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2008/01/09

通常業務 (Regular work)

とりあえず、今週からは通常業務が始まっています。

今週は、てんかん外科の患者さんが入院。この方は、同僚のC先生が担当しています。並行して、EMU(てんかんモニタリングユニット:Epilepsy Monitoring Unit)への入院もあり、こちらは今週は僕の担当です。

EMUとは、原則的にてんかん発作を捕らえるための入院です。ふだんは、てんかん患者さんには発作を起こして欲しくないのですが、この入院に限っては発作を起こして欲しいという変わった入院です。

なぜかというと、てんかん患者さんは、発作をしていないときは、目に見える症状はありません。みなさんの目の前に患者さんがいても、全く分からないのがふつうです。

発作の治療薬は、患者さんの発作のタイプで決めます。一番大切なのは発作の症状ですが、目の前で患者さんが発作をしない限り、私達は直接目撃することはできません。なので、症状を細かく聞き出す必要があります。本人は発作を覚えていないことが多いので、目撃者(多くはご両親)から話をうかがうことになります。いくら細かく診察しても、きっちりした病歴を取らない限りは、てんかん発作のタイプを決めることはできず、治療方針も定まりません。いかにうまく症状を聞き出せるかが腕の見せ所です。ただ、最近は携帯などでビデオ録画ができ、たいへん便利です。

しかし、病歴のみでは発作のタイプがはっきり定まらない場合もあります。通常の脳波検査で発作のタイプを推測することができますが、それでもはっきりしない場合は、実際に発作をしている際中の脳波を記録して発作のタイプを決めます。ただし、発作はいつ起こるか分からないので、長時間の脳波記録を行って発作が起こるのを待つわけです。これがEMUです。同時にビデオも記録します。

もう1つの大きな目的(こっちの方が大きいかも)は、てんかん外科の術前評価です。何種類かのお薬を試しても発作がどうにも止まらない患者さんがおられます。しかし、発作が脳内のどこから始まるかが分かれば、そこを手術で切り取ってしまえば発作が止められる可能性があります。もちろん、そこを切ってよいかどうかいろいろ検討するのですが、まず最初の段階は、発作をしている最中の脳波を記録して、どこから発作が起こっているかの目安(たとえば、右の前の方とか)を決めることです。

毎日発作がある人は、1-2日も記録すれば発作が捕らえられるでしょう。しかし、発作頻度の低い方は、発作の回数を増やさなければ、入院期間中(こちらでは最大5日)に発作が1回も起こらないということになりかねません。そのため、入院前からふだん定期的に内服しているお薬の量を減らし、発作の数が増えた状態で入院していただくわけです。入院後にも発作が起きなければ、さらにお薬を減らしたり、時には断眠(睡眠時間を3時間程度に削る)したりして、発作の回数を増やすよう努力します。

問題は、薬を減らすと、ふだんより強い発作や長い発作が起こったり、発作が増えすぎたりして、困ることがあります。この辺りの加減がなかなか難しい。カナダでは発作が増えたときに家庭で簡単に使えるロラゼパム舌下錠があるので、家族に必要に応じて、このお薬を使うように指示しておきます。これでだいたいうまく行きます。もちろん、入院中は発作には常に気を配って、起こりすぎるようなら薬を増やしたり、ロラゼパムを使って発作を止めたりなど、通常の処置を行います。

てんかんを専門とする医師(epileptologists)にとって、発作時脳波の判読は非常にワクワクするものだと思います。患者さんが発作を起こすのはもちろん良くないことですが、それと引き換えに、僕達は治療のための膨大な手がかりを得ることができ、それを患者さんに最終的に還元できるのです。もちろん、通常の脳波の判読よりも、もっともっと専門的なトレーニングが必要ですが、がんばる価値があるものと信じています。

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