2020/05/28

鵜呑みにしない

上の先生に言われたことを鵜呑みにしていませんか?

もちろん、駆け出しの頃は経験がないわけだから、上の先生の真似をし、言われたとおりにした方が間違いが少ないでしょう。

ですが、ある程度自分でできるようになったら、自分の頭でよく考える必要が出てきます。

まずすべきことは、上の先生がなぜそのようにしているのか理由を考えることです。色々調べてみて、裏をとることは大切でしょう。その結果、納得がいくのであれば、それでよいと思います。

納得できない場合、よく考えねばなりません。単に自分の勉強不足かも知れません。上の先生が言われたことが間違っているのかも知れません。よーく考える癖をつける必要があります。場合によっては、方向を180度転換する必要すらあります。

とても偉い先生、世界的に有名な先生が言っていたとしても、盲目的に従ってはなりません。間違っていることはあるのです。代々間違った教えが受け継がれていることもあります。当時は正しかったのかもしれません。しかし、時代とともに新しいことが分かってくるので、ずっと正しいとは限りません。

よく考えて、自分なりの答えを見つけたいものです。見つけられた時は、とてもうれしいです。ただ、それが間違っている可能性はゼロではありません。油断は禁物です。新たな情報が判明したら、方向転換する必要があるかも知れません。

若手を教える立場になりましたが、自分も間違っていることをいくらか(もっと?)は教えていることでしょう。勉強を続けるのは必要で、知識のアップデートをしていかねばなりません。

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2020/05/14

頭痛のこどもたち

小児神経の専門外来をしていると(特に市中病院)、頭痛のこどもたちがけっこう紹介されてきます。

片頭痛、筋緊張性頭痛、両者が混ざったもの、起立性調節障害を合併した頭痛などなど。

ですが、ここ1-2か月は頭痛のこどもたちの症状が比較的よいです。週4-5日あったのが週1回程度だったり、ほとんどなかったりなど。

新型コロナウイルスでたいへんな世の中ですが、学校の休校や短縮授業のためか、睡眠時間が今までよりとれていたり、家でのんびりできていたりといった影響があるのではないかと考えています。もちろん、出歩けない、友達に会えない、といった別のストレスはあるでしょうが。

こどもたちが日常ストレスを受けており、頭痛と関連していることを本人と保護者に自覚していただくには、とてもよい機会だと考えております。

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2020/05/01

ピリドキシン依存症の新しいバイオマーカー

共同研究先の先生が、ピリドキシン依存症(ALDH7A1欠損症)の新しいバイオマーカーに関する論文を出版されました。私も共著者の1人です。

この疾患のバイオマーカーは、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(α-AASA)ピペコリン酸です。

ALDH7A1遺伝子でコードされるα-AASA脱水素酵素の活性低下によりα-AASAが上昇し、さらにその上流のピペコリン酸も上昇します(稀に例外あり)。

α-AASAは水溶液内ではΔ1-P6Cという物質と平衡状態にあり、このΔ1-P6Cが活性型ビタミンB6を不活化し、脳内のγ-アミノ酪酸(GABA)産生が滞り、てんかんを発病すると考えています。なので、足りなくなったビタミンB6を大量に補えば、発作が改善するという仕組みです。

α-AASAの問題点は不安定であること。また、Δ1-P6Cと平衡状態にあることから、絶対定量は困難でした。

最近、コロラドのグループより、LC-MSとNMRを用いた研究で、6-オキソピペコリン酸がα-AASAよりも安定で有用なマーカーであることが報告されました。また、α-AASAとΔ1-P6Cの平衡の間に、6-ヒドロキシピペコリン酸という物質があることも報告されました。直鎖であるα-AASAが環を巻くと6-ヒドロキシピペコリン酸になり、これが脱水するとΔ1-P6Cになるという順番です。そして、この6-ヒドロキシピペコリン酸から6-オキソピペコリン酸に変換される経路があるらしいのです。また、このグループは、Δ1-P6Cの他にΔ2-P6Cという物質もあるらしいと推測する記載をしていました。

