2018/07/14

低ホスファターゼ症におけるPLP測定

活性型ビタミンB6であるピリドキサールリン酸(PLP)の測定を行う研究をここ4年ほどしています。

もともとは、髄液での測定が主体でした。ビタミンB6依存性てんかんの方では、髄液中PLPが低いことが多いからです。海外の神経伝達物質ラボでも、PLPはほぼルーチンに測られているといってよいでしょう。自分がカナダから2011年に帰国した際には、患者さんの検体でPLPを測れるラボはほぼ皆無でした。そのため、我々のラボで測れるようにしたわけです。

ところが、最近は血液での測定件数が増えています。というのも、髄液でPLPが低かった場合、何故低いのかを調べる必要があるからです。血液でも低ければ、ビタミンB6の摂取が足らない等の原因が一般的には考えられます。

もう1つの原因は、低ホスファターゼ症(HPP)についての共同研究を始めたからです。HPPは、骨の石灰化障害や乳歯の早期脱落を起こす稀な疾患で、組織非特性アルカリホスファターゼ(TNSALP)の先天的な活性喪失または低下で起こります。最近は、骨や歯以外にも色々な症状が出てくることが分かってきており、ビタミンB6に反応するてんかん発作がみられる場合があります。TNSALPはビタミンB6の代謝や輸送にも関わっており、血清・血漿中PLPの上昇が報告されています。

最近になって酵素補充療法の治療薬が発売されたこともあり、HPP患者さんでのPLP測定の依頼が増えてきました。

そのおかげで、HPP患者さんにおけるPLPとピリドキサール(PL。PLPからリン酸が外れたもの)の測定に関する論文を出版することができました。自分は神経専門で、先天性代謝疾患の患者データに基づくきっちりした論文を書くのは初めてでしたので、たくさんの先生方に助けていただきました。感謝しております。共同研究の大切さを強く感じました。

PLPとPLを測定したと書きましたが、日本の検査会社でのビタミンB6測定では、PLPとPLを分けて測定できません。PLPはTNSALPの基質、PLは産物なので、両方を分けて測った方が、TNSALPの活性との関連性を詳しく知ることができるのです。これにより、PLPとPLの濃度比、PLの濃度が重要な指標と考えられることが分かりました。

論文のオンライン掲載にはもう少し時間がかかりますが、この結果がHPP患者さんの診断や治療方針の決定などに少しでも役立てばと思います。

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2018/06/25

脳波を信じるな

てんかん診療の初心者に対して、脳波検査の重要性についてはよく話をします。

ですが、ある程度真面目にてんかん診療と脳波判読を勉強された先生には、次のように言っています。

脳波を信じるな!

言っておきますが、脳波判読がしっかりできるようになったうえでの話です。

そうでないと、脳波を信じる以前に、自分の腕が信じられないですからね。

過去の記事にも何度か書きましたが、脳波だけでてんかんかそうでないかの区別はできません。もしできると思っていたなら、脳波を過信しています。

脳波も臨床検査の1つ。感度、特異度があります。例えば、生化学のある検査の数値だけでもって、疾患の診断をしますか? 通常しないはずです。脳波も同じ。

てんかんの診断に一番大切なのは、きっちりと病歴をとることです。他の領域でも重要なのは言うまでもありません。しかし、てんかんでは極めて重要です。なぜなら、患者さんの発作を目にする機会は少なく、かつ脳波検査のてんかん診断に対する精度が高くないからです。

てんかんの病歴聴取には、さまざまな発作症状に関する知識が必要になります。患者さんの話をうかがいつつ、こんなこと、あんなことがなかったかと根掘り葉掘り尋ねます。患者さんやご家族は、自分が重要と思わないことは医師に伝えてくれませんから、こちらから話を向ける必要があるのです。

病歴聴取は難しい。自分も一生かけて修行を続けていく必要があると思っています。

最後に脳波の話に戻ります。

脳波をきっちり読むというのは、波形を正しく解釈することだけではありません。患者の臨床的背景と照らし合わせ、判読結果の臨床的意義を解釈する必要がありますので、これを常に意識しながら読むようにしましょう。

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2018/06/23

脳波クイズ A7

出題から1か月以上経っていました。学会事務局、講演、そしてもちろん本務(診療等)に追われていました。7月下旬になると少し落ち着くかと思います。

では、前回の回答です。レベルは4くらいか。

A7.

