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2008/11/27

小児脳卒中プログラム (Pediatric stroke fellowship)

今日の神経科のGrand Roundsでは、stroke team(脳卒中チーム)のstaffであるR先生の講演がありました。

SickKidsには、神経科のsubspecialty(より細分化された専門分野)として、てんかん以外に脳卒中のfellowship (stroke fellowship)があります。Epilepsy fellowと同様、stroke fellowも年間に1人の枠になっています。

SickKidsは、北米でも有名な小児脳卒中のセンターで、カナダ国内の小児脳卒中の膨大なデータベースを持っています。そして、小児脳卒中患者(動脈性脳梗塞)が来たときの超急性期治療のプロトコルが定められています。

僕は、小児脳卒中に関してはたいして知りませんので、以下に書く内容はR先生の講演や、ほかの院内の講演などからの聞きかじりです。だから正確さを欠いているかも知れませんと、最初に言い訳しておきます。

成人では、脳卒中の超急性期治療にt-PA(組織プラスミノゲン活性化因子)の静脈注射による治療が行われます。ただし、出血という重大な副作用があるため(血栓を溶かす薬ですから)、適応は非常に厳密に定められており、発症から3時間以内に使用しなければなりません。後遺症を軽減できるのでしょうが、それだけリスクのある強力な薬だということです。そして、小児への適用は正式にはありません。

SickKidsでは、研究の一環として、2歳以上の小児にt-PAを使うためのプロトコルがあります。救急外来に脳卒中を疑わせる症状の患者さんが来られた場合、発症から5時間以内であれば、stroke teamに緊急招集がかかります。これは、神経科のstroke staff/fellow、神経科のon call staff/fellow、interventionist(カテーテル治療の専門家、日本語は?)、神経放射線科医、放射線技師、薬剤師、ICU、麻酔科医、血栓科(Thrombosisと院内のプロトコルに書いてある)等、複数科にまたがるチームです。

そして、緊急MRIの対象です。成人ではCTを使う場合も多いらしいですが、小児では鑑別診断が多くなるので、全員MRIなのだそうです。そのために、他の患者をすっ飛ばしてMRIを撮ることができるようになっています。

脳梗塞を確認し、禁忌(それをしてはダメな状況)がなければ、発症からの時間で3つに分かれます。

つまり、発症3時間以内なら、t-PAの静脈注射です。使用量は体重換算で成人の2/3です。発症3時間以上、5時間半以内なら、interventionistによるt-PAの動脈内投与が行われます。つまり、カテーテルで血栓の出来ている脳の動脈にたどりつき、血栓に直接t-PAを浴びせかけるわけです。使用量は静脈注射より少なくなり全身にt-PAが回りませんので、出血のリスクが低いのですが、動脈内のカテーテル操作による合併症のリスクがあります。5.5時間を過ぎてしまっていれば、t-PAの対象にはなりません。

すごいなと思ったのは、いつでもt-PAの動脈内投与ができるようにinterventionistが確保されているということです。これは、カナダでも限られたセンターしかないのだそうです。

こんな感じで、stroke teamはがんばっているわけですね。しかし、実際のところ、発症後にこんな短時間でやっている患者さんは少数なのだそうです。

ところが、9月の国際学会で、このt-PAの治療リミットを3時間から4時間半にできないかという話がもちあがったのだそうです。なんでも、出血などのリスクを大きく増やすことなく、偽薬使用群よりも予後が良かったのだとか。そして、今回のGrand roundsでは、SickKidsとしてはこれに対してどうするかという話でした。結果的に、まだ様子を見るという話になりましたが。

そのほか、静脈洞血栓症や鎌状赤血球の患者さんも時におられますので、stroke fellowも忙しくしているようです。

しかし、日本では小児脳梗塞の原因にもやもや病が多いので、ちょっと事情が違います(もやもや病は、t-PA治療の対象にならない)。

そのほか、公式には募集はしていないのですが(webには記載がない)、今は脱髄疾患フェロー(Demyelination fellow)も1人います。SickKidsは、カナダ最大の多発性硬化症のセンターですから。

こういうところで、色々と見聞きできるのは、とてもうれしいことです。

もちろん、てんかんチームも神経科最大のチームとしてがんばっていますよ!

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