この論文が出た時点で、私の共同研究先の先生はGC-MSを用い、ALDH7A1欠損症の尿中に6-オキソピペコリン酸を既に同定していたのですが、先を越されてしまったと言っておられました。その後、ALDH7A1欠損症の尿中にΔ2-P6Cが確実に存在することを確認されました。さらに、6-オキソピペコリン酸は年長児で高く、新生児期には低いことも示されました。ピペコリン酸は逆でした。これらの結果をまとめ、めでたく論文にされました。

これで、ピリドキシン依存症の診断につながるバイオマーカーが4つになりました。

α-AASAとピペコリン酸は、我々のラボで定量できます(α-AASAは半定量)。

6-オキソピペコリン酸とΔ2-P6Cは尿中メタボローム解析で測定できます。尿中メタボローム解析には尿中有機酸分析が含まれておりますので、施設基準を満たせば、保険請求が可能です(今年度より)。つまり、通常の臨床検査の1つとして行えることになりました。

現在論文を執筆中ですが、ピリドキシン依存症の可能性を全く考えられておらず、当方で血清と髄液を分析したてんかんの方(小学生)で、α-AASAの上昇をみとめた方がおられました。主治医に連絡してビタミンB6を始めていただいたところ、年に何回か発作が群発していたのがゼロになり、他の抗てんかん薬を減らせているそうです。後の解析で、ALDH7A1遺伝子に異常がみつかりました。ご家族は非常に喜ばれたとうかがっております。

ピリドキシン依存症は通常新生児期に発病しますが、発病年齢が遅い事例も報告されており、通常の検査では診断ができません。見逃しを減らすには、ビタミンB6製剤のトライアルを積極的に行うことです。ただ、なかなかそうはいきません。

我々のラボでの分析ではタイミングにもよりますが、通常1-2か月待つことになります。上記の尿中メタボローム解析を1回行えば見つかりますし(検査結果は1週間以内で戻ってくる。ついでに130種類の先天代謝異常症のスクリーニングも行える)、早期発見早期治療の方が発達予後にはよいですので、原因不明のてんかんで検査を行う価値は高いと思います。

ちなみに、我々の施設では尿中有機酸分析の依頼は5年以上前に止めました。メタボローム解析の方がはるかに多くの物質を測れ、診断可能な疾患が多いためです。どちらが効率的かは明らかです。

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2020/04/30

漢方と多変量解析の世界

漢方を勉強していると、これは多変量解析の世界のお薬だなと感じます。

西洋薬は基本的に単一成分です。作用点もそう多くない。どこそこに作用して何々を阻害する、といったお話です。抗てんかん薬では、作用点が複数(全部分かっていない場合も含む)のものもありますが。

働きを解析するとすれば、例えば、Naチャネル拮抗薬であれば、そのお薬の有無で、Naチャネルの働きを解析すればよいということになります。統計解析をするならば、単変量解析の話になります。科学的エビデンスを比較的得やすいと思います。

一方、漢方薬は生薬からできており、多成分のお薬です。芍薬と甘草だけからなる芍薬甘草湯はこむら返りやけいれん性の腹痛への特効薬ですが、これでも数百種類の成分が含まれています。この働きを解析するには、対象をどこか一点(もしくは少数箇所)に絞りこむのは難しいように感じます。おそらくは多数の項目(代謝物、蛋白等)を網羅的に解析する手法が必要です。面白いことに、芍薬、甘草だけでは、こむら返りには効かないのだそうです。この2つの組み合わせが薬効につながるポイントとのことです。

私はメタボローム解析にずっと興味をもってきたこともありますが、メタボロミクスプロテオミクスが漢方薬に対する有用な解析手法ではないかと考えています。従来の解析対象を絞った方法では、エビデンスはなかなか出てこないのではないかと思います。