1. 同側耳朶を基準電極とする基準導出。左右交互配置で、最後は正中部。

2. 覚醒時記録。

3. OIRDA(occipital intermittent rhythmic delta activity)。

4. 異常脳波。

解説

モンタージュについては、省略します。

覚醒時記録である根拠は、両側後頭部にα律動(alpha rhythm)が見られるからです。O1-A1、O2-O2に注目してください。

下の図で水色の四角にご注目ください。約3.5Hzのδ律動が持続1.5秒程度、一過性に出現しています。波形は、わりと単調(monomorphic)サイン波様(sinusoidal)で、下り坂部分にノッチ(notch)がみられます。

Fj255b55_12y_oirda_referential_mark

このような特徴を有する波形は、一般的に間欠性律動性δ活動(IRDA、intermittent rhythmic delta activity)と呼ばれます。上の図では後頭部に出ているので、後頭部(occipital)が前についてOIRDAと呼ばれます。

IRDAの分布は年齢によるところが大きく、小児では後頭部(OIRDA)、成人では前頭部(FIRDA、frontal IRDA)に出やすいとされています。

臨床的意義ですが、何らかの脳機能異常を指し示すと考えられています。「何らかの」というのは曖昧な表現ですが、器質的なものから代謝性のものまで、色々な原因があるとされているからです。FIRDA、OIRDAについては、脳病変があったとしても、その分布とは無関係とされています。

ちなみに、小児欠神てんかんでOIRDAが時折みられることがよく知られています。

側頭部にみられるIRDA(TIRDA、temporal IRDA)はちょっと意味合いが違います。TIRDAは側頭葉てんかんに関連しているとされ、てんかん原性を示唆すると考えられています。

IRDAは、脳機能の異常を示してイルダ!

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2018/05/17

脳波クイズ Q7

ずいぶん久しぶりになってしまいました。

年度末、年度初め、5-6月の学会準備で追われています。追われている時こそ、息抜きしたくなるのです。そこで、脳波クイズです。

Q7. 12歳女児。以下の質問に答えてください。

1. モンタージュは何か?

2. 覚醒時記録か、睡眠時記録か?

3. 出現している特徴的な波形は何か?

4. 正常脳波か、異常脳波か?

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2018/03/23

パープルデー

パープルデーってご存知ですか?

カナダの小学生の女の子から始まった、国際的なてんかん啓発運動の日です。

毎年、3月26日。今年は月曜日です。

てんかんの方を応援するメッセージとして、紫色の物を身に着けようという運動です。

何を身に着けるかはその人の自由。

Tシャツ、バッジ、リストバンドなどのグッズが、パープルデー企画実行委員会のページを通じて手に入れられます。

てんかんは、100人に1人。

てんかんは、赤ちゃんから老人まで誰でもなる病気。

なのに、てんかんという病気についての世間の理解はあまり進んでいません。

自分の周りにてんかんの方が全くいなかったとしたら、本当にいないのではなく、あなたに言い出すことができない方達が隠れているのかも知れません。

てんかんという病気を、てんかんをもつ人の悩みを、少しでも分かってあげて欲しい。

そう強く思います。

私の職場ではポスター展示を行い、啓発資料も多数取り揃えました。この数日間で、どんどん数が減ってきているのがうれしいです。

来年は、もう少し外に打って出る方策を考えたいところです。

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2018/03/05

てんかん症例TVカンファレンス(続き)

前回の記事で、岡山県内の3病院を結んだてんかん症例TVカンファレンスのことについて書きました。

その後、接続テスト等を少し行い、2月末に再度トライしました。

今回は、無事つながり、お互いの声も顔も見ることができました! さっそく、1つの病院より症例提示があり、カンファレンスを行うことができました。

音質も画質も申し分ない。これで、離れている医療機関とも診断や治療方針についての討論ができる環境が整いました。

今後は、参加施設を少しずつ増やしていきたいなと考えています。

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2018/02/05

てんかん症例TVカンファレンス

先日、岡山県内の3病院を結んだ、てんかん症例TVカンファレンスのテストを行いました。

結果ですが... なかなかうまくつながらず。

1か所は、声は聞こえるのに向こうの画像が見えず。こちらからの画像は向こうに見えているとのことでした。

もう1か所は、なかなか最初はつながらなかったのですが、先方のネットワークの設定(セキュリティレベル?)を変更してつながりました。ただ、パワーポイントの画面共有がうまく動かず。

一応、解決策は見えていますので、それぞれの病院と解決策を検討したうえで、2回目のテストを今月中に行えればなぁと考えています。

うまくはいかなかったものの、遠くの相手とつながっているという雰囲気は強く実感できました。もう少し調整すれば、うまくいきそうです。

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2018/02/04

てんかん重積状態に対するミダゾラム持続点滴静注療法

てんかん重積状態の治療に使われる薬剤の一つにミダゾラムがあります。

ベンゾジアゼピン系薬剤の1つですが、海外では保険適応がありません(自分の知る限りでは)。しかし、日本では保険適応がみとめられましたので、堂々と使えます。

非常に使いやすいお薬だと思いますが、物議をかもし得る治療法として、ミダゾラム持続点滴静注療法があります。

てんかん発作がミダゾラムで止まった。ただ、静注1回では効果が持続しないので、持続点滴しておけば再発を防げる、という考え方で行われることが多かったのではないかと思います。

ただし、呼吸抑制をきたし得る薬剤であることもあり、特に救急・麻酔領域の先生方からは、病棟での安易な使用を強く戒める声が少なくなかったように思います。

小児けいれん重積治療ガイドライン2017

小児神経学会が出版した、小児けいれん重積治療ガイドライン2017では、このミダゾラム持続点滴静注療法については、第二選択の治療としては推奨しないことになっています。

