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2008/07/10

将来の夢 (Dreams for the future)

僕の5つくらい上の脳波技師さん(Sさん)がいるのですが、とても気さくでいい人です。

彼は脳波技師のチームリーダーであり、脳磁図も扱うことができる(日本では、脳磁図は医師が自分で記録することが多いのではと推測しますが、こちらでは脳磁図の記録は脳波と同じく脳波技師の仕事です)。脳波の専門医試験の際には、テクノロジーの勉強などでお世話になりました。

彼には夢があって、あと10年くらい働いて十分貯金できたら、あとは引退して(50-55歳頃?)、他の国を訪れて脳波の技術を教えたいということを言っていました。

夢の内容は個人によるのでコメントできませんが、僕がまず思ったのは、「そんな年齢で引退を考えることができるなんて、なんて恵まれているんだろう」ということです。これは、Sさんが特別な人だからなのでしょうか? それとも、僕の発想が貧困なのでしょうか?

1つ言えることは、僕の今までの日本の生活では、将来の夢を持つ余裕があまりなかったということです。大学病院は忙しかったでしたし(管理職だったので医療以外に雑事で時間をとられる。帰宅してからしていたことはほとんど寝るだけ)、上の先生たちの様子を見ていても、「きつそうだなぁ」としか思えない。おまけに、年金制度の破綻、後期高齢者医療制度、医療崩壊、大学病院の危機、ワーキングプアの話等、楽しくない話題しか聞こえてきた記憶がありません。早期引退でもしようものなら、その後の生計がたたなくなる心配があります。

医療系ブログを読むと、新聞などのマスコミが決して伝えないような貴重な情報が得られるのですが、同時に恐ろしい現実に慄然ともします。現実から目を背けるわけにはいきませんので、情報収集は今後も続けますが、はっきり言ってどんよりと暗~くなってしまいます。

こんな感じで、医者になりたての頃に持っていた夢や希望を失ってしまった自分がいるように思うのです。よくないと思っているのですが、どうしようもありません。

一方、今のカナダでの研修生活は楽しく、いろいろ学べて、やりがいがあります。欲求不満を感じることはありますが、職場の人たちは優しく接してくれるし、上司にも恵まれている。忙しいと感じるときもありますが、日本に比べれば断然ましで、勉強の時間も十分にとれる。僕が英語を母国語とする人間だったなら、迷うことなくカナダに残るのではないかと思います。専門性の追求もできますし、自分の経験も評価してくれるでしょう。今回、カナダの資格も取りましたし。

でも、日本は懐かしいですし、言葉の問題がないし、両親等の家族がいる。食べ物がうまい。だけど、医師としての将来に夢があまり持てないのです。そこが今の僕の大きな問題です。

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コメント

ふうむ。確かに、医療系のブログとかを見ると、なかなか暗い気持ちになるのは解ります。

でも、先日、厚生労働省に出向しているお医者様と話をする機会があって、そのときに「共感するけど、反発する」って気持ちになったんですよね。

そのお医者様曰く、「日本の医療体制は、医者のボランティア精神の上に成り立ってるんだよ(君達にはわからないかもしれないけどね)」

確かに、マスコミが報道しない、医療現場の大変な状況や、それをどうにかしようとしている医療従事者がおられるのも理解しています。でも、その現実を広く知らせる努力をせず、部外者である私に冷たい無言の言葉を浴びせた先生には賛同しかねると思いました。

あきちゃん先生のように、自己研鑽を怠らない先生には酷な言葉かもしれませんが、やはり、医者から発してもらわなければ解らない医療の現場というのもあると思います。そして、そんな状況を理解していらっしゃるからと思うからこそ、あきちゃん先生には思うことをどんどん発信していっていただきたいと思います。

投稿: めい | 2008/07/11 03:03

めいさん、こんにちは。

私は、その厚生労働省の方(医系技官?)の意見に賛成はしますが、共感はできません。そんな風に一般の方々に言うくらいなら、医療費削減を規定路線としている経済諮問会議や財務省にもっと声高に叫んで欲しいものですし、過重労働を防止するような「本来の仕事」をきちんとして欲しいです。

医者のほとんどはボランティア精神を持って働いていると思いますが、それをとことん利用できるだけ利用して、ろくな対策をとってこなかったことが問題です。

そして、医師不足により、民間病院はおろか市民病院までもが休院になるような異常事態が起こっています。

また、医療費は先進国中最低なのに、患者の自己負担率は先進国ではトップクラスに高い日本。日本の医療費が高いと思っている一般の方々がおられますが、高いのは医療費ではなくて自己負担率です。削減された費用、患者さんからいただいたお金は、いったいどこに消えているのでしょう?

投稿: あきちゃん | 2008/07/11 08:48

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