漢方では、患者さんの状態(証)に合わせて薬を選ぶ随証治療が行われますが、様々な問診・身体所見も多項目の変数と考えられます。これも多変量解析の対象になります。

私が患者さんにお話するのは、料理の味付けについてです。塩味をつける場合、西洋薬は塩化ナトリウムです。分かりやすく塩味がつきます。漢方薬は、ヒマラヤ岩塩です。西洋薬ほど塩味は強くないですが、なんとも味わい深い。人間の味覚も多変量の世界だと思いますし、人間の脳は大量の情報を同時処理できるすばらしい能力をもっています。

芍薬甘草湯が発見されるまでには、無数の試行錯誤がなされてきたのだと思います。もっと成分の多いお薬に関しては、もはや奇跡といってもよいかも知れません。数千年の経験で見つかった組合せですから。しかし、コンピュータ技術の目覚ましい発展により、今後は大きなブレイクスルーが起こるかもしれません。

人工知能や量子コンピュータの進歩により、患者さんの状態に合わせたお薬の選択(生薬を組み合わせての創薬も含む)がその場で可能な世の中が来るのではないかと期待しています。

 

前回、私が漢方を勉強し始めた理由を1つ書き忘れていました。

日本は、西洋医学と東洋医学のどちらもが保険で認められている稀有な国です。日本ならではのいいところ取りをしないのは、もったいないです。患者さんのためになるのなら、西洋東洋の区別なく、よい方法を探して使えばよい、という考えです。

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2020/04/29

小児神経領域における漢方薬について

最近、漢方の勉強に(たぶん)かなり真面目に取り組んでいます。

私の外来についている若い医師は、「どうしんだ?」という顔をしています(たぶん)。

小児神経外来、特に市中病院での外来をしていると(大学医師は他の病院の応援に行きます)、朝起きられない、めまい、頭痛、不安、不眠、腹痛、便秘などなど、起立性調節障害、片頭痛、筋緊張性頭痛、不定愁訴といった方が、「神経学的評価」のご希望で紹介されてくることが多々あります。

日常生活の指導、西洋薬、状況によっては小児心身症外来受診などで対応していますが... 正直限界を感じたのです。私の腕が悪いためという可能性は、もちろん十分あります。

その他、発達障害児の情動面の問題、重症心身障害児の消化器症状、筋緊張や嚥下の問題、反復する感染症といった問題にも難渋します。

最初に漢方に興味を持ったのは、私のかつての指導医(今は有名病院の部長)が、二日酔いや急性胃腸炎に五苓散がよいと教えてくれたことでした。五苓散は私自身、よく使っています。この先生は以前から漢方をよくご存じで、抑肝散や半夏厚朴湯の使い方を小児神経駆け出しの私に教えてくれましたが、当時の私が実際に処方することはありませんでした(ゴメンなさい...)。

外勤先で小児心身症外来の先生が漢方を使っておられるのにも興味をそそられました。柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)といった、「おまじない」のような名前の薬がいったい何なのかどんどん知りたくなりました。

以降、傷寒論(の解説書)を始め色々な書籍、漢方情報サイト(漢方スクエアなど)で勉強しています。東洋医学的な考え方の解説(ムズカシイ...)、科学的な考え方の解説など、色々読んでいます。

勉強したら、実践せねばなりません。もちろん、ある程度代表的なもの、定評のあるものから患者さんに合いそうなものを使ってみます。そして、次の外来で効果がどうだったかフィードバックを受け、よくなければ反省して次の手を考えます。まだまだ駆け出しなので、ハズレも多いです。ですが、当たった方では驚くほど効くことがあります。漢方は、個別化医療の色彩が濃いため、患者さん一人一人に教えられることがとても多いのです。

外来診療で、最近自分でも変わったなと思いだしたのは、患者さんのお話を今まで以上に聞くことになったことです。主訴以外の話もかなり多いです。夢見の問題、排尿排便の調子、冷えの有無、女性の場合は月経などについても尋ねます。診察も脈をとり、お腹や口の中(特に舌)をより真面目に診るようになりました。最近は、COVID-19の件があるので、気をつけるようにしていますが。

私自身、腰痛、肩の痛み(先日50歳になってしまったので、もう四十肩とは言えない...)などあるので、自分の体の所見をとり、合いそうなお薬を考えて使ってみています。いくつか試して、今のがよさそうな印象が若干あるのですが、もう少ししないと分かりません。

まだまだまだ、駆け出しです...