第一選択の治療は、ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、ミダゾラム)の静注です。

もし効いた場合に、再発予防として使うことは完全否定してはいませんが、脳波モニタリングを行うよう推奨しています。

効かない場合には第二選択薬に進むわけですが、その際にミダゾラム持続点滴静注は推奨していません。ミダゾラムは、第二選択薬も効かない場合、昏睡療法(高用量を使う)としての使用を推奨しています。合わせて脳波モニタリングを推奨しています。

まとめれば、ミダゾラムを使う際には脳波モニタリングを推奨、第一、第二選択薬が効かない場合には昏睡療法を推奨ということです。

何故、このような記載になっているのでしょうか?

まずは、治療効果の評価の問題です。

ミダゾラムを持続点滴すると、患者さんは眠ったままになります。催眠作用のある薬ですから。つまり、意識レベルの評価ができなくなります。けいれん重積(正確な用語は、けいれん性てんかん重積状態)の初期治療後は、目に見えない発作が残っている場合があります。このような発作は、非けいれん性発作と呼ばれますが、これが重積(非けいれん性てんかん重積状態)していても、見た目には分かりません。患者さんの意識は当然ながら戻りません。つまり、持続点滴で「眠らせて」しまうと、眠っているだけなのか、見えない発作が重積していて意識が戻らないのか、見た目では区別不能になるのです。

1回静注しただけの場合、1-2時間経って意識が戻らなければ、「おかしいな、気になるな」と思うものです。しかし、持続点滴していれば、「眠っていて当然」ですから、異状に気付くのが遅れる可能性、つまり適切な治療が遅れる可能性があります。

そのため、持続点滴をするのなら脳波モニタリングをせよという推奨になるのです。治療したなら、効果はしっかり評価しないといけません。

もう1つは、用量と発作再発の問題です。

日本で行われていた持続点滴は、低用量が多かったです。保険で承認されている量の最大量も0.4mg/kg/hで、比較的低用量です。海外では、もっと高用量(1.4~2mg以上/kg/h)が用いられています。もちろん、ICUに入院して、呼吸循環管理を行った状態でです。

今回のガイドラインでは、ミダゾラム持続点滴静注療法を、第二選択薬が効かない場合、つまり難治性の場合に使うよう記載してあります。同レベルの選択肢として、バルビツレート昏睡療法も記載されています。いずれもICUでの呼吸循環管理が必要です。

こういう状況で使う選択肢のため、しっかり使って発作をきっちり止めるということにウエイトが置かれています。それでも、ミダゾラム持続点滴療法中は、非けいれん性発作が再発することが少なくなく、脳波モニタリングが特に重要とされています。

こういった事情で、昨年出版されたガイドラインに従えば、ミダゾラム持続点滴静注療法を使う機会はより限定されてくると思います。今度の小児神経学会では、ガイドライン出版後に関する討論のセッションが組まれていますので、実際にどのようになったのか、現場の先生方がどのように考えておられるのか、といったお話がうかがえることと思っています。

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2018/01/26

脳波セミナー

明日から2日間にわたり、熱海でふじさん・てんかん脳波ハンズオンセミナーが行われます。

頭蓋内脳波まで読む先生方を対象とした応用コースです。

今回は4回目で、私は幸いにも初回から講師としてお呼びいただいております。

今回は、事務担当をされている静岡のT先生より、脳波クイズを出題せよとのご用命です。

そういえば、このブログの脳波クイズの更新がここ数か月できていないなぁ...

自分の担当は5問、脳神経外科の先生が5問です。

困ったのは、全体の正答率が5割くらいになるようにせよとのご指示です。脳波のアーチファクトに関しては説明不要、頭蓋内脳波を平気で読む方々に対して正答率5割ですから、よっぽどの問題を出さねばなりません。

ですが、あまりわけわからない問題を出しても、参加者が得ることがほとんどないようなものであればちょっとな... とも思います。厳しい注文です。

でも、なんとか問題を作ることができました。どのような反応があるか楽しみです。

これを契機に、ブログのクイズもぼちぼち更新していきたいと思います。

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2018/01/22

てんかん外科学会

先週後半は、奈良でてんかん外科学会でした。

脳神経外科の先生方が参加者のほとんどです。

今回は、てんかん外科の技を極めるという趣旨でしたが、脳神経外科医がどのようなことを考えて手術しておられるのかを知っておくのは大切だと思い、参加しました。

手術の技術的な話題は分かりませんし、手術のビデオを見ても、正直あまり分かりません。ですが、手術に至るまでの過程や、術後のフォローアップの成績等、我々内科系医師にも勉強になる点は色々とありました。

会場の近場に東大寺や興福寺がありますので、仏さまを色々と見てきました。また、ならまちでお茶菓子も楽しみました。数年前に観光で来ましたが、何度見ても良いものは良い。

貴重な文化を末永く大切にしていきたいと感じました。

もちろん、脳神経外科の先生方の気概もです!

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