテクノロジーは、筆記試験と面接試験、生理学は筆記試験があります。これら3つの分野全てに合格しないといけません。臨床脳波はいくら読めても、生理学やテクノロジーがダメなら落第するわけです。1つの分野だけに落ちたとき、翌年のみにその分野だけの再受験が認められます。

多くの人たちにとって最難関はテクノロジーです。電極の装着方法・部位から始まり、電気回路の基本的知識、脳波計の動作するメカニズム、アナログ脳波計とデジタル脳波計の違い、デジタル信号処理などをカバーしなければなりません。カナダでは、アナログ脳波計は事実上なくなっており、臨床では全てペーパーレスデジタル脳波計です。なので、ここ数年で、デジタル脳波計の動作原理、デジタル信号処理等についての質問が増えてきています。デジタル脳波計について答えることができなければ、カナダの脳波専門医試験への合格は不可能です。なので、みんな必死にテクノロジーパート対策をしようとするわけです。

僕が助かったのは、学位研究がコンピュータでの脳波分析だったので、デジタル信号処理に関する知識が既にあったことです。本当にありがたかったです。

日本でも、臨床神経生理学会が脳波専門医試験を本格的に始めますので(今年6月が初のきっちりした試験、それまでは書類審査のみ)、日本でもこのような勉強が必要となってきたわけです。ちなみに、カナダの試験用に僕が勉強したのは、主に以下の分野です。

電気回路(抵抗、コンデンサー、コイル、RC回路、時定数、インピーダンス、オームの法則、キルヒホッフの法則)
時定数とフィルタとの関係・相互変換
電極の装着方法(10-20システム)
特殊電極の装着位置(T1、T2、蝶型骨電極、EOG)
基本的なモンタージュ(基準電極導出、双曲導出、そのメカニズム)
脳波のpolarity convention(陰性が上向き、色々計算させられる)
フィルタの種類(HFF、LFF、band pass、notch)と用途に応じたそれらの変更法
電極インピーダンスとインピーダンスマッチング
脳波計の色々な部品(電極箱、増幅器等)、脳波信号の流れ
差動増幅器とCommon mode rejection ratio (CMRR)、増幅器のゲイン
脳波のペン書きによる制約(ペンによるフィルタ効果等)
感度(sensitivity)、ペーパースピード、および用途に応じたそれらの変更法
電気的安全性(グランドの装着法、リーク電流等)
カナダでの脳波記録における種々のパラメータの最低基準値

これに加えてデジタル脳波です。

アナログ信号とデジタル信号の違い
AD変換、サンプリング、サンプリング周波数(横解像度)、縦解像度
標本化定理(Nyquist theorem)とエイリアシング
デジタル脳波計におけるreferential recording、データの保存、リモンタージュの理屈
リファレンス電極の位置
モニターの解像度とドットピッチ
デジタル脳波におけるフィルタ、感度、タイムスケールがアナログ脳波とどう違うか
デジタルフィルタの種類(FIR、IIR)とその特徴・相違点
基本的な脳波分析(フーリエ変換、ダイポール解析等)

本当は、もっとあるのですが、代表的な範囲ということで。これだけでも、相当広いと思います。これに加えて生理学、臨床パートがありますので、かなり大変です。

いずれ、生理学パートについても書こうかと思います。

カナダでは、試験に通らなければ正式に脳波所見をつけることが許されません(正確には、強く推奨であって、絶対ダメなわけではないらしいですが)。なので、専門医がとても大切にされるわけです。それだけの勉強をしたわけですから。問題なのは、日本ではいくら苦労して脳波専門医資格をとっても、なんらメリットはありません。せいぜい、履歴書に1行余分に書けるだけです。こういうのは、早々に何とかしてもらえないかなぁと思います。

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