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2020/04/18

ビタミンB6依存性てんかんの検査について

ビタミンB6依存性てんかんを疑って検査依頼がくるケースが時々あります。

 

ビタミンB6製剤が効いたから、という話は分かりやすいです。

ALDH7A1欠損症の場合、診断マーカーは、α-AASAピペコリン酸です。これはビタミンB6製剤による治療開始後も異常を示します(尿中ピペコリン酸を除く)ので、いつの検体でも判断可能です。最近、日本疾患メタボローム解析研究所で、新しいマーカーであるオキソピペコリン酸Δ2-P6Cが測れるようになり(正確には、もともと検出できていた異常ピークの正体がこれらの2つの物質であることが判明した)、尿検体でより正確な診断が可能になりました。

PNPO欠損症の場合、診断マーカーは、血中ピリドキサミンです。さらによいのは、血中ピリドキサミン/4-ピリドキシン酸比で、これは治療開始後も異常を示します。ピリドキサミンはまだ我々のラボでは測れませんが、検査会社のビタミンB6測定のピリドキサミン(これは、ピリドキサミンとピリドキサミンリン酸の和)である程度代用可能と思われます。

PLPBP欠損症の場合、髄液中ピリドキサールリン酸低下の報告しかありません。これは治療を開始すると上昇しますので、治療前検体でないと判断できません。PLPBPの定量キットは市販されていますが、タンパク量を測っているだけで、機能(活性)を測れませんので、点変異による機能喪失の判断は困難です。

高プロリン血症II型の場合、診断マーカーは、P5Cプロリンです。プロリンは通常診療でのアミノ酸分析で測れます。P5Cは、日本疾患メタボローム解析研究所で測定可能です。治療の有無にかかわらず判断できます。

つまり、ビタミンB6製剤が効いた場合、PLPBP欠損症以外については、いつの時点で代謝マーカーを測っても判断可能です。PLPBP欠損症では治療前髄液検体があれば診断の参考になりますが、ピリドキサールリン酸低値のみでは診断に特異的ではありません。現実的には、上記の代謝マーカーをまず測り、いずれも否定的であればPLPBP遺伝子解析を行うといった手順になることでしょう。もちろん、上記の疾患の遺伝子パネルを先に行い、見つかった遺伝子異常の機能解析の一環として代謝マーカーを測定するという順番もあることでしょう。

 

もう1つの「疑って」は、新生児期・乳児期の原因不明のてんかんなので、鑑別診断の1つとしての意味合いです。

この場合、いただいたご依頼のほとんどが「ハズレ」です。希少疾患ですから。

とは言っても分析依頼を断ることはありません。症状が非特異的なので、ある程度スクリーニングが必要だからです。

ただ、依頼をくださる先生方に1つお願いしたいのは、ビタミンB6依存性てんかんを鑑別診断の1つとして挙げるのであれば、検体採取後は必ずビタミンB6製剤のトライアルを行っていただいたい、ということです。代謝物質測定にもある程度の時間がかかるため、トライアルはなるべく早く行う必要があります。効果があれば患者の人生が変わる可能性があるのですから。

トライアルは、単発(例えば、静脈注射1回)のみでは不十分です。すぐに効果が得られない場合、充分量を最低1週間は使う必要があります。遅れて反応する方(late responder)がいるからです。

 

私が考えるビタミンB6依存性てんかんの診断手順を以下に書きます。

  1. 原因不明のてんかんでは、ビタミンB6開始前の検体採取・保存をまず行う。
  2. ビタミンB6トライアルを充分に行う(充分量を最低1週間)。
  3. ビタミンB6が有効な場合、ビタミンB6依存性てんかんの代謝マーカーの測定、遺伝子解析を行う。

検体保存の次、ビタミンB6トライアルの前に代謝マーカーのスクリーニング検査をするかどうかは、検査に要するマンパワー、時間、費用について考えて決めることになります。我々のラボではそれなりに時間がかかりますし、ビタミンB6依存性てんかんの原因疾患すべてをひっかけるためには、充分なビタミンB6トライアルが必須と考えております。

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2020/02/29

ミダゾラム口腔用液の製造販売承認申請が行われました

武田薬品工業のウェブページによりますと、てんかん重積状態の治療薬として、ミダゾラム口腔用液の製造販売承認申請が行われたそうです。

ずっと待ち望んでいた申請です。ここから承認まではまだまだ時間がかかるのではありますが...

てんかん重積状態は神経救急の中でよくみられる病態ですが、病院前治療が重要であるにも関わらず、本邦では有効な薬剤が市販されていませんでした。

抗てんかん薬の坐剤は市販されていますが、溶けるのに時間がかかる。すぐに止めねばならない発作を坐剤が溶けるまで20分、30分とのんびり待っている余裕はありません。実際、ガイドラインでは抗てんかん薬の坐剤がてんかん重積状態に有効であるエビデンスはないと記載されています。そうなんです、ただのおまじないみたいなもんです...

てんかん重積状態は、始まってから時間が経過するほどお薬が効きにくくなります。なので、現場でさっさと治療できるようにすることが重要です。

既に米国等で認可されているミダゾラム口腔用液が承認されれば、日本でのてんかん重積状態の病院前治療は大きく前進するといってよいでしょう。

次にクリアすべきは、現場で誰がこの薬を使ってよいかといった体制整備でしょう。学校でてんかん重積状態を起こした場合、親しか使えないのでは意味がありません(親が学校に着くまで待てというのか?)。学校教諭が使えるようになればとも思いますが、医療行為になるという問題がありますし(坐剤については医療行為としないという通達が出ている)、即効性がある分、呼吸抑制や血圧低下といった副作用がどうなるかという注意は必要でしょう。

学校教諭が難しければ、救急隊員による使用を可能にすれば、その後のバイタル監視や必要に応じての呼吸サポートはできることでしょう。こういった体制整備が行われ、救急車が病院に到着した時点では発作は既に止まっていました、という事態が多くなればよいなと思います。海外では救急搬送そのものが減らせることになっていますが、日本では使用後の医療機関受診はおそらく必須化されると思っています。

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2020/02/22

8年越しの論文

8年越しの... という映画がありましたが、ここでは論文の話です。

トロント小児病院への留学を終えたのは、2011年6月末でした。

この時点で、2つほどやり残した研究がありました。

1つは、てんかん性spasmsの速波と徐波の関係性についての研究で、数年経って2015年に論文にすることができました。それなりの期間がかかってしまいましたが、臨床脳波では有名な英文雑誌に掲載され、頑張った甲斐がありました。

もう1つは、持続脳波モニタリング中の発作の自動検出に関する研究でした。トロント小児病院で使われていた発作検知ソフトを用い、脳波の専門家がaEEGやCDSAによるトレンド表示を使って読んだ結果と比べてどうか? 人 vs. コンピュータでどうか? というお話でした。

私がいた時、3つのソフトを使って一応の結果を出しました。論文を書き始めましたが、私の英語力と日本での業務の忙しさ、指導してくれていたスタッフの諸般の事情とで、数年以上にわたり全く進まない状況が続きました。アメリカてんかん学会でそのスタッフに会ったりもして、「なかなか進まないね~」という話にもなっており、自分としてはほとんどあきらめていました。今更論文にしても、もう古い内容でしょうし...

ところが、2-3年前にそのスタッフより連絡が来て、「今来ている医学生に研究を続けてもらう。新しいソフトも出たので試してみる。データをまとめて論文を書いてくれたら、first authorになってくれていい」とのことでした。

びっくりするようなありがたい話ですが、私もかなり忙しかったので、「私には余裕がないので、私が出したデータは使ってもらってかまわない。その学生さんが原稿を書いたら、first authorにしてあげてほしい。私も助言はする」と返事しました。

そして、クリスマスイブに論文がオンライン掲載されました。救急医学系の一流雑誌で、私も共著者にしていただきました。

内容はもちろん知っていますが、発作検知ソフトがそこそこ実用になるという結果になっており(自分が使った3番目のソフトが非常に出来がよかった)、私には到底書けないような素晴らしい文章で書いてあります。

とても勉強になったのは、私はもうほとんどあきらめていたのですが、そのスタッフはそれでも何とか形にしようと頑張ってくれたことでした。じっくり取り組むことの大切さを痛感した出来事でした。

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2020/02/10

全国てんかんセンター協議会

全国てんかんセンター協議会(JEPICA)へ参加してきました。

JEPICAとは、てんかん診療にかかわる多職種の学会です。

てんかんの患者さんは多くの問題をかかえておりますので、チーム医療が必須です。

いつもながら、とても熱気のある会議だなと思います。他施設の取り組みが色々と発表されるので、とてもためになります。自分たちの弱みもよく分かります...

この会議の終了後、てんかん診療拠点病院の会議があり、てんかんコーディネーターを今後どのようにして育成していくかの話し合いがありました。

いや、そもそも、てんかんコーディネーターとは何なのか? がきっちり明らかにされていないので、なかなか前に話が進みません。

当院では医療ソーシャルワーカーと小児専門看護師が担当していますが、「てんかん診療を円滑に行う(院内および院外)」という考え方はたぶん一致しますが、それぞれ独自の仕事の領分があるわけです。他の施設でも、精神保健福祉士や医師が担当しているところがあり、業務内容は千差万別です。

てんかん診療拠点の事業では、県内でのてんかん診療連携を円滑に行うことが重要項目でありますので、こういった連携にも何らかの役割を果たしていただくことになるのかなと考えております。

てんかんの診療機関でもそれぞれ果たすべき役割があり、てんかんセンターを名乗る機関で全てやろうとするとパンクは必定です。患者さんに不安を与えないように配慮しつつ、医療機関での分業が必要と考えています。そのため、県内全体の診療レベルの底上げを図ろうとしているところです。

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2020/01/28

てんかんと頭痛、発達障害

てんかんと頭痛や発達障害(自閉スペクトラム症[ASD]、注意欠如・多動症[ADHD]など)は、時折合併します。

ですが、頭痛や発達障害の方で脳波検査をしたら、てんかん発射が出ていたので、抗てんかん薬を使った、頭痛や行動面が改善した、というお話を聞くことがあります。学会でもそのような演題を目にすることがあります。だから脳波検査は有用である、という結論になっています。

これは果たして本当なのでしょうか?

てんかん発射が頭痛や行動面の問題の原因だったので抗てんかん薬が効いた、という論理であれば、誤りだと私は思います。

これを証明するには、てんかん発射のない頭痛や発達障害の方では抗てんかん薬が効かない(または、てんかん発射のある方ほどは効かない)ことを示さねばなりません。つまり、てんかん発射が存在することが、抗てんかん薬が効果を発揮するための条件になっていることを示す、ということです。

ただし、てんかん性脳症は例外です。定義上、激烈なてんかん発射が認知・行動面へ悪影響を及ぼす病態になっていますので、これについては今回の議論から除きます。

私の印象としては、抗てんかん薬はてんかん発射を抑える作用(これにも実は異論があり、てんかん発射を抑えない抗てんかん薬もあります)とは別のメカニズムで頭痛や行動面の問題に作用しているのではないかと思います。

ただ、この意見は、てんかん発射の存在が抗てんかん薬の有効性を示唆するという研究報告を私がまだ見つけられていないことを基に書いておりますので、そのような研究がもし既になされているのなら(お気づきの方は教えてください)、再検討を要するとは思っています